この80年代回顧シリーズで以前、ソフトセルのことをかなりの熱を込めて書いた。
そして、その頃(もう30年くらい前!)マークアーモンドにすっかり入れ込んだ僕は、雑誌で彼が別プロジェクトをしているのを知って以来、どうにもこうにも聴いてみたかったが、渋谷のディスクユニオンにてついに発見!
なんだかすげえジャケットだ。しかも二枚組!タイトルは「トーメント&トレロス」。「苦痛と闘牛士」だ!
いやー今の時点でこのアルバム聴いている人、日本に僕ひとりじゃないか?そんなことないか。一億人は日本にいるもの。
ソフトセルとは全然雰囲気が違いメンバーもたくさんいる。しかし中ジャケを見るとマークだけがダントツにカリスマが高い。一人だけ別人。ほかのメンツとかショボい。
なんだかルックスは80Sメタルの雰囲気も漂わせているが、実際どんなバンドか想像がつかずに聴いてみると、一曲目はインスト。しかもティンパニとか使って異様な感じ。なんなんだこれは!エレクトロ感ゼロ。ものすごいアングラ音楽じゃないか。
この曲が終わると同時に「BOSS CAT」のドラムのフレーズに切り替わる瞬間ムチャクチャかっこいい!
つくだっどんとた!
つくだっどん、どこたか!
つくだっどんとた!
つくだっどん、どこたか!
ポップという言葉からはほど遠いが、ソフトセルとは全く別の魅力があった。特に1枚目のA面の流れはすごい。
四重奏を使った荘厳な曲「CATCH A FALLEN STAR」が美しく、重厚に迫ってくる。
コントラバスのぶぶうん、という響きに高校生の僕はしびれていたものだ。一番この曲をよく聴いた。
とにかくこんなふうに管弦楽器やピアノ中心のナンバーが次々に繰り出されるのだ(ただし、曲数が多いので捨て曲もあり)。
ジャケットを見てもわかるようにかなりスパニッシュな雰囲気である。かといってフラメンコをやるとかそういう訳でもないのだが、とにかくすべてがプログラムだったソフトセルとは180度逆ですべてが人力、生音である。
二枚目のB面の「ブラックハート」から「ア ミリオンマニアス」
そして最後の曲、クラシックの曲をアレンジした
「BEAT OUT THAT RHYTHM ON A DRUM」の
大迫力のエンディングがまたすごかった。まあ、途中だれるところもあったが知る人ぞ知る傑作アルバムだと思う。しかし、よくこんなのを高校生で聴いていたと思うなあ。特に今の時代、情報があまりにたやすく手に入ってデジタル化され、こんなアルバムを自分だけが持っているという訳のわからない優越感も最早持ちづらくなっているのではないか。
僕はこのあたりの流れから「サイキックTV」みたいなマッドなバンドも掘り出して聴いていた。自分の知らない世界異様な世界を垣間見た気がして、ワクワクしたもんだ。ただ、マインドはいくつになっても変わらない。僕は気分の上では未だにあの頃とほとんど同じように過ごしている気がする。