音楽と本

僕のカルチャーセレクトショップ

ヴィデオドロームで見た夢 3

 いつまで続くのかヴィデオドロームの夢物語。

ビデオドローム

ビデオドローム

  • アーティスト: サントラ
  • 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
  • 発売日: 1998/12/23
  • メディア: CD
  • クリック: 2回
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 ようやくのことで腹から手を抜いたマックスは拳銃がどこにもないことに狼狽する。すると突然電話が鳴り響き、下で彼を待たせている車があると告げる。彼はリムジンに乗り込むとテレビがつき、バリー・コンベックスなる人物が登場し「君の頭の中の腫瘍に興味がある」と語りかける。そうして行き着いた先は「スペクタクル・オプティカルというメガネ屋だった。深夜の無人のメガネショップで様々なメガネをとっかえ引っ変え試すマックス。そこに突然バリーが登場し、彼を店の奥へと連れ込む。そして奇妙なヘルメットを示し、「ここに君の悪夢を記録する」とのたまう。そして「君を救う」とも言うのである。

 暗闇で不気味に光るエイリアンのようなヘルメットをかぶり、ひとり座るマックス。バリーは「気味が悪いのでね」と言い残し、姿を消す。そうしてすぐに幻覚は始まる。ニッキーが姿を現すのだ。彼はあのヴィデオドロームに出てくる岩造りの部屋にいて、ムチを手にしていた。そして最初はためらいながら、徐々にニッキーを鞭打っていく。するといつの間にかニッキーはあの不定形なテレビに形を変え、画面の中で痛みに喘ぐ。だが、次の画面にはあの老女、マーシャが映っており、そこでマックスは自宅のベッドで目を覚ます。

 幻覚かと思った瞬間、ベッドにマーシャの死体があることに愕然とするマックス。正直、このあたりは物語が破綻している気もしないが、逆にこの訳のわからなさがこの映画の魅力なのだ。変に整合性を求めてつじつまを合わせようと鑑賞するよりも、この夢のような世界に身を委ねて鑑賞するのがこの映画の正しい見方に違いない。

 

 焦ったマックスは助手のハーランを部屋に呼ぶが、既にその時にはマーシャの死体は影も形もなかった。朝5時に呼び出され不機嫌なハーランに対し、マックスはこれは絶対ヴィデオドロームの影響だと主張し後で会社のラボで落ち合うことを約束する。

 しかし、ラボでマックスは意外な人物に遭遇する。メガネ屋のバリーがそこに現れたのだ。そしてバリーはヴィデオドロームは自分たちが作ったと告白する。腐った、特にマックスのチャンネル83のようなテレビに溺れて弱くなった北米の力を取り戻すため、人々にヴィデオドローム見せるのだという。そのために協力しろと迫る彼らを拒絶し部屋を出ていこうとするマックスだったが、バリーはドロドロに溶けたビデオを手に持っていた!

 突然部屋には嵐が吹き荒れ、マックスはドアに貼り付けられる。そして勝手にシャツのボタンが弾け飛び、彼の腹に空いた裂け目をあらわにする。そしてバリーはその中に躊躇なくドロドロのビデオを格納し、汚れた手をひと振りしてハーランとともに去っていく。

 映画はこのあたりから加速度的にマックスの幻覚と現実をクロスオーバーさせ、一体何が本当で何が虚構なのか区別がつかない展開となる。

 腹に入れられたテープを取り出そうとしたマックスだったが、腹から出てきたのはあのなくなった拳銃だった!そして拳銃からはバイオメカニカルな触手が伸びてマックスの手と融合してしまうのだ。マックスの片手はドロドロに溶けた拳銃の拳となった。そしてそこにバリーの声がこだまする。

「敵を殺せ。そして我々にチャンネル83をよこせ」

 

バックで静かに通底して流れるハワード・ショアの不協和音を駆使した劇伴・・・

www.youtube.com

目を覚ましたマックスは会社の役員たちがいる会議室へと乗り込み、次々と彼らを射殺する。そして被害者のように振舞ってその場をうまく逃げおおせるのだ。彼を不安そうに見送る秘書のブライディの表情が切ない。ひょっとしたら彼女はマックスに想いを抱いていたのかもしれないが、この短い映画の中ではそれを確かめる表現を見つけることはできない。弱々しい笑顔を見せ、マックスは彼女の元を去る。

 

またあすへと続くという

kakuyomu.jp