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メタリカと僕の青春時代/スラッシュメタル勃興期

 

MASTER OF PUPPETS (REMASTERED) [CD]

MASTER OF PUPPETS (REMASTERED) [CD]

 

 

 

前回までのあらすじ

 

otominarukami.hatenablog.com

 大学生になり、バンドサークルに入った僕だったが、一緒にメタリカをやってくれる仲間が見つからないまま一年生を終わろうとしていた・・・。

 

 僕は二年生になり、新人勧誘の時期がやってきた。その日僕はサークルにあてがわれた場所で大音量でメタリカを流して受付をやっていた。そのおかげでサークルの他のメンバーからは、「うるせー!」とか「これじゃ人来ないよ」などと言われたりもした。ジェームスが「バテリー!」と叫ぶところではみんなが爆笑していた。

 当時のメタリカの扱いはそんなものだった。しかし、めぐりあわせというものは面白いもので、メタリカが流れていたから、という理由で二人の一年生が入ってきたのだ。彼らの一人とは今でも親交があるから人生わからない。

 

 新人の彼らは高校生の時にすでにメタリカのバンドを組んでいたという。

 僕は「へぇー!メタリカやってたんだ!いーなあ!いーなあ!」と、まるで小学生が友人の超合金のおもちゃをうらやむよううな調子で話を聞いていた。僕らはすぐに意気投合した。すぐにでもバンドを始めたかったが、僕はその頃パートはベースで、彼らはギター・ベース、しかもドラムをたたける人材がいない。

 しかたなく次の一年間もそれぞれ別のバンドで我慢をすることになった。ベースが二人いても仕方がないので僕はギターを練習し始め、ジェームスヘットフィールドとしていつかステージに立つことを夢見て一生懸命歌詞を覚え始めた。

 

 さて、その折も折り、深夜で「ピュア・ロック」という伊藤政則氏が出演するメタル系の番組が開始された。あのころのメタル好きはみんな日曜深夜を楽しみにしていた。まだまだ情報の少ないあの頃、僕もご多分に漏れず毎週録画しては食い入るように見ていたのだが、初めてメガデスの「WAKE UP DEAD」が放送され、衝撃を受けた。

 


Megadeth - Wake Up Dead

ああ、いい曲だなあ!

よくこんな曲を思いついたもんだ。1987年の曲!

 当時、僕はメガデスについて、元メタリカのデイヴ・ムステインのやっているバンドとしてしか名前を知らなかったのだが、これを聴いてすぐにCDを買った。

 また、アンスラックスを初めて聞いたのもこの番組だった。


Anthrax - Madhouse


そしてスレイヤーを加えていわゆるスラッシュのBIG4となる。


Slayer: Raining Blood

 

 間違いなく彼らは新しい潮流だった。これ以降、僕と同じような道をたどった人は多いはずだ。次々にスラッシュ系のバンドをあさり始めるのだ。

 テスタメント


TESTAMENT - The Legacy [Full Album]

いわゆるあのザクザクという音、すなわちベイエリア・クランチの親分。

エクソダス


Exodus - [1990] Impact is Imminent [Full Album]

ギターの音!すっこんすっこんという子気味良いドラム。バカすぎるジャケット。ベストオブスラッシュメタル!ギターのゲイリーホルトは今やスレイヤーに加入。


Heathen "Victims Of Deception" (FULL ALBUM) [HD]

少しマイナーになるがヒーゼン。ピュアロックに出演していた和田誠氏に教えてもらった。当時僕はこのバンドが一番ギターの音圧がすごいと思った。とにかくスラッシュメタルはギターの音質によってアルバムの出来が左右されるのだそのあたりはかなり重要な要素だ。

オーバーキル


Overkill - Fuck You

うわー懐かしい。よくこんな曲を出したよ。

 

キリがないので止めるが、当時他にもこの手のバンドが雨後のタケノコ状態。ラーズロキット、フォビドゥン、ヴァイオレンス、VOIVOD、デスエンジェル、DRI・・・まだまだたくさんいるがとにかく貪るように聴いた。

  さてそんな風にスラッシュメタル漬けの毎日を過ごしていた僕だが肝心のバンド活動の方は、先輩にベースの腕を見込まれたディープ・パープルバンドという渋い世界で行われていた。

 

 ところで、ここでヘビーメタルコピーバンドあるある。

 

 ハイトーンヴォイスが出せる人材がいない。

 ・・・仕方がないので女の子を使ってごまかす。でもやっぱりなんか違う。

 

 ギターはやたらといる。

 ・・・しかも早弾きに命をかけるような奴らが多い。長髪が多い。

 

 そもそもドラムが少ない。

 ・・・それでもってさらにツーバスを踏めるやつとなるとレアメタル並みの扱い。

 

 僕を取り巻く状況も似たようなものだった。当時メタリカを聴いている人間は異端視されていたので更に状況は困難だった。後輩二人と早くメタリカやりてぇな!と酒を飲む毎日。

 そんな中、後輩の1年生の上手いドラマーが突如としてメタリカに目覚め、ついにメタリカバンド始動!

