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浴室読書日記/『不在の鳥は霧の彼方へ飛ぶ』

 最近は読書する時間、減るだけ。

 僕は20代半ばまで、大学卒業しても就職せずプロミュージシャンなどという甘ったれた考えで親に迷惑をかけ、ほぼニートとして過ごしていた。そのうちなんとか軌道修正し、現在に至るわけだけれど、その時期はヒマさえあれば本を読んで(というか他にすることがなかった)いた。

 

 月3~4回は神田の古書店街を散策し、毎回リュックに十数冊の本やZ級のホラービデオなどを詰めては喜んでいた。

 御茶ノ水というところは今もそうだけれど楽器屋と古書店街が入り混じる、僕にとってはパラダイスのような場所だった。JR御茶ノ水口を下りて明治大学方面に向かい、クロサワ楽器の横にある狭い路地を入ったところに、今はなき御茶ノ水レコファンがひっそりと営業しており、そこでよくCDを買ったものだ。そうして楽器屋を見て、古本を買って、「いもや」で天丼を食って神保町駅前のディスクユニオンにも寄って帰るというのが定番のルートだった。

 

 何度か通っていると書店の傾向もだんだんわかってきて、僕の好みの本(純文学一般をはじめとして、博物学系統とか、悪魔関連の本とか)を扱っている店を覚え、これぞ!と思う本に、分不相応にも何千円かを出して買ったものだ。 

 

 またあるとき、アパートの横の大家さんの家に新潮社の日本文学全集と世界文学全集が紐でくくられていたのだが、それが気になって尋ねてみると捨てるという。もったいない!僕はすぐにそれを譲り受け、この全集を片っ端から読んでは時間を潰した。そのおかげでどんな小説でも大抵は読めるようになった。先入観なしに読む小説は、面白い。

 またこの全集がなかったら知らなかったであろう梅崎春生椎名麟三などの作家を知ることができた。他にも一期一会と思われる作品が沢山有り、文学の奥深さというものを、その一部とは言え感じることができたのはこの時期のヒマさのおかげだ。その後もそうやって本はどんどんと増え続け都内から引っ越すとき、軽トラックを運転してやって来た僕の親は呆れていた。

 

 かなり売った本もあるけれども、家を作るときに真っ先に想定したのは本棚のことだった。そうしてこのブログのタイトル写真にもある本棚の中身は、娘へと受け継がれていくことを願いたい。でも僕が死んだら全部処分されちゃったりして!

 

 現在は仕事、子供で疲れ、暇な時間があってもアマゾンプライムを見たりYOUTUBEで知らないデスメタルバンドを見て時間を浪費しており読書の時間をあまり取れない(とっていない)。しかし僕はそうは言いながら欠かさず毎日読書をしている。それはいつかといえば、入浴時間だ。

 以前にも書いたのだけれど、湯船のフタの上に本を載せれば首と手だけを出して読書が可能なのだ。冬など何もないのに体を温めるために長時間湯船に浸かるのは苦痛だけれど、本さえあればいくらでも入れる。平均20分~30分は浸かるのでそれなりに読むこともできる。

 なるべく時間を潰したいので読んで疲れないものを中心に選ぶとストーリーを追いやすいSFに偏ってしまう。

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そうして最近はこちらの3冊を読了。

 

             全部アマゾンで1円で買えます

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『不在の鳥は霧の彼方へ飛ぶ』はかなり思わせぶりなタイトル。

 

不在の鳥は霧の彼方へ飛ぶ (ハヤカワ文庫SF)

不在の鳥は霧の彼方へ飛ぶ (ハヤカワ文庫SF)

 

 

 ネタバレしますよ。こんな話でした。

 

 アメリカの片田舎に住むマイクとダニエルの兄弟が登場する。序盤は日常を描写したやや冗長な内容だが、小麦畑で寝そべった兄弟が空にUFOを目撃してから唐突にSF的展開を迎え、以降成人した彼らの運命は異様なものになっていく。

 兄弟は実はともに事故で死亡しており、エイリアンのハチドリがそこに彼らの人生をバックアップすることにより、彼らは生きていると思い込まされているのだ。ディックのユービックみたいな展開(作者のパトリック・オリアリーはディックの後継者とか言われているらしいが、それは言いすぎだろう)。なぜハチドリなのかはよくわからないけれどガジェットとしての意外性を追求した結果なのだと勝手に判断。

