音楽と本

僕のカルチャーセレクトショップ

安く、手っ取り早い娯楽はやはり本。森見登見彦『宵山万華鏡』『有頂天家族』など

 どうも、今年で二回の転職を果たしたなるかみです。

 昨日6月1日づけで新たな職場デビューしたわけですが、いきなりイベントで日曜出勤。初日から準備とか設営とかでまあまあ動きましたよ。新しい年下の同僚に

「最初からこれじゃあイヤになっちゃいませんか」

と言われたけれど

「いや、前職が地獄だったんでこれくらい楽勝!むしろ楽しい!」

と言って笑われた。新しい会社は社員10人に満たないこぢんまりしたところだけれど、働きやすそうだ。いい人そうな人たちで、年下の人ばかりだが。当たり前か。

 前職の同僚たちもいい人だったのだけれど、あまりに仕事の内容がヘヴィメタルで二ヶ月で5キロ痩せるという事実にたった3ヶ月で音を上げた僕です。

 

 今度は頑張って長く勤めたいと思うんだけど、この年(51歳)になるともう、将来に対する不安が頭をもたげてくるよね。

 60歳定年として、正社員で後9年って、正直怖いです。次女は今小6で中学を受験する準備をしている。しかし、僕は給料が高いわけではない。お金足りるの?つうか稼いでいる間はよいとしても、あと10年後、どうなっちゃってるの?

 両親は81で健在、まだうどん屋をやっているがそれとてあと数年持つかどうか。そのとき、どうなちゃってるの?

 

 そして自分が70歳のとき、どうなっちゃっているのだろう?

 テレビとか見ていて、よく食堂のおばちゃんとかが70とかでも元気に働いているのをみて「オレこの年になって働き口あるのか?」などと得体の知れない不安に襲われたりしている。もう今のうちからお金を貯めたってたかが知れてるじゃないですか。

 

 とにかく毎日ぼんやりとした不安を抱えて生きているわけ。20代のあの能天気さは今はもう全くない。誰かがこの小説に価値を見出して、権利を買ってくれませんかね、三千万円くらいでさ。

今、11468PVまで行った。今も毎日読んでくれる人がいるのです。でもそれはタダゆえ


 以前ほどお金もないのでCDとか買ってませんよ。いまだにケミカルの新譜、手に入れてないし。仕方がないのでブックオフで100円本を漁って、日々の無聊を慰めているわけですよ。読書がお金がかからなくて一番よろしい。そうしてこの間買ったのがこの5冊。

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 全部一冊100円。探せばあるもんだ。ハヤカワSF100円のコーナーで目をサラのようにして探した結果、一番左上のホーガンの『造物主の掟』が上手いこと見つかり、さらには数年前に読んだ『ゲイトウェイ』の続編も発見!

 ブックオフって通常あまりハヤカワのSFが100円で充実していることはないのだけれど、今回は掘り出し物があって嬉しい。

 『造物主の掟』はまだプロローグで本格的にストーリーが始まっていません。寝る前の睡眠導入剤としての役割を担ってます。

 『ゲイトウェイ』はヒーチーと呼ばれる異星人が残した、現在も稼動可能な科学的遺跡を発見した人類がそのテクノロジーをなんとか解明しようとするのだけれどさっぱり分からない。特に無数のプログラムされたと思しき宇宙船らしきマシンが無数にあるのだけれど、その行き先や航行時間は全く不明である。政府は命を掛けてそれに乗る人間を募集(無事生還したものは多額の報酬を得られるが、生還率は低い)し、一攫千金を夢見る人々がヒーチーの施設へと集まるのだ。ヒーチーの設定が面白く、続編ではそれがさらに詳しく描かれているらしい。そのうち読みます。

 

 そうしてまず最初に読んだのが森見登見彦氏の宵山万華鏡』。  

   

 例によって京都が舞台のファンタジー

 基本的に森見氏の作品は京都を舞台とし、その地が持つ独特の魅力を元に衒学的な語り口で進んでゆく。その一方でユーモアが根底に流れており、そこに彼が考えた独自の団体が人を煙に撒くような名前で(例えば夜は短し歩けよ乙女『四畳半神話体系』だったら「閨房調査団」とか「図書館警察」とか「詭弁論部」など)が登場し唯一無二の森見ワールドを展開している。これはほぼどの作品にも通低しており、彼の作品のファンならよりその世界観を楽しめるつくりになっている。

 

 こちらの話はまた別の機会に。「先輩」の声が星野源だが、どうかなー。やっぱ浅沼晋太郎がよかったんじゃないの?

     

 

                主人公の基本設定は同じ。出世作

     www.youtube.com

  で、2年前にこんな記事書いてた

 

 こっちは最近の

 

 この『宵山万華鏡』もそういう作品群の一端。今回は「宵山」という祇園祭の一夜に限定して短編が組まれており、それぞれが関わりあって全体を作るという構造になっている。

 『夜は短し~』とか『四畳半~』のようなユーモア溢れる展開の作品もあるのだが、その一方で『きつねのはなし』みたいな怪談めいた話も入っており、それらの作品がバランスをとって配置されているのでなんとも不思議に読後感です。

 特に面白かったのは学生時代の友人に誘われて宵山を歩いていた主人公がいつの間にか不思議な場所に紛れ込んでしまい、それが咎めとなって拉致され「宵山様」に罰を下されるために京都中を引き回される話だ。祭りの雰囲気の中次々と起こる不思議な現象や人物たちに翻弄される主人公の運命はどうなってしまうのか?

 この話が面白いのは次の短編がこの話の裏返しになっているところで、読者は「ああ、なるほど!」と両方の作品を読み比べる楽しみが与えられているのだ。これはよく考えられてるなあ、と感心することしきり。そうして他の物語も幻想と現実が入り混じった円熟の森見ワールドが展開。

 

 いやーさすが。やっぱり森見作品はおもしろいなあ。好き嫌いが分かれるかもしれませんが、一度この世界観にはまると他の作品とのつながりが面白いですよ。

 今は『有頂天家族』を読んでいる最中なのでまたその話はあとで。