 その頃2月に泊まりがけでバンド合宿をする予定があり、そこでメタリカバンドお披露目となったのだが、そのドラマー、その合宿に参加できないと言いだした。仕方がないので、急遽腕の落ちる、しかも少し変わり者の後輩Wに代役を依頼。

 正直なところ、その後輩Wはあまり上手ではなかったので彼には悪いが内心僕らは不本意だった。しかしWは僕らとバンドができることを異様に喜び、僕らが合宿で酒飲んでゴロゴロしている時もずうーっと曲をひとり聴いてシャドウドラムをこなしていた。

 

 ドラムの力量に難はあったものの、2年越しの念願のメタリカバンド。さて曲はなにをやったか。バッテリー?マスターオブパペッツ?いやいや、リーダーたる僕が最初に選んだ曲はこれです。

 


Metallica - The Call of Ktulu (HD)

 

 当時、いや今でもかなりの僕のお気に入り曲。アメリカの伝説的怪奇小説作家H.P.ラヴクラフトの有名な小説「コールオブゥクトゥルー」を冠した曲だ。ちょうど僕はこの当時ラヴクラフトにはまっており、それもあって選んだのだ。

 速いわけでもなく、ましてやインスト。それやる?しかし我ながらいいチョイスだ。

 実際バンドでやってみたら楽しくて仕方がなかった。後半のエイトビートに入るところなど全員で激しくヘドバンしたものだ。

 そしてもう一曲はこれ。


【日本語訳】 メタリカ Metallica - Whiplash

誰が字幕付けたのか、面白いね。

 僕らが初めてこれを練習したとき、最初のドッタンドッタンドッタンドッタンというドラムのスネアとフロアタムを同時に叩くパートで後輩Wは両腕を機械的に上下させて叩いていた。それがまるで鳥が羽ばたくように見えて爆笑。「お前トリか!」と笑ったものだ。

 練習が終わったあと、W以外のメンバーと話した時に、「Wってさあ、練習中に飛んで行きそうだよね」とかそのまま飛んでっちゃって「助けてください!とか言いそうだよね」などとさんざん鳥ドラムギャグで笑っていた。

 あの頃がとてつもなく懐かしい。

 

いつものこちらもよろしく

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カクヨムにおける『ヘビーメタルと文芸少女』のいま

 自分の作品を多くの不特定多数の人間に見てもらえるという点では、今はいい時代だ。うまくすれば何万分の1くらいの確率でそれが日の目をみる。

 

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 僕は小2の娘にメタリカを聴かせた経験が元になってこの物語を思いついた。それまで小説など書いたことがなかったが、今までの読書体験の蓄積があり、言葉に携わる仕事をしているのでひょっとしたら書けるんじゃないか?と思い、ワードを立ち上げ、物語を紡いでいった。最初の数行は若干の羞恥も感じたが、書いていくうちにそれは失せ、ほぼ自動的に指が動くようになっていった。

 小説の作法もいろいろあるだろうが、僕の場合は全体のストーリーがおぼろげに浮かんだのだった。魚の骨を思い浮かべてもらうといいかもしれない。頭と尻尾は決まっているのだ。そうして、徐々に肉=エピソードがついていく。一番発想が冴えるのは入浴している時だ。特に、風呂を上がり、体を拭いているときにふっとアイディアが湧くのだ。

 毎日少しずつ、会社から帰っては書き、休み時間に書き、子供を寝かしつけたあとに書き、正月妻の実家へ行った時もパソコンを持って一人夜中に書き、半年間かけてようやく完成にこぎつけた。その量、18万9846文字。

 執筆中は妙な高揚感に僕は包まれていた。あれこれとアイディアが浮かび、仕事中に結末を思いついては一人で密かに感動し、最後の一行を書き終えては一人で感無量になっていた。しかし、このことは誰にも知らせなかった。やっぱり小説を書いているって言い出しにくいよね。しかもいい年して。

 もちろん、せっかく書いたのだから何かしらの賞に応募しようとは思っていたのだ。しかし!ここで問題が。調べていくうちに、この作品はことごとく容量オーバーで応募できないのだ。ようやく条件に叶う賞がポプラ社の新人賞だった。それでも原稿用紙500枚分が条件だったので僕は泣く泣くエピソードを削り、ギリギリ500枚ぴったりに作品を縮めた。誰にも内緒で原稿を郵便局からわざわざ書留で発送した。

 

 もちろん今これを書いているということは、結果が出せなかったということだ。正直に言えば一次選考くらいは通るんじゃないか、などと少しは思っていた。あまつさえ、ひょっとしたらまかり間違って大賞で200万円!旅行行くぞ!とか、もし本が出たら会社になんて報告しようか、とか、映画化されたらマヤ役は小松菜々子がいいなだとか、いらぬ心配をしていたものだ。まったくもっておめでたき人である。

 

 11月の末にドキドキしながらウェブで一次選考の結果を確認したが、「ヘビーメタルと文芸少女」の文字はどこにもなかった。5分くらい落ち込んだ。

 一番の原因は力不足なのだろう。それに尽きる。あとは題材がなんといってもニッチすぎるのか。いきなり「ヘビーメタル」だもんな。メタリカは世界的バンドであるとはいえ、それを題材とした小説を出版、なんて考える編集者はいないだろう。きっと下読みの時点で外されていたかもしれない。

 だが選考者にとってはワンナオブゼムであっても僕にとってはオンリーワンである!このままで終わらせたら、何のために書いていたのかわからない。僕はすぐに小説投稿サイトを探し始めた。一番有名な「小説家になろう」も考えたのだが、ライトノベルが主な作品群のこのサイトに、僕の小説には不向きだろうと考え、比較的新しく、分野も色々と別れて投稿もしやすそうだった「カクヨム」を選んだ。

 と同時にこのブログも立ち上げた。いつか小説の読者をこっちに導いて、ブログの読者も小説を読んでもらって・・・と思ったのだ。で、今に至っている。 

 

 この小説で僕は目指したもののひとつは、メタルバンドのライヴをなんとか言葉で表現できないかということだった。僕だって歴30年近いバンドマンの端くれである。

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 僕です。ベースの方ね。僕はいつもこんなふうにライヴではしゃいでいたのだ。

 あの高揚感を表現したい。そう思って書いた。以下は小説の中盤、コンテストの予選ライヴシーンの抜粋である。少し長いかもしれない。でもこんな感じで僕は言葉を組み合わせた。演奏曲は「マスター・オブ・パペッツ」!