 死んだ者達は生前と全く変わらぬ世界で自由に過ごすことを保証されているが、それをよしとしないグループが「越境者」として本当の死を望み、その世界を享受しようとする人々の指導者、クリンダー(実は兄弟の父親)に対して反乱を起こす。兄弟の話が交互に入れ替わり、ある時点で同期する。サスペンス展開が多く、そのあたりは読まされるのだがもう少し哲学的展開があると良かったような気もする。

 兄弟には弟のダニエルの息子をめぐる非常に大きなわだかまりがあるのだが、最後にお互いの経験を一気に共有することで全ては解決し、本当の死を迎える。

おすすめ度で言えば五つ星中3つくらいと思います。

 

 続きはまた明日です。今日は世田谷文学館澁澤龍彦展を見に行ってます。

 

その成果がこちらの小説

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図書館でジャパン/JAPAN(バンド)のCD借り

 図書館で借りたCDの続き。 

最後におお!と思ったのはJAPANの1STが置いてあったこと。

 

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果てしなき反抗

果てしなき反抗

 

  ジャパンについてはこちらの記事で昔書きました。そこそこ読まれているようで、根強い人気を知る。 

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 それにしても何故こんな古いアルバムが?僕はカセットで昔持っていたのだが、僕が聴いていたジャパンはこんな感じだったから、

               エレクトロニクス、ばりばり。

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 初期のこんな彼らとのギャップに驚いたものだ。

              ギターなんてサンダーバード使ってるし。

    www.youtube.com

  後半、何故かプールに服のまま入ってくつろぐ彼ら。ヴォーカルのデビッドが死体ごっこしてます。

    www.youtube.com

 

 VOのデビッド・シルヴィアンの歌い方も拙く、更には後期からの落ち着きからは考えられないようなシャウトをしている。今改めてこのアルバムを聴いてみると、これはこれでかなりいいロックアルバムだと思える。まだベースの故人であるミック・カーンの個性あふれるフレットレス・ベースは聴けないし、シーケンサーの音もなく、ギターがかなりフューチャーされている。後期なんてほとんどギターの音のカケラも無いんだけどね。

 

  このあたりのダークな感じがものすごくかっこいい。

             ぶっぷぱーうわ、ぷぱぱうわ(この曲のベースライン)

     www.youtube.com

 

 1STの頃って見ようによってはグラムロックのようだが、後のヨーロピアン的哀愁に満ちたダークなサウンドをイメージしながら聞くとまた興味深い。当時、ジャパンは日本では大人気で、本国イギリスよりもセールスがあったらしい。他にもその需要に答えてかデュランデュランやカジャ・グーグーのようなアイドルバンドが日本で人気があった。僕はそう言ったバンドで洋楽に目覚めたのだが、彼らはその人気に裏打ちされるテクニックを持ち、また良い曲を書いていた。

 それにしても今、ティーンエイジャーでこういうルックスの良い外タレを好んで聴いている層っているのだろうか?ジャスティン・ビーバーとかイン・シンクとか?

 

今日は忙しくてやや記事少なめです

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図書館で借りるレッチリ、ジャミロクワイ

 僕の住んでいる町に越してきてはや十数年。町立図書館にはそれ以来ずっと通っていて、ここは田舎だが結構洋楽のCDが充実していてよく借りたものだ。あらかためぼしいものは借り尽くしたと思っていたけど、久しぶりにCD棚を見ると、わりと最近のものも入荷されていた。おおっ、と思い、3枚借りてきた。

 

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 言わずと知れたレッド・ホット・チリ・ペッパーズの新譜「THE GTEAWAY」があるじゃないか。

GETAWAY

GETAWAY

 

 

 昔は本当に大好きでリアルタイムで出るたびに買い、最近でも毎年バンドでやっているが、前作「IM WITH YOU」からレンタルで済ませてしまった(しかもあんまり聴いてない。僕はもはや、古いファン)。

