音楽と本

僕のカルチャーセレクトショップ

『巨人たちの星』/J.P.ホーガン 『星を継ぐもの』に始まる三部作完結 1

ここ最近、『星を継ぐもの』に連なるホーガンの傑作SFをずうっと読んでました

 

 SFの古典として読むべき作品を今頃読んで感動

そしてその続編
 

 そしてついに三部作の最後を飾る『巨人たちの星』を読了しましたよ!

巨人の星じゃないよ

巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))

巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))

 

 

 

ごく一部のSF愛好家の方に(おそらく)好評いただいているこの作品のストーリーアンド私見を、前2作に引き続き、またしてもつらつらと書きますよ!ネタバレ御免。

 

 

 2500万年前に太陽系第五惑星「ミネルヴァ」で栄えたガニメアンは、母星を救うため太陽の温度を上げるという途方もない計画を立てた。しかしその実験を別の星系で行い失敗してしまう。実験を実行したガニメアンのガルース率いるシャピアロン号は時空を超えて現在の地球人たちと遭遇し、歓迎される。

  しかしガニメアンは地球人が自分たちが行った遺伝子実験の結果だと知っていた。彼らは太陽系を地球人に託し、子孫たちが移住したと思われる「ジャイスター」(この名前なんとかならないか)へと去ってゆく。

 地球人は月の裏側の基地からジャイスターに向け、シャピアロン号が飛び立ったという信号を送る。この信号が受理されるのはおそらく何年も先であろう・・・。

 ところが驚くことに数時間後、その返信が来たのである!しかもその内容は英文だった。

 とまあここまでが前2作のおおまかなあらすじ。

 

 いったいどうやってこの通信は行われたのか?この事実をアメリカ大統領外交顧問のノーマン・ペイシーから知らされたヴィクター・ハントは驚愕する。この事実が意味することはただ一つ、地球は以前から監視下にあったということだ。いったい誰が、何のために?

 どうやらテューリアンと呼ばれるガニメアンの子孫たちがその通信に携わっているようなのだが、彼らの地球に対する印象は非常に懐疑的なものであった。地球人をどうやら信頼していない様子なのである。

 そして様々な情報を総合すると、どうやら地球を監視している勢力と、テューリアンとは別の組織らしいのである。

 しかし国連側はこの状況に対し、これと言った手を打たず、事態は遅々として進行しない。アメリカはひょっとしたらソ連(この作品が書かれた時代にはまだソヴィエトがあったのだ)が妨害し、ソ連がテューリアンと独自に外交を結ぶのではないかとも疑い始める。

 そこで月の基地を通さずに木星経由でテューリアンたちと交信をするため、アメリカは極秘裡に木星基地に顔が効くハントたちに協力を求めたのだ。

 

 『星を継ぐもの』から比べるとこの話はかなり政治色が濃い。ホーガンの小説はその特徴として大企業や政治がストーリーの重要なエッセンスになっていることが挙げられるが、それは小説に重厚感を与える一方である種の難解さをも伴う。そのうえ、この『巨人たちの星』はやたらと登場人物が多く、読んでいる途中誰が誰だかわからなくなってしまう。

 僕は一度読み終えたものの、この記事を書くにあたってもう一度ざっと読み返してみた。すると、一度目ではわからなかった部分や伏線がはっきりしてきて、おお、なるほど!と非常に周到に練られたストーリー構成に驚かされたものだ。

 いやもう、本当に良く伏線が回収されているんですよ。そして恒例の謎解きや、驚くべき秘密も明かされる。ではその秘密とは何か。

 

 通信が何光年も向こうの星と行われている以上、どこかにその中継装置があるはずだがその所在は分からない。しかし、ガニメアン・コードに反応するらしいその装置はとにかく存在する。ハントは木星にいるシャノン提督に暗号文でクロスワードを解かせ、木星から月の通信施設を介すことなくジャイスターにメッセージを送信させた。

 

 一方月の通信基地では各国の国連代表団が、テューリアンへの交信に対してどう対処すべきかをめぐって侃々諤々の議論を交わし、一向に成果の見られない状態が続いていた。

 

 ここで登場人物を整理しないと読み進む上で訳がわからなくなってしまう。

 アメリカ合衆国代表

 ノーマン・ペイシー/カレン・ヘラー

 この二人は作品冒頭にハントに接触した人物である。後にカレンは大活躍する。

 

 ソヴィエト代表

 ミコライ・ソブロフスキン

 後にソヴィエト側の動きを表象する人物として機能する。

 

 スェーデン代表/国連委員会議長

 ニール・スヴェレンソン

 色男。ストーリーの鍵を握る小悪党として登場。コミック版の『星を継ぐもの』ではもう少し年配の人物として登場していた。

 

 アマゾンのレヴューを書いている方でこういう外人の名前がたくさん出てくる小説はメモをして自分なりに整理してゆっくり読む、という方がいたがなるほどそういう読み方もあるのか、と目からウロコが落ちる思いだった。やりませんけど。

 

 さて、木星を介してテューリアンから返信が来る。アメリカは彼らと独自に通信チャンネルを開くことに成功したのだ。そしてなんと彼らは地球に秘密裏にやってくるという。ハントはその会談が行われるアラスカはマクラスキー基地へと赴く。

 今か今かと待ちかねる彼らの前に現れたのは宇宙船ではなく、地球のボウイング製の輸送機であった。しかし実はそれはカモフラージュで船内はテューリアンと直接対話が可能なシステムを持った高性能の機体だった。

 おそるおそる内部に足を踏み入れるハントたちに話しかけるものがいた。ヴィザーと名乗ったその声はシャピアロン号に搭載されていたゾラック(いわゆる高性能コンピューター)がさらに進化したタイプのものらしい。

 そこでハントたちテューリアンの最高指導者であるカラザーたちに出会う。その直後ハントはとてつもなく恐ろしイメージを見せられる。それはなんとシャピアロン号を攻撃し、ガニメアンたちを捕虜のように扱う地球人の映像だった。

 「これは本当のことか」という声に必死になって否定するハント。

 

 なぜこのような展開になったかといえば、テューリアンとは別の地球を監視する組織がこのような情報(地球人は好戦的で軍備を整えているという内容)をテューリアンに対して提供していたからであった。

 テューリアンとしては地球からの情報と全く食い違うこの報告の真偽を確かめるために地球人に対して少々手荒な真似をしたということなのだ。かくしてテューリアンは地球人の潔白を理解した。ではなぜ地球監視組織は誤情報を流していたのか。そもそも地球監視組織とは何か?

 

 この時点ではまだ多くの謎を孕む「巨人たちの星」、続きはまたあしたデス。

 

いやー長い小説です。僕のもだけど。

kakuyomu.jp