 

          

          「ヘビーメタルと文芸少女」より抜粋

 

 ダン!ダッダッダー!

 何百回と合わせたマスターのリフをデスピノは観客に向かって炸裂させた。凄まじい音圧にライヴハウスは飲み込まれた。そしてそのままマヤはザクザクといつも以上にエッジの効いたダウンピッキングでメインのリフを刻む。ユリカ、ソメノ、キイチはそこに叩きつけるがごとく音を重ねる。

 バンドは爆音の塊を、エイトビートに乗せ踏み鳴らし始めた。そしてフロントの3人は完全にシンクロしたヘッドバンギングを展開した。狭いステージ上で長髪の女子高生3人が脇目もふらずに頭を振る姿は、見る者全員に強烈なインパクトを与えた。

 ユリカはただギターを弾くことに、バンドで演奏する喜びに陶酔していた。ふと目の前を見れば、沢山の人間が自分たちの演奏に感動している。男子も女子も、狂ったようにサイリウムを振ったり、拳を振り上げたり、ヘッドバンギングをしたりしている。ヘビーメタルが若い彼らのエネルギーを増幅し、新たなうねりを生じさせる。まるで荒れ狂う嵐の中で演奏しているようだ。そしてその嵐の中心に自分たちがいた。

 激しい前半のパートが終了し、曲は格調高いツインリードのハーモニーへと流れ込んだ。ユリカは一音一音丁寧にメロディーを描き出した。その旋律はマヤの奏でるそれと一体化し、このうえなく美しい響きを作り出す。同時に観客もそのメロディを歌い始める。気がつけばユリカは涙をひと筋流していた。この瞬間、彼女はバンドとひとつになり、そのバンドは観客と一体化していた。この空間にいる全員が素晴らしい体験を共有している。それがユリカにはかけがえのないことだと思え、涙が落ちたのである。

 マヤとユリカのツインリードが終わると、曲は荘厳なEコードによる、八分音符のズンズンズンズンという橋渡しを経て劇的に後半へと入る。ユリカの担当するソロパートへとつながる重低音のリフと、キイチのバスドラとフロアタムがまるで地響きのようにホールを揺さぶる。

 マスター!マスター!

 全員がそのリフに合わせて合唱する。

「みんなもっと叫べー!」

 マヤがよりいっそう激しく頭を振り、観客もそれに応えてより激しく叫ぶ。

「マスター!マスター!ラフィンアットマイクラーイ!」

 この歌詞を合図に、いよいよユリカのソロだ。

「ギターソロ!ユリカ!」

 マヤの号令と同時にユリカは渾身の力を込めてソロをスタートさせた。何年も弾き続けてきたこのカークハメットの個性的なソロワークを、ユリカは目をつぶってでもプレイできた。指が自動的に動き、猛禽の吠えるようなピッキングハーモニクスでメリハリをつける。旋律とともに体が勝手に動く。姿勢を低くして高音をかき鳴らす。そして観客に向かって自分のテクニックを見せつけるようにステージ前ギリギリまでおもむき、トレモロを開始した。ユリカの前にいる全員が両手を伸ばす。ギターの音が渦を巻き、その渦に飲み込まれて、まるで底なしの淵にぐるぐると沈み込んでいくような感覚が彼女を包み込み、その深みと轟音の中で指を動かし続けた。

 全員がまるでギターで雄叫びをあげているようなユリカのソロに引き込まれていた。うわあああっといううめき声とも叫び声ともつかない声が観客の中から湧き上がっている。そしてそれがユリカに新たなエネルギーを与える。最後のチョーキングに至ったところで、そのあまりの激しさに1弦がぶちっと切れた。ユリカは一瞬狼狽したがソロはここで終わりであり、1弦はもう使わない。あとは低音弦のリフのみである。ユリカはチューニングの狂いを気にしつつそのまま弾き続け、怒涛の勢いで曲は終わりを迎えた。

 

 

 

 抜粋終わり・・・・どうでしょう、音がきこえてきたかしら?この曲を知らない人に届いたのだろうか。とにかく僕は何度もマスターオブパペッツのライヴを観て、聴いてこの場面を書き上げた。

 

 投稿するにあたってぼくは「カクヨム」がいかなるサイトかをリサーチしてみた。色々な評判が書いてあったが、だんだん面倒くさくなってとにかく投稿してみよう、と決意した。最初は少し勇気が必要だった。いったい読んでくれる人がいるのだろうか、という不安とともに、自分の作品を公にするのであるから。

 

 11月26日に初投稿。もちろん読者ゼロである。数万点の作品の中に埋もれているユリカたち。僕は毎日投稿し続けた。なにせ18万字である。ネタには事欠かない。

 すると数日後、女性の読者がついた。よくも見つけてくれたものだ。コメントもしてくれて、ああ、書いてよかったなと思った。嬉しかった。継続は力なり。そのうちに好意的なコメントを寄せてくれる人が現れ、じわじわとフォロワーも増えて現在17名。さらにはこのブログと、メタリカ系の掲示板に厚かましくもリンクを貼った結果、星の数20。累計PV878。今ここである。投稿は、まだ続けます。

 読者がいるというのは本当にありがたい。カクヨム中の作品としてはそんなに多くないかもしれないが、こんなニッチな作品を読んでくれる人がいるというのは純粋に喜びである。感謝します。

 そして僕はこの喜びを励みに毎日がんばって生きている。

 