   CD全部持ってるわけじゃないなー。古いのとかダビング。むしろマキシの方が充実。   

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レッチリのことはこちらで少し

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  僕は毎年12月に大学時代のサークル仲間でライヴをやっていて、まあほぼ毎年レッチリバンドで参加しているわけですよ。昔からしょっちゅうコピーしていたし、やっぱりフリーのスラップを弾くのは楽しい。

  その動画を恥ずかしながらご覧ください、加工してますけど。こんな感じで毎年ライヴハウスを借りて演奏。かなりの粗さはありますが、素人にしては練習一発でなんとかこのレベル。ベースが僕です。

  いい年してハッスル。3曲オムニバスで。一曲目「OUT IN LA」二曲目「エアロプレイン」三曲目「ストーンコールドブッシュ」。僕がベキバキベースを弾く横で、歌う男のシャツはマンソンにDEICIDE。

    www.youtube.com

 

 そうして今年は何をやろうかとなった時に、去年から参加し始めた僕の小4の娘にピアノを弾かせて(去年はTHE JAMのタウンコールドマリスと相対性理論の歌を歌わせ、かなりちやほやされていた)新譜収録の「DARK NECCESSITIES」をやることになった。

           いい曲ですよね。アンソニー、なんか腹出てないか?

    www.youtube.com

 今は便利な時代でYOUTUBEでピアノのタブ譜なども公開されていて、(まだ本格的に練習はしていない。そろそろしなくちゃ)CDを買う必要性もなかったのだが、おあつらえ向きに図書館に置いてあるのでタダで借りた。

GETAWAY

GETAWAY

 

  全体的に落ち着いた雰囲気。まあ、『母乳』の頃のような若さと破天荒さを求めても無理な話だけれど、新ギタリストのジョシュも二枚目とあってだいぶこなれているようだ。味付け程度にデジタルサウンドも導入されており、安定の大御所ロックアルバムとなっている。いくつかの曲は『ブラッドシュガー~』の雰囲気を感じさせるものもあって、ああ、レッチリこういうサウンドだったよね、などと懐かしむ。

 

 そうしてジャミロクワイの「ロック・ダスト・ライト・スター」。

ロック・ダスト・ライト・スター

ロック・ダスト・ライト・スター

 

  最近のかと思ったら、新譜はこの間出たばかり。このアルバム2010年!そんな前のアルバムだったの?とか思って調べたらこの間新譜が出ていたんだね。このあたり、僕追いきれていないなあ。でも数年前まではかなり聴いていたよ。

 

          右上のMーBEATとのコラボは傑作。多分あんまり知られていないけど。

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 内容はこちらも安定のジャミロクワイサウンド。ややギターサウンドが強調されている印象でロック寄りかな。でもなんか聞いたことあるなーと思ったら、1年くらい前に同じの借りて既にダビングしてあった!

 

 ジャミロクワイはデビューの頃かなり話題になって、イギリスのアシッド・ジャズの流れから出てきたのに何故か友人は「インディアン・ファンク」(バンド名がインディアン語に由来しているから勘違いしたのだろう)ってすごくね!みたいに言っていた。僕はインディアン・ファンクがなんだかよくわからなかったがとりあえず聴くべきモノと思って2NDの「RETURN OF SPACE COWBOY」を買って聴いたらこれがまた傑作!

       これ逆回転で再生しているよね。手間かかってんだろうなー。

     www.youtube.com 

スペース・カウボーイの逆襲

スペース・カウボーイの逆襲

 

 その後すぐに1STを購入。その耳あたりの良さと個性的なサウンドが気に入ってよく聴いていたっけ。こちらのシングルもいい曲だ。そのうちに日本でも「ヴァーチャルインセニティ」であれよあれよという間にブレイク。

           きっと誰もがどこかで耳にして、目にしているはず。

    www.youtube.com

 

ジャミロクワイのほかの曲はこちらでも。 
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もう一枚借りたジャパンについてはまた明日。

 

続けてます

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スマッシング・パンプキンズ/ADORE~マシーナの頃

「パイシーズ・イスカリオット」のことを書いていたら

 

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 リマスターを含むボックスセットの存在を知ってしまい、アマゾンでこのお気に入りのアルバムを再購入してしまった。そうして、昨日家に届きました。

 

