最近は読書する時間、減るだけ。
僕は20代半ばまで、大学卒業しても就職せずプロミュージシャンなどという甘ったれた考えで親に迷惑をかけ、ほぼニートとして過ごしていた。そのうちなんとか軌道修正し、現在に至るわけだけれど、その時期はヒマさえあれば本を読んで(というか他にすることがなかった)いた。
月3~4回は神田の古書店街を散策し、毎回リュックに十数冊の本やZ級のホラービデオなどを詰めては喜んでいた。
御茶ノ水というところは今もそうだけれど楽器屋と古書店街が入り混じる、僕にとってはパラダイスのような場所だった。JR御茶ノ水口を下りて明治大学方面に向かい、クロサワ楽器の横にある狭い路地を入ったところに、今はなき御茶ノ水レコファンがひっそりと営業しており、そこでよくCDを買ったものだ。そうして楽器屋を見て、古本を買って、「いもや」で天丼を食って神保町駅前のディスクユニオンにも寄って帰るというのが定番のルートだった。
何度か通っていると書店の傾向もだんだんわかってきて、僕の好みの本(純文学一般をはじめとして、博物学系統とか、悪魔関連の本とか)を扱っている店を覚え、これぞ!と思う本に、分不相応にも何千円かを出して買ったものだ。
またあるとき、アパートの横の大家さんの家に新潮社の日本文学全集と世界文学全集が紐でくくられていたのだが、それが気になって尋ねてみると捨てるという。もったいない!僕はすぐにそれを譲り受け、この全集を片っ端から読んでは時間を潰した。そのおかげでどんな小説でも大抵は読めるようになった。先入観なしに読む小説は、面白い。
またこの全集がなかったら知らなかったであろう梅崎春生や椎名麟三などの作家を知ることができた。他にも一期一会と思われる作品が沢山有り、文学の奥深さというものを、その一部とは言え感じることができたのはこの時期のヒマさのおかげだ。その後もそうやって本はどんどんと増え続け都内から引っ越すとき、軽トラックを運転してやって来た僕の親は呆れていた。
かなり売った本もあるけれども、家を作るときに真っ先に想定したのは本棚のことだった。そうしてこのブログのタイトル写真にもある本棚の中身は、娘へと受け継がれていくことを願いたい。でも僕が死んだら全部処分されちゃったりして!
現在は仕事、子供で疲れ、暇な時間があってもアマゾンプライムを見たりYOUTUBEで知らないデスメタルバンドを見て時間を浪費しており読書の時間をあまり取れない(とっていない)。しかし僕はそうは言いながら欠かさず毎日読書をしている。それはいつかといえば、入浴時間だ。
以前にも書いたのだけれど、湯船のフタの上に本を載せれば首と手だけを出して読書が可能なのだ。冬など何もないのに体を温めるために長時間湯船に浸かるのは苦痛だけれど、本さえあればいくらでも入れる。平均20分~30分は浸かるのでそれなりに読むこともできる。
なるべく時間を潰したいので読んで疲れないものを中心に選ぶとストーリーを追いやすいSFに偏ってしまう。
そうして最近はこちらの3冊を読了。
全部アマゾンで1円で買えます
『不在の鳥は霧の彼方へ飛ぶ』はかなり思わせぶりなタイトル。
- 作者: パトリックオリアリー,Patrick O'Leary,中原尚哉
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/05
- メディア: 文庫
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ネタバレしますよ。こんな話でした。
アメリカの片田舎に住むマイクとダニエルの兄弟が登場する。序盤は日常を描写したやや冗長な内容だが、小麦畑で寝そべった兄弟が空にUFOを目撃してから唐突にSF的展開を迎え、以降成人した彼らの運命は異様なものになっていく。
兄弟は実はともに事故で死亡しており、エイリアンのハチドリがそこに彼らの人生をバックアップすることにより、彼らは生きていると思い込まされているのだ。ディックのユービックみたいな展開(作者のパトリック・オリアリーはディックの後継者とか言われているらしいが、それは言いすぎだろう)。なぜハチドリなのかはよくわからないけれどガジェットとしての意外性を追求した結果なのだと勝手に判断。
死んだ者達は生前と全く変わらぬ世界で自由に過ごすことを保証されているが、それをよしとしないグループが「越境者」として本当の死を望み、その世界を享受しようとする人々の指導者、クリンダー(実は兄弟の父親)に対して反乱を起こす。兄弟の話が交互に入れ替わり、ある時点で同期する。サスペンス展開が多く、そのあたりは読まされるのだがもう少し哲学的展開があると良かったような気もする。
兄弟には弟のダニエルの息子をめぐる非常に大きなわだかまりがあるのだが、最後にお互いの経験を一気に共有することで全ては解決し、本当の死を迎える。
おすすめ度で言えば五つ星中3つくらいと思います。
続きはまた明日です。今日は世田谷文学館へ澁澤龍彦展を見に行ってます。
その成果がこちらの小説