アマゾン1円CDハンターがゆく 9 ロイクソップ メロディーAMスペシャルエディション  あと、ずうっと聴いていたいと思う曲のこと

アマゾン1円CDハンター基本ルール

1 基本的に1円のモノを買う。

2 できれば聴いたことのないアーティストを選ぶ。

3 やみくもには買わずに星4つ以上で、軽く試聴をする。

4 ジャンルはなるべく不問。

5 3日に一枚くらいのペース、月に最低10枚は買う。

 

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ロイクソップノルウェーのエレクトロデュオ。

アルバムを一枚持っていたが、そんなに聴かないで何処かへしまいこんである。

エレクトロのジャンルを見ていたらこちらのアルバムが1円だったので久しぶりに彼らを聴いてみるかと購入。


Royksopp - Poor Leno

 

なんかどこかでこれ聴いたぞ!かなりヒットしたらしいね。途中の雪山のイメージシーン、惑星ホスをスノースピーダーで飛んでいるかと思った。

 


Röyksopp - Eple HD (Offical Video)

これもなんか聴いたことある。ピポピポ、ピポピポ・・・

不思議な雰囲気の曲。どちらも耳あたりが良く、それでいて独特の魅力があるよね。このCDは再発盤でなんともう一枚おまけCDがついてお得感満載。1円でこれが変える世の中!おまけCDはリミックスが中心なのだが、ファットボーイスリムとかロニサイズなども参加して結構豪華。

 内容は文句ないんだけど、これ、紙のカバーがついているんだよ。たまにこういうCDあるんだけど、そのカバーの扱いって結構困るんだよね。車で聴くとき、いちいち取り出すのが面倒。USBとかに入れればいいんだろうけど、それもなんか違うんだよな・・・やっぱり慣れ親しんだCDの形式が一番いい。

 さらに言えばダビングしたCDーRよりも、音質は同じとはいえ買ったCDの方にはるかに僕は愛着を覚える。オリジナルCD固有の存在感を感じる。ありがたみが違うというか、とにかく不思議な心理だ。

  1円で買って損はない!

 

 あと、ロイクソップに関してはそんなに書く事もないので別の話題を。

 いつまでも聴いていたい、という曲はないかい? 僕にはそういう曲が何曲かあるのでご紹介。基本的にワンフレーズの繰り返しなのにいつまでも聞いてしまうタイプのやつです。まずはこれ。


Plug - Cut ('97 Remix)

なんというか中毒性がすごい。メジャーハリスの名曲をサンプリングしているのだが本当にいつまでも聴いていたい。

ちなみこのPLUGはルークヴァイバートという人物の変名なのだが、彼の別のアルバムのこの曲もいつまでも聴いていたい。


Luke Vibert - Stern Facials

 

次はHIRDというアーティストのゲッティング・クローサー


Hird - Getting Closer

うわー、ムチャクチャいい曲だなあ!!!

僕、この曲本当に好きだ。この曲が終わりそうなるといつも寂しい気持ちになってしまうのだ。HILDはクラブジャズアーティストなのだが、アルバム1枚出してそれ以降音沙汰なし。一体何をしているのだろうか。アルバムもアマゾンで安く買えるので買ったほうがいいっすよ。

 

Moving on

Moving on

 

 

ホントにこれは名盤。

最後は出ましたマッシヴアタック。アルバム収録曲ではなく、カマコマEPに入っていたDAYDREAMINGのリミックスがいつまでも聴いていたい。スネアのドゥルルッ!というフレージングに彼らのセンスがにじみ出ている・


Massive Attack- Blacksmith/Daydreaming

基本的に聴いていたいと思う曲はクラブ系ですね。ビートやミニマルなメロディにいつまでも身を任せられるようなタイプの曲ばかり。

 

いつものよろしくお願いします

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メタリカと僕の青春時代/スラッシュメタル黎明期

 

 僕は高校に入ってからジョン・テイラーに憧れてベースを始めた。だから最初の頃はデュラン・デュランとか弾いていたのだが、メタルを聴くようになってからはやたらとベースの早弾きにこだわり、必然的に速い曲ばかりをコピーしては「俺こんなに速く弾けるぜえ」とひとり悦に入っていたのだった。

 さて、一浪の後、大体1990年前後になるが、僕はある東京の私立大学のバンドサークルに属していた。高校生の頃にレインボーの「デスアリードライバー」によってメタルに目覚めたが、浪人の頃は専らラウドネスやアンセム、リアクションやデッドエンドといった当時かなり盛り上がっていたジャパニーズメタルを好んで聴いていた。だから実際は海外のメタルをほとんど知らずに、生活していた。畢竟ラウドネスの「エスパー」とかアンセムの「ドライヴィングワイヤー」が究極のスピードメタル、と思い込んでいた。


Loudness - Esper

とはいえ今聴いてもカッコイイ。

 しかしその頃だろうか、愛読していた音楽雑誌「ロッキンF」(ジャパメタの情報がたくさん載っていた)に「スラッシュメタル」という言葉を僕は初めて見たのだ。確か普通のメタルよりも速く、より過激なジャンル、といった説明がされていた。速い曲が好きだった僕はすぐその情報に飛びつき、そこでプッシュされていた「SKULL THRASH ZONE」という日本のスラッシュバンドのコンピ盤を入手した。

 

SKULL THRASH ZONE I

SKULL THRASH ZONE I

 

 

 知る人ぞ知るアルバム。DOOMとかジュラシックジェイドとかその筋ではそうそうたるメンツ。そしてブレイク前のXが二曲参加している。この頃彼らは、「たけしの元気が出るテレビ」で「ヘビメタ」代表として、さびれかけた商店街の食堂で無理やり演奏させられ、TOSHIが「食えー!」と叫んだり、ヨシキがヘビメタ運動会に参加したりしていた。懐かしい。あとROSEROSEというバンドが参加しているのだが、未だにDRIのTシャツを着て頑張っているのを今、ググって知って驚いた。