                      結構厚みのある箱

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中身は、CD2枚、DVD1枚、カセットテープ一本といい雰囲気の写真(男の子はひょっとしてビリーか?)詳細なライナー。

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 ディスク1はリマスター盤。1曲目の「SOOTHE」はギター一本なのでちとわかりにくいけれど、二曲目の「FRAIL & BEDAZZLED」は低音が広がり、全体として重厚さが増した印象。聴き比べてはいないけれど、リマスター感はある。で、結局久しぶりに通して聴いた。やっぱり、このアルバムいいね。

 2枚目はアウトテイク集。そもそもこのアルバムがアウトテイク集なんだからそのアウトテイクってなんだという気もするけれど、こちらはアコースティック曲が中心で静かな印象。でもさすがに佳曲ぞろい。

 3枚目のディスクはデビュー前後のスタジオライヴと初期のライヴを収録。全然知らない初期の曲を演奏していて、その曲がほとんどニューウエーブ調なのに驚いた。ディストーションがかかってギンギンになる曲はない。ビリーが若くてかっこよく、イハは変なリーゼントの髪型だった。僕はまだまだこのバンドについて知らないことが多いのだと思ったよ。

 このDVDの最後に収録されていたのが「HELLO KITTY KAT」のライヴ。これが一番の拾い物だった!本来は「サイアミーズ」アルバムに収録されるはずだったらしいのだが、どうやら曲調が「GEEK USA」とかぶる感じだからだろう、「パイシーズ」に収録されている曲。バリバリのパンプキン節ロックでむちゃくちゃカッコいい。

 

                   こちらは別バージョン

      www.youtube.com

 

 で、このカセットはなんだ?

              中身は真っ赤なテープです。

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 その疑問はDVDの冒頭を見て氷解。なんとデビュー当時のデモテープの復刻だった!彼らが当時色々なレーベルに送っていたテープだった。すでにこのジャケットから例の少女趣味的で、アールヌーボー調なスマパンの雰囲気が出ている。内容はDVDに収録されているものが半分くらい。まだニューウェーブ感が強い曲調だけど、ちょっとしてギターのフレーズにスマパンらしさが垣間見られ興味深い。まあ、コレクターズ・アイテムですね。あと、ジャケット写真の人物はイハだと思っていたらそうではなく、ビリーの奥さんだって。

 それにしても、このボックスセットシリース、調べたら1STの「GISH」と「サイアミーズ」も同様にあるではないか。なぜか「メロンコリー」はなく、「ADORE」もリリースされている。「サイアミーズ」欲しいな。

 以上、ボックスセット寸評でした。

 

 さて、「メロンコリー」アルバムでバンドの勢いが最高潮に達した時、ドラマーのジミーのドラッグ問題でキーボーディストが死亡。ジミーは解雇されてしまう。

 これはバンドにとってかなりの痛手だった。だって、スマパンのあの独特のリズム感は、ジミーのドラム無しでは成り立たないから。サポートドラムのマット・ウォーカーはテクニシャンなんだけれど、無味無臭といった感じ。MTVでオーケストラをバックに「TONIGHT、TONIGHT」を演奏していたのを見た僕は、かなりの物足りなさを感じた。実際メンバーも「マットは正確すぎて逆にやりづらい」といった発言をしていた。

 そうしてジミー不在で制作された「ADORE」はファンの期待とは違う方向に完成し、セールス的にも不発に終わる。

 

Adore

Adore

 

 

 このころプロディジーをはじめとするデジ・ロック(死語)がシーンを席巻していたというのもあるのだろう、打ち込みがメインの地味なアルバムだった。僕も一応買ったはいいがほとんど聴いていない。

 

         この頃になるとビリーのヴィジュアルが異様になっている 

    www.youtube.com

 ・・・やっぱりこれ、ビリーのソロでもいいよね。吸血鬼ノスフェラトゥか。

 だからこのアルバム、多くの人と同じように思い入れはほとんどない。

 

 このままでは終われないと思ったのだろう、ビリーはもう一度チェンバレンを呼び戻して『マシーナ』を制作する。

 

マシーナ/ザ・マシーン・オブ・ゴッド

マシーナ/ザ・マシーン・オブ・ゴッド

 

