ニルヴァーナが『ネヴァーマインド』で世界を席巻していた当時、僕は手に入るCDは全て揃えた。その中でも少し特異な位置を占めるCDがこちらの『インセスティサイド』だった。
ジャケットはカートのドローイングだ。カートは歌だけではなくアートの才能も兼ね備えた根っからの芸術家だった。
要はこのアルバムは未発表曲やB面の寄せ集めであり、レコード会社(ゲフィン)がリスナーの関心をつなぎとめるために制作したらしい。また、ゲフィンの前にニルヴァーナが在籍していたインディ・レーベル「SAB POP」が音源をリリースしようとしたのでそれならばとバンド側も出したらしい。
『ネヴァーマインド』とは違いアクの強いアルバムだが当時の勢いに乗って売れたんだろうな。
こちらは中ジャケ。歴代のメンバーが載っている
一曲目、二曲目はすでにシングル「SLIVER」を持っていたので知っていたのだがそれ以降の曲は荒削りでなおかつパンキッシュな曲が満載。
こちらは3曲目の「ステイン」カッコイイぞ!ドラムはおそらくチャド・チャニング
4曲目の『BEEN A SON』。レディングフェスティバルでのライヴ。この頃のカートの状態はヘロインでひどかったらしい
最初は彼らのオリジナルかと思っていた「モリーズリップス」。なんと本家のヴァセンリンズが登場。コードが2つしかない!
このようにニルヴァーナは積極的にアンダーグラウドの素晴らしいバンドたちのカヴァーを通してその手の音楽を知らしめようとしていた。
僕も彼らがきっかけでマッドハニーやスクリーミング・トゥリーズ、バットホール・サーファーズなどを知った。
MUDHONEYのサック・ユー・ドライ。グルーヴィーかつクール!特にサビのドンタタドンタタが好き!
こちらはバットホール・サーファーズ。気持ちのいいエイトビートパンク。なんとのっけからレッチリのフリーが友情出演。Im flying!
バットホール・サーファーズは多方面からリスペクトを受けていてミニストリーのアルバムにも参加している。
こういうバンドを色々あさると、思わぬところにたどり着くから面白い。僕はグランジを聴いて得た最大の収穫はBLIND MELONだと思っている。
グランジかというとそうではないけれど。彼らは別格なのでまた別の機会に書きます
『ネヴァーマインド』の爆発的成功の一方でカートは狂騒の中で過ごすことになり、神経を病み、胃痛に悩み、ヘロインに手を出していく。バンドは荒れ、ライヴは毎回ドラムセットや機材の破壊で終わる。そのいきさつはこちらの本にかなり詳しく書かれている。
ほぼバンドの歴史と内情が網羅できる、素晴らしい著作。読み始めると止まらない!これと合わせてバンドのドキュメンタリー「モンタージュ・オブ・ヘック」を見るといかにカートがギリギリの状態であったかがわかる。
- 作者: マイケルアゼラッド,Michael Azerrad,竹林正子
- 出版社/メーカー: ロッキングオン
- 発売日: 1994/09/01
- メディア: 単行本
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彼の一人娘フランシスが関わっている作品。ガス・ヴァン・サントの『LAST DAYS』よりわかりやすい。
そうした中、娘が生まれたカートは人生の意義を改めて考えるようになり、それに伴いバンドは元気を取り戻し始め、『イン・ユーテロ』という素晴らしい作品を発表する。
スティーヴ・アルビニによるミックスは、ドラムの音がずんずん響くビッグサウンド。スケール感が増しているが曲は1ST寄りでアンダーグランドぽさも残している。しかし、曲には大物の貫禄が滲み出ている
この頃はギターにパット・スメアーを迎えてライヴをこなしていた
このアルバムから唯一作られた公式PV(でいいんだよね?)のHEART SHAPED BOX」。何かの賞をとったらしいけどうろ覚え。曲はもちろん素晴らしいの一言。これからの彼らの可能性を示唆する雄大さを持った名曲。
ベースラインがよく練られている。音も最高、クリス、頑張った。4:22あたりで、クリスがデイヴの肩に手を回すその一瞬の絵がなんとも切ない
そのあとにMTVで数多くのアーティストが名演を残すので有名なアンプラグドシリーズにも出演する。
二十数年前のある夜、僕のアパートに遊びに来た後輩が開口一番言った。
「ニルヴァーナのヴォーカル、自殺したって知ってました?」
「・・・え、マジで・・・」
絶句する僕。
別にそのニュースで泣くとか、そういうわけではなかったけれども、相当のショックを受けたのは事実だった。
とはいえ、これからも僕はニルヴァーナを聴き続けるだろう。今も聴いている。
カートの死後に出された未発表曲、「You know youre right」。こんないい曲を作る才能が失われたということは本当に残念だ。
おまけ。シングルボックスの中身はこんな感じ。ジャケットデザインはほぼカートの手によるものだろう。素晴らしいセンスの持ち主だ。
上に置いてある白黒の「SLIVER」は含まれません
グランジではありませんが