 当時は情報も少なく、僕はまだスラッシュメタルがどんな音楽かもよくわからなかった。だから音質が悪く、当時の一線で活躍しているバンドに比べればクオリティが落ちる内容にふうん、これがスラッシュねえ・・・リアクションの方がいいな、と思っていた。

 要するにまだまだスラッシュメタルがジャンルとして認知される前の時期だったのだ。そういう狭い見識で僕は大学に入り、スラッシュ?それよりもラウドネスでしょ、という会話をバンド友人と交わしていた。

 だがあるとき「速い曲がそんなに好きならメタリカ聴いてみれば」とバンド仲間が「マスターオブパペッツ」のカセットテープを貸してくれた。

 ・・・ロロン、ロン・・・ロン、ロロン・・・というガットギターの音に僕は最初「?」と首をかしげたがすぐに「ドーン!ドドドーン!」というオーケストラばりの超重量級のディストーションギターがかぶさる一曲目の「バッテリー」に驚いた。


Metallica - Battery (HD)

 ああ!何度聞いてもいい曲だなあ!

 僕は今までに何度この曲を聴いたのだろうか。未だに飽きが来ない。そしてこれからも死ぬまでに何度も聴くことになるだろう。

 ただ、実はこの時はあまりの音圧と、パワーに圧倒されて「いやー聴くだけで疲れてしまう」という印象だった。しかし繰り返し聴いているうちに「これはとてつもなくすごいアルバムだ!」と思うようになる。

 とにかく、まずギターの音が革新的だった。当時はこんなに分厚い音で演奏しているバンドなどなかった。しかも、ハイトーンヴォイスが主流のメタル界にあって、ジェームスの、むしろ低めの声に「ああ、メタルはこういう声でもいいんだ!」ということに気づかされたのだった。

 僕はすぐに彼らの1STと2NDを買いにレコード屋へと走った。そう、まだ当時はCDは珍しく、音源は主にレコードだったのだ。

 新宿西口の輸入盤屋で2NDの「ライドザライトニング」を探していると、なぜか通常版は売っておらず、しかたなしにピクチャーレコードを買った。今思えばこれ買っておいて良かった。

 

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そして、一曲目の「ファイトファイアウィズファイア」である。


Metallica - Fight Fire with Fire

 ああ!これもまたいい曲だなあ!

 ハタチそこそこでこんなトリッキーでパワフルな曲を作ったメタリカの才能は計り知れない。ちなみに、このころのメタリカのアルバムの始まり方はみんなこうだ。始まりは静かに、そして突然凶悪に。それを他のバンドはよく真似してたっけ。

 とにかくどっぷりメタリカにハマった僕は、ジャパメタを次第に聴かなくなり、スレイヤー、メガデスアンスラックスを始めとしたスラッシュメタルバンドを積極的に聴くようになる。それにつれてサークルのバンド活動でもメタリカをやりたくて仕方がなかったのだが、当時はまだメタリカの認知度は低く、正統派メタルが好きなサークルの人たちからは、異端視されていた。であるからして、誰も、僕とメタリカバンドをやってくれはしなかった。

 僕はサークルのバンド合宿で一人ベースをバキバキ16分音符でかき鳴らしては「あースラッシュやりてえー」とそのままあたりかまわず徘徊し、「こえーよ!」と友人に言われたものだ。僕が実際にメタリカをバンドでやれるのは二年後のことだった。

 と、ここまで書いてきましたが、そろそろ眠いので寝ます。

 

そして僕は今ここ!「ヘビーメタルと文芸少女」!

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 ところで実は今この記事を書くために昔買ったレコードをあさっていたらこんなのが出てきた。

 

HEAVY METAL FORCE III

HEAVY METAL FORCE III

 

 

当時のジャパメタのコンピ「ヘビーメタルフォース」。こちらにはカスバとかジュエルとかサーベルタイガーとかまたまたXなど、ああ、いたなあというバンドがたくさん収録されていた。他にも結構レアなジャパメタのレコード何枚かを発掘。そのうち紹介したいと思うがいったい誰が喜ぶだろうか。

あとすっかり忘れていたが「ハーベスターオブソロー」のEPとかも持っていた。

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パスヘッドというイラストレーターのジャケットが懐かしい。メタリカ好きなら知ってますよね、パスヘッド。

 

 

 

アマゾン1円CDハンターがゆく 8 ゼム・クルックド・ヴァルチャーズ あとストーナーロックについて

 

アマゾン1円CDハンター基本ルール

1 基本的に1円のモノを買う。

2 できれば聴いたことのないアーティストを選ぶ。

3 やみくもには買わずに星4つ以上で、軽く試聴をする。

4 ジャンルはなるべく不問。

5 3日に一枚くらいのペース、月に最低10枚は買う。

 

ジョンウェットンがお亡くなりになったそうで。R.I.P.