 

 ただ、アルバム完成と同時にベースのダーシーは脱退。元ホールのメリッサをベースに迎え「エバーラスティングゲイジ」で再びギターロックに回帰。

 

     www.youtube.com

 

 ディストーションのかかったベース、低いチューニング、とパワフルでカッコいい曲ではあり、曲終わりの盛り上がり(ギターやアンプ、ドラムを破壊)もすごいんだけれど、もはやあの頃の勢いとは別のものだ。

 

                この曲も大仰でなんだか演劇を見ているようだ。

       www.youtube.com

 

 そこらへんの若者だった昔に比べると、ナルシス感がすごい。このアルバムのPVで一番心に迫るのは、むしろ彼らメインではない「Try、Try、Try」の方だ。

 

 こんなにやるせないPVはそうはない。ラストに僅かな救い。「レクイエム・フォー・ドリーム」じゃないんだから!

     www.youtube.com

 

 確かどこかでこのアルバムは解散を念頭に作ったということをビリーが言っていた(うろおぼえ)。そのとおり、オリジナル・メンバーでのアルバムはこれが最後となった。スマパンは日本でも武道館でコンサートを開くほどの人気を獲得していたけれど。

 

 その後のチェンバレンと結成したZWANもいいバンドだった。結局1枚で終了。

 

            トリプルギターでベースはまたしても女子。

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 正直、そんなに聴き込んでません。結構いいんだけどね。

Mary Star of the Sea

Mary Star of the Sea

 

 

 今もビリーが頑張ってスマパンを続けている一方、当時の注目はない。もちろん人気は根強いが、一線で活躍し続けることって大変なことなんだなあ。

 

    スマパンについての僕の思いでこれにて終ー了ー。書き尽くしました。

 

続けることも大事

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スマッシング・パンプキンズ/メロンコリーのころ

 ついに『メロンコリーそして終わりのない悲しみ』がリリースされる。

 

 

 メロンコリーっていうシャレ、微妙。でも中身はスゲエ。

 2枚組のフルボリュームでお腹いっぱい。発売前から前評判がかなり高く、僕はCDを買って家に着き、開封するのももどかしくディスクをセットした。

 ビリー自身が弾いているというピアノの静かな調べから、大作のオープニングにふさわしい「TONIGHT,TONIGHT」で幕を開ける。

 

                コスプレがすごい。

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 素晴らしい曲だ。まさにこのアルバムでスマパンは歴史に名を残した。サイアミーズに比べると、ギターの音が少しこもった感じはあるかな。

 ただ、MTVで豪華なこの曲のビデオを初めて見たとき、「えぇ・・・どうしたビリー!」となってしまった。だって、つるつるのスキンヘッド。

 当時僕は「きっと薄くなってきた頭髪を晒すよりはこちらを選んだのだろうな」と勘ぐった。

 ※これはまさに下衆の勘ぐりで、どうやら近親者がお亡くなりになると、このようにする風習があるとのことです。

 ちなみにリード・トラックは「Bullet with Butterfly Wings」。「世界は吸血鬼」と歌いだす。

 

           リズムは例のすたんとたん!

       www.youtube.com

 

 当時の彼らを囲む狂騒が、彼をしてそう歌わしめたらしい。このビデオのときはまだビリーの頭髪は健在。でもやはりじわじわと禿頭(とくとう)の恐怖がキテル気配は否めない。やはりロックスターは常にその動向や容姿を意識されているから、こういう見た目の問題はかなり深刻なのに違いない。

 それはそうと、このビデオなんかすごいよね。流石にお金がかかっている。すごいといえば、当時、ビリーの履いていた銀色のパンツがどうにも気になって仕方がなかった。カッコいいのか・・・?あと「ZERO」と書いてあるロンT。

 一方でサイドギタリストのイハはおしゃれで有名。ついには自らのブランド「ヴェイパー」をスタートさせていた。今現在は「ヴェイパライズ」に変わっている。

 

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  なんとBEAMSでこんなに展開していたんだな。「監修」というところが微妙だね。ヴェイパーの頃はデザインをちゃんとやっていた気がするけど、ブランド名変えてライセンスにしたのかね。かなり細身のイメージで、その昔このブランドの服をどっかの店で発見して試着したらパンパンで着られなかった。でもちょっと見たら今流行りのビッグシルエットじゃん。それでいいのか?

 

 このアルバムは大作にふさわしく、バラエティに富んだ曲がラインナップされていた。シングルとなった前述のバレット~の次がどことなく懐かしい感じのする『1979』。これもこれで、まさにスマパン

   

                  次から次へと曲が出来てたんじゃないかな、この頃。

               www.youtube.com

 

 その一方で、「並みのヘヴィーメタルバンドを軽く蹴散らすほどの破壊力」などとどこかの雑誌で形容されていた「XYZ」。

 

     www.youtube.com

 

 とまあ、やりたいことをやり尽くした感のあるこのアルバムでスマパンは完全に天下をとった。そして二度目の来日公演に僕は行った。ただ、関東の会場が何故か川崎市のなんとかホールという至極交通不便な場所にある場所で、駅からだいぶ歩いた記憶がある。スマパンがこけらおとしだったんじゃないかな。

 

 メロンコリーがビルボード1位に輝いたとはいえ、まだその頃は日本ではようやく知名度が上がって来たからなのか、そんなに大きなホールではなかった。しかも客も満員というわけでもない。これが本国だったらアリーナクラスだったと思うんだけど、まあ逆にかなりの近さで彼らを見ることができて幸運だったと言えるだろう。

 もう20年以上前のことだからあんまり良くは覚えていないんだけれど、確か一曲目演奏後(その曲目さえ覚えていない)に通訳の女の人がステージに上がり、ライヴの構成について説明した。曰く、このライヴは3部構成で最初は通常のセット、2部目はアコースティックセット、そして最後はロックのセットだということだった。

 オールスタンディングだったので最初のほうこそ僕は前でダイヴしたりしていたが、だんだんと疲れてきて、おとなしめの曲の時は後ろに下がって観ていたっけ。1部が終わり、休憩をはさんで2部になると彼らはパジャマ姿で椅子に座り、アコースティックギターで演奏し始めた。覚えているのはイハがソロを弾いている途中でビリーがニヤニヤしながら、急にわざとコードを転調させて、それに必死についていこうとしてイハが

苦笑いをしていたことだ。この頃の彼らは仲が良さそうだった。

  

 こうしてとんでもないアルバムのあとにはどんなサウンドが来るのか、想像もつかなかった。とにかく、これを超えるとんでもないビッグなアルバムが来るのだろうと多くのファンは期待していたに違いない。

 しかし、予想に反して届けられた新譜はほとんど派手さのない、地味なアルバム『ADORE』だった・・・。

 

メタルもロックですよ

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スマッシング・パンプキンズ/パイシーズ・イスカリオット(Pisces Iscariot) の思いで

 『サイアミーズ・ドリーム』のあとに出されたこのアウトテイク集『パイシーズ・イスカリオット』もよく聴いた。

 

Pisces Iscariot

Pisces Iscariot

 

 

 改めてこのCDのことを調べていたら、なんとリマスターでボックスセットが出ているじゃないか!ディスク4枚組の豪華セット。しかもアマゾンでほぼ新品の中古が3000円で売っている!買っちゃった!楽天は8000円とかしたのに、アマゾンすご。届いたら報告します。他のアルバムもボックスセット出ているけれど、まあ、これだけとりあえす・・・。最近、こういうリマスターが多くて。メタリカも旧作リマスターラッシュで特に『マスター・オブ・パペッツ』はYOUTUBEに上がっていたモノが明らかに音質が向上しているので買わなきゃ・・・。

 

      スマパン関係ないけど。ただでさえ画期的な音だったのに、さらに音質が向上している!