 

ゼム・クルックド・ヴァルチャーズ

ゼム・クルックド・ヴァルチャーズ

 

 さてゼムクルックドヴァルチャーズ。

このバンドは知っていたのだが、たまたま1円で売っていたので即購入。なんといってもメンバーが凄い。デイヴ・グロール(元ニルヴァーナ・フーファイターズ)がドラム、ジョンポールジョーンズ(レッドツェッペリン)がベース、クイーンズオブザストーンエイジのジョシュオムがギターヴォーカル。


Them Crooked Vultures - Reading Festival 2009 ( Full Concert)

 ジョンポールジョーンズが元気すぎる。何が嬉しいって、観客のほとんどがティーンで、彼らが熱狂的にバンドを支持している様子が映っていることだ。ブリング・ミー・ザ・ホライズンだけが人気があるわけじゃないのだな。(もちろん僕はBMTH大好き。) 

 ただ、今の若いロックを聴く人が、ツェッペリンを知っているかどうか。そういえば昔沢尻エリカが離婚した元旦那のハイパーメディアクリエイターと一緒にツェッペリンの再結成ライヴを観たという報道があったが、本当に楽しめたのだろうか?

 

 ライヴというのは曲を知っていて、そのアーティストが好きだからこそ楽しめるものだ。僕の友人のS君が昔、クイーンズライクのライヴに偶然タダで行けることになったのだが、彼はあいにくとクイーンズライクの曲をほとんど知らなかったらしい。同行した別の後輩に聞いたところ、S君はコンサートが始まるやいなや、周りが拳をあげてノっているのにもかかわらず、両手を膝において中腰になり、辛そうにうなだれていたそうだ。そして終いには中途退席したとのことだ。一体彼は何しに行ったのだろう。

 

 話をゼムクルックトヴァルチャーズに戻すと、ギターのジョシュ・オムだ。彼だけはキャリアの割に、日本ではイマイチ知名度が低いのではないか。伝説のストーナーロックバンド「カイアス」で活動したあと、「クイーンズ・オブ・ザ・ストーンエイジ」を結成、2013年にはビルボードで1位を獲得するほどの人気バンドだ。僕の娘も結構お気に入りだ。

 


Queens Of The Stone Age - No One Knows

 独特の哀愁に満ちたいい曲。こちらのドラムもデイヴグロール。NINのトレントレズナーも客演しており、まさにミュージシャンズ・オブ・ミュージシャン。

 

 話はそれるが、ストーナーロック、かっこいいです。じゃあ、そもそもストーナーロックとはなんぞや。僕の中では、ギターが「ズワー」というファズがかった、激しい歪んだギター音がメインで、荒削りでどこか泥臭い感じのする、それでいて親しみやすいロックだと思っている。くくりが雑でごめんなさい。昔から僕はそれとは知らずに、この流れを汲むバンドをいくつか聴いていた。

 まずはカテドラル。世界一短い曲「YOU,SUFFER」でギネスにも認定されているグラインドコアバンド「ナパームデス」の元ヴォーカル、リードリアンが結成したバンドだ。

 ちなみにこちらが世界で一番短い?とされる曲「YOU、SUFFER」。初めて聞いたときは爆笑した。歌詞は「YOU SUFFER BUT WHY」とムチャクチャ早口。


Napalm Death - You Suffer

 ああ、いい曲だなあ!

 他にも初期Napalm Deathには「デーッド!」と叫ぶだけの曲などもあります。このアルバム、もうかれこれ30年くらい前のでしょ。55曲入で30分弱とか、当時のグラインドコアと呼ばれたこのあたりのバンドたちをよく僕は聴いていた。その中でも特にすごかったのはAxCxというバンドの5643曲入りEPという、聴くのもバカらしくなるアルバムだった。そんなんばっか聴いていた時期も僕にはあったなあ。

 

 スグ話が横道に逸れてしまうから記事が長くなる。そして寝る時間が遅くなる。グラインドコアデスメタルについてはまた別の機会にしよう。

 カテドラルに話を戻したい。かの世界最速のバンドから一転、脱退したリー・ドリアンが結成したカテドラルは、ブラックサバスを思い起こさせるスローでダークかつおどろおどろカッコイイサウンドだった。


Cathedral - Ride

 ずんずずんずずんずずんずずうーう・・・・

 この曲のインパクトは凄かった。あんまりすごくて僕はドラムを始めてしまったくらいだ。歌詞の世界観も良かった。「クリスタルウォリアー!」とか叫んでる。オウイエー!まあ、最近までこのバンドが(異論はあるだろうけど)ストーナーにカテゴライズされているとは知らなかったんだけど。

 僕の中でのストーナーロックバンドといえばこちらのKYLESAだ。そもそもなんて発音するのかが未だにわからないバンドだが、ダブルドラム、おねえちゃんのギターヴォーカルとこちらもなかなかすごい。これも一時期ハマって数枚アルバムを購入した。

 


Kylesa - "Tired Climb" Season of Mist

 

 あと、最近気に入っているのはレッド・ファング。気のいいアンちゃんたちのバンドなのだが、どのPVでも例外なく彼らはビールを飲んでいる。そして必ずスプラッタ描写が出てくる。まあ、モンティ・パイソンレベルのギャグみたいなもんなのだが、それでも耐性がない人は気持ち悪いかも。この曲はビール・ゾンビなる奴らが出てきて人を殺してビールを飲みまくってます。曲はものすごく勢いがあってキャッチー。CUT IT OFF!

 


RED FANG - "Blood Like Cream" (Official Music Video)

 

 あとはHIGH ON FIREあたりだろうか。プロモが面白すぎィ!勢いがスゲエ。


High On Fire - The Black Plot

こういうメタルバンドのアニメPVって結構あるのでいつかそれを集めて紹介したいですね。

         

       一円で買って損はない!あとこちらもよろしくお願いします。

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作家志望の小3の娘と、あのころの小3の僕と「ヘビーメタルと文芸少女」

ヘビーメタルと文芸少女」よろしく!