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 確か何かのレヴューで、このタイトル「パイシーズ・イスカリオット=魚座の裏切り」は魚座であるカート・コバーンコートニー・ラブをビリーから奪ったことに関しての何らかの関わりがあるのでは、と指摘していた。そして、ビリー自身も魚座である。何かしらの意味合いが込められていると思うのは当然だろう。

 まあ、そういうゴシップ的興味はさておいて、1曲目の『SOOTHE』が僕は大のお気に入りだ。

       なんと美しいアコースティックミュージックなのだろう。

    www.youtube.com

 この曲、ビリーの自宅のベッドの上で録音したそうだ。ジャケットのライナーにビリーが「よく聴くとバスの音が入っている」と言ってたので耳を済ませると、2:00過ぎのあたりでかすかに「ぶぁー」という音が確かに入ってる!なんか感動。

 僕はあんまりこの曲が気に入りすぎて、早速耳コピして弾き語り、更には似たような曲が作りたくなり、作りました。それが、以前公開したこちらの『一握の砂』という曲デス。元ネタ、これです。

          再生回数3って!ぜひ皆さん聴いてください。パクリがわかりますよ!

      www.youtube.com

 

       失礼しました。そうして、二曲目はいつものスマパン節。

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 例のハネる「スタントタン!スタントタン!」というリズムを使ったやつ。その他、珍しくサイドギターのイハがヴォーカルをとった彼の曲「ブルー・アウェイ」も心地よい。

 

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    僕の結婚式の時に入場に使った曲。きっと誰も知らなかっただろう。

    www.youtube .com

 全体的には『サイアミーズ』に比べると確かに地味なんだけど、中毒性が高いのだ。とにかくこのアルバム、定期的に聴きたくなります。早くボックスセット届け。

 さて、さらにこの時期このタイミングでビデオ作品が発売される。「ヴューフォリア」。

ジャケットの豚の頭を被って万歳しているのはプロデューサーであり、ガービッジのドラマーブッチ・ビグ。

ヴューフォリア [DVD]

ヴューフォリア [DVD]

 

  これはいい作品だった。ビデオの中にも同様のシーンが出てくる。それにしても、ビデオですよ、ビデオ。まだDVDが普及していなかったんだよね。

 

         実物。

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 となりのビデオは新宿エアーズで買ったブートレグ。この他「NO ALTERNATIVE」とかいうライヴ1曲のみが入ったオムニバスビデオも持ってるんだけど実家に置いたまま。

No Alternative

No Alternative

 

 

 

 このビデオ(ヴィーフォリアね)も何度も見たなあ。「DISARM」のロックヴァージョンとか、逆に「天使のロック」や「マヨネーズ」のアコースティックヴァージョンが収録されている。「GEEK USA」のライヴもハイテンションだった。

 面白いのは初来日したときの「SLUNK」を演奏したTV出演のやつだ。視界の三宅裕司氏の顔が気に入ったのか、何故か二度彼の顔が挿入される。そのたび笑ってしまう。

 

  イハが日本人と紹介されるのだが、なんか恥ずかしそう。質問に対するビリーの受け答えもテキトー。

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 なんだこれ。あと、何故か突然「THE FROGS」というバンドが登場し、3分ほどそのクレイジーなライヴ(ギターを投げて暴れたり、ステージ上で爆発が起きたりする)と、「ホモ、HOMO・・・」というサビの、ハイスクールでバスルームの友人にときめいたと歌うハゲおやじの独演が収録されている。

 

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 そして絶叫。仲がいいのかな?全くもって当時意味不明だった。今も意味不明。このバンド、他のレパートリー曲のタイトルが「GOD IS GAY」とかしょーもな。

 後にこのビデオ、DVDで発売されたのだが、それにはライヴのおまけが1時間くらいついていた。久しぶりに観るかな。

 そうしているうちに、スマパンは世界での人気が爆発し、満を持しての『メロコリーと終わりのない悲しみ』がリリースされる。発売日に走った!ビリーがスキンヘッドでびっくり!

続きはまた明日!

 

 ノーオルタナティヴ!

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スマッシング・パンプキンズ、どっどたんと、すたととたん!

  スマッシング・パンプキンズ、イェー!