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再び娘の作品について。昨日のたからじま

otominarukami.hatenablog.com

のあとに、更に3作品ほど書き上げている。

「ウォーターマウンテンの世界」という作品がひとつ。川で泳いでいたエウロパとイオという少年が、水の底にある世界を旅するというもの。未完。

 

次に「かっぱ先生漂流記」という作品。娘の担任の先生はカッパを自称している。子供たちは面白がって、「先生!かっぱはどんな暮らししてるの?」とか「かっぱ何食べてるの?」などと毎日話しているらしい。そんな日々からかっぱ先生(名前はイケッパ、イケメンのかっぱの意)の冒険譚を考え出した。以下、その抜粋。最新作なのでかなり整合性がある。

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ネーミングのセンスがいい。いろいろ思いつくんだそうで。

 

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挿絵も自分で描く。

 

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島の地図を描くのが好き。「ここがこうなんだよ」と色々と説明してくれる。ちなみに娘はマインクラフトを毎日やっているので空間構成は得意のようだ。

 

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最新の原稿。字もだいぶ綺麗に書けている。提案を「定安」と書いているのは致し方ないか。「なまりのさんだん」がジャガーの頭に見つかったんだって。こわ。

 

この他にもう一作、「チェロ」というインコを主人公にした作品が進行中。インコの主観ではなく、なるべく客観的な描写をしたいようで、動物が話したりはしない。例の斎藤洋氏の「偉大なる王」がそういう手法をとっているので、それに倣っているらしい。これも後で勝手にアップします。

 

さて、翻って小3の僕だ。昨日の漢字練習帳に引き続き、ヘチマの観察日記をご覧に入れたい。

 

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「きょうヘチマの、たねを、もらった」

句読点の使い方がド下手。しかも挿絵がロケット・うちゅうとなっていて、ヘチマとの関係性ゼロ。でもこの頃から宇宙に興味はあったようだ。

 

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字がちょっと切れているが、「ざっそうがたくさんはえていた」とある。これ多分観察5日目くらいだろう。一向にヘチマの芽は出ないようだ。

 

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「まだまだ、かわっていない」

指が明らかに変な方向へ曲がっている。宇宙人の手か。相変わらず芽が出ない。

 

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「めがでない」のでいい加減絵がおざなりである。さらにしばらくめの出ない日々が続く。もう、いっそのこと雑草を育てれば!僕よ!

 

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どういう風の吹き回しか、色をつけ始めた僕。

 

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「どろどろだった」

何があった!水やりすぎか?

 

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「まだまだどろどろだった」

それじゃもう芽は出ないだろう。どろどろなら!

 

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なんでだ。乾かないのか。

 

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「めだとおもったらざっそうだった」

タイムトリップして自分を慰めてやりたい。

結局このあと、芽が出ることはなかった。

やっぱり小3の僕はどこか間が抜けていたようだ。男の子と女の子ではこうも違うものか?僕が小学3年生の時にメタリカを聴いていたら、人生変わっただろうか。

作家志望の小3の娘と、あのころの小3の僕と今の僕 1

僕の小3の娘は、作家になりたいと言っている。

なれる確率としては百万分の1くらいだろうが、そんなことは気にせずに彼女はコンスタントに作品を書き続けている。

そもそも何でそんな夢を持ったかというと、まずはこちらをご覧下さい。

 

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お、鳥だ。インコだな。

と思ったでしょう。その通りです。

娘が小2のときに突然インコを飼いたいと言い出したので、僕はその条件として本を百冊読んだらいいよ、と提示した。すると彼女は半年かけて一生懸命百冊読んだので、2人で近所のホームセンターの動物売り場に行き、2400円でインコを購入した。その鳥は、写真の手前にいる子で、名前は「チュン」。

 ちなみにこのチュンを買ったときは、いきなり鳥の入った「生体」と書かれた箱を渡されると、それをそのままレジに持っていかされた。僕は「鳥ってこんなふうに買うのか?」と思いつつ帰宅したのだった。

 

 このチュンは手乗りでもなんでもないただのインコだったので、それこそ、ただいるだけのトリである。だから最初のウチは娘も「ちゅーん!」とか言って話しかけていたが、あまりトリの反応が芳しくないからか、「パパ、手乗りが欲しいよ」と言い出し始めた。そもそも飼うのはいいが、掃除するのは僕ですよ!毎日!

 そこで再び百冊本を読んだら、という条件を出すと、これも娘は頑張ってクリアした。約束通り今度は別のペットショップに行ってインコをもう一羽購入した。名前は「ピン」である。このピンも最初の内は慣れて手に乗ったりしていたのだが、チュンと毎日過ごしていたら人にあんまりなつかなくなって(インコはそういう性質がある)、現在は手に乗ってくれない。 

 しまいには、娘、もう一羽ヒナから飼いたいとか言い出したのでそれはさすがに却下した。生き物はそんなに簡単ではない。病気にもなる。チュンはこの一年で三度も疥癬という鳥の病気にかかり(ダニがついて毛を抜きまくる)、僕が病院に何度も連れて行った。毎日鳥かごの中を逃げ回るチュンを捕まえて薬を与えなけらばならない。とても面倒だ。トータルでかかったお金は1万円を超える。買った値段より高いし!

そして、相変わらず僕が毎日小鳥の世話役をしている。雨の日も、風の日も。

 

 まあ、でも、それはそれでいいのです。

 このように僕は子供には小さいうちから、あの手この手で本を読ませることを心がけてきた。僕もそうやって育ってきたから。妻も妻で彼女なりの方針で本をよく読ませている。その結果、娘は今ではかなりの量を読みこなしている。

 娘のお気に入りはスティーブンスンの「宝島」やヴェルヌの「十五少年漂流記」、「神秘島物語」だ。冒険小説が一番好きなジャンルなのだ。また「シャーロック・ホームズ」にも一時期はまり、娘は僕と昔BBCで製作されたジェレミーブロック主演のドラマを何本も観た。「まだらの紐」や「踊る人形」が面白かったとのことだ。最近だとトールキンの「ホビットの冒険」を読んでいる。

 

 小学校低学年にしては本を読んでいる方だろう。その結果、彼女の創作意欲が刺激され、2年生の後半から物語を書くようになった。最初の作品は、「たからじま」というものだ。

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世界観が確立されている。この頃娘はやたらと冒険小説を読んでいたからか、自分でも同じようなものを書きたくなったらしい。それで、その気持ちが勢い余って、出来上がった作品はとんでもない熱量を放っている。

 

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字でノートがパンパン。キャラの名前とかボートの名前は自分で全部考えた。処女作なのでまだ文体がぎこちない。やたらと持ち物を列挙している。

ちなみに、これは(上)で、(下)は別のノートに続く。それがこれ。

 

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この頃にはだいぶ書くのにも慣れ、文体も洗練されている。ストーリーはたからじまに漂流したアティカスとロン・リーという男の子と女の子が、ジャックという大人と力を合わせて海賊たちをやっつけるというもの。しかし、この頃娘の読んでいた本は『ルドルフとイッパイアッテナ』が最近映画化された斎藤洋氏の「偉大なる王」という虎が主人公の本だったからか(生きるための残酷な戦いが繰り広げられる)、その影響を受けてかなりバイオレントな描写に満ちている。

 ↓クライマックスのあたりを抜粋。海賊の親分リベルダのオオカミとジャックの犬ファンとの対決場面。

 

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「するどい歯がオオカミの首すじにくいこむ」など、小3の娘の描写か?しかし次のページはもっとすごかった。

 

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 リベルダ死亡。

 「頭がいこつがくだける音がした」って・・・。

娘にこれすごいね、と言ったら、だって『偉大なる王』にそういうのがあったから、とのこと。読む本で人間っていろいろ変わるね。彼女にはまだ他の作品もあるので、また次の機会にご紹介します。

 

 それで、なんだ、また娘自慢か、と思うでしょ。まあそうなんですけど、それだけじゃないのです。僕は最近実家で、僕自身が3年生の時のノートを発掘したのだ。僕がちょうど今の娘と同い年に書いたものだ。さあ、比較してみよう。

 

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 昭和感満載のこのノート。もう何処にも売ってないよ!ちなみにこれは漢字練習帳です。当時の担任の先生のやり方として、まず漢字を練習したあとに、その漢字を使った文を作りなさいという方法をとっていたらしい。それで、その時僕が書いた文がいちいち間が抜けているのでご紹介しよう。

 

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 いきなり失礼である。「ゴリラに似ているね」って。さて次。

 

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 真面目なのかふざけているのかよくわからない。ぼくの横に横田くん。

 

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 とんでもないことを書いているが、実は僕が幼稚園の時、実際に隣の家が火事になったのだ。あの光景は今でも忘れることができない。

 

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頭が悪すぎ。肉に対する執着がすごい。あと、河口湖に行った回数が定かではないほど記憶力がないのか。

 

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これはどういうことかというと、当時父親がパイナップルをまるごと買ってきて、美味しくいただいたあと、僕はパイナップルのヘッドの部分を植えればまた生えてくるだろうと思い、そのまま庭に埋めたのだ。そんなわけないでしょ。親も気づいて教えてやれ。「植」という字も使ってないし。

 

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僕は当時、夜になるとラジオを聞いていた。「欽ドン」とかだったかも。それにしても文か放そうを見ることはできない。

 

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おいおい、今ならツイッターで拡散してるよ!

 

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改めて僕の娘と比べると、レベルが低い。でも、安心しろ、当時の僕。君は浪人して死ぬほどガリ勉をする羽目になるのだ。

 

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そりゃそうだろう。今でもそう思う。

 

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なんだか悲しい。きちんとオチがついている。

 

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もちろん今でもムリだ。

 

当時の僕はバカであった。

 

さて今の僕のこと。娘が小説を書き始めるのを見ていて思ったのは、「血は争えない」ということだ。実は僕も小説をものしているのだ。もちろん、シロウト作家である。本を出せるわけもない。

 僕は小説を昔から書き続けているわけではない。書くようになったのはごく最近だ。一年半ほど前、ある着想が突然僕に生まれた。

 

でも書いたのだが、娘にメタリカの「バッテリー」を聴かせたことがきっかけとなっている。そこからヘビーメタルと文学好きの少女というアイディアが生まれ、コツコツと半年かけて完成させた。以下のサイトでその小説を読むことができます。

 

kakuyomu.jp

書きも書いたり、18万字。我ながらよく完成させたと思う。現時点ではまだ連載中です。お願いですから読んで!「いいね!」ボタン押して!

 

 この「ヘビーメタルと文芸少女」、実はある賞に投稿したが、当然箸にも某にもかからず、終了。だが、僕はこの小説、キャラクターたちをパソコンの中で眠らせておくにはどうにも忍びなくなり、「カクヨム」という角川の小説投稿サイトへ載せた。わずかだが読んでくれる人もいて、僕にささやかな元気を与えてくれる。

 

 今までたくさんの本を読んできて、様々な経験を経て、それが僕の中で熟成され、この作品として結実した。不思議なことだが、書く手が止まったことはほとんどなかった。それどころか書いているうちに自分でも思いもよらない方向へ行くことがあって、「これが小説を書く醍醐味なのか」と勝手に作家気分に浸ったものだ。

 

 娘もきっと同じように書いているのだろう。彼女には「モノを書くその時」がわずか9歳でやってきた。しかし僕にはそれが娘よりも30年遅れてやってきた。