 『サイアミーズ・ドリーム』、この名盤を僕なりにお話ししてます。

サイアミーズ・ドリーム

サイアミーズ・ドリーム

 

 

 『HANMMER』のあとの『ROCKET』は飛ばすときある・・・。そうして、その後の『DISARM』へと。

 

   日本語訳「武装解除」って!まあ、そのままの意味だけどさ・・・。君の笑顔に武装解除

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 この曲はこのアルバムの素晴らしい息抜きになっているよね。それまで結構ゴリゴリのロックサウンドが鳴っていたのに突然アコースティックギターにストリングスの美しい調べ!ちなみにこの曲のコード、非常に簡単なので弾きたい人は少し練習すればこの曲がモノになるよ!Eマイナー、C,G、Dという基本コードの繰り返し。得てして名曲はシンプルにできているという良い見本。

 そうして、その次の『SOMA』もかったるいので飛ばし、いよいよキター!「GEEK USA」!

                 バンドの勢いがものすごい!

     www.youtube.com

 

 この曲はこのアルバムのハイライトだろう。ドラムのジミー・チェンバレンのドカンボスンという独特のノリが十分堪能できる。

 スマパンって、基本ビリーのギターと歌声、そしてこのジミーのドラムで成り立っているよね。だから再結成もこの二人が中心なわけなんだけど、とにかくすぐに「あ、このドラムジミーだ!」と分かるくらいの絶妙なリズム感とノリを彼は持っているのだ。

 そうして当たり前だけれど、ものすごく上手い。正直、ダーシーのベースとの実力差は歴然(サイアミーズ・ドリームのベースはほとんどビリーが弾いたという話)。でも何故かスマパンは歴代ベーシストは女性ばかりで、これはビリーの主義もあるのだろう。女性がベースを弾くことで、パワーロックにある種のソフトさが加わるのかもしれない。

GEEK USA」は上のビデオのように、ライヴでも定番の曲だ。まあ、こんなに盛り上がる曲だもの。Aメロで入ってくるギターのハーモニーフレーズなどは、鳥肌が立つくらいの絶妙さだ。

 基本的にスマパンの速い曲ってリズムが同じで「どっどたんと、すたととたん」と3拍目のすぐあとにスネアが入って跳ねる感じのものが多い。これ、1STアルバム一曲目の「I AM ONE」から始まって、

             どっどたんと、すたととたん!

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 その後の彼らの曲の定番リズムなんだけど、さすがに後期になって(アウトテイク集の「ROTTEN APPLES」なんてこればっか)このリズムが出てくると僕は「あーまたこスマパンリズムか」と若干辟易したものだ。とか言いつつ、僕はそのリズムをパクったオリジナル曲を結構作ったけどね。やっぱそのリズムはかっこいいんですよ。

 

 ちなみに最近若い日本のバンドたちは高速8ビートの裏打ちが流行っているらしいね。「すつーすつーすつーすつー」っていった感じの。「凛として時雨」あたりから流行ったんだろうか。

         スマパン全く関係ないけど。こっちのヤケクソ気味の勢いもすごいよね。

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 「サイアミーズ・ドリーム」のほうへ戻ると、「GEEK USA」の派手な打ち上げ花火の乱舞のあとに静かなアルペジオが流れ、スマパンの曲の中でも叙情性の高い『MAYONAISE』だ。もう、これでもか!というくらいに佳曲が続くのでこのアルバムは今でも色褪せない。

                ほんわかと暖かな気持ちになれる曲

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 例によって太く温かいギターの重奏をバックに、サビに入ると一瞬ブレイク、そしてそのブレイクの隙間に「キィー」という高い音が無造作に挿入される。この神がかり的なアレンジは相当練られたものではないだろうか。それがしつこくなく、自然に入ってきて間奏、ソロへとなだれ込み、曲はグランドフィナーレと言ってもいいようなクライマックスを迎え再び静かなアルペジオで終わる。

 僕はここまでこのアルバムを聴くと大体満足して止めてしまいます。

 

 とにかくこの『サイアミーズ・ドリーム』で一気に心を鷲掴みにされた僕は1ST、シングル、そうして少し経ってから発売されたアウトテイク集『PISCES ISCARIOT』を購入するのだが、このアルバムも傑作ぞろい。

このアップ、イハの顔だよね? 

Pisces Iscariot (Remastered)

Pisces Iscariot (Remastered)

 

  何度も言うけど、この頃がビリーの才能が最も花開いていた頃だと(僕は)思う。曲が次から次へと出来ていたのだろう。

さて、では明日はこの『PISCES ISCARIOT』の話です。

 

文芸メタル小説のマスターピースとなりたい

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