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メタリカと僕の青春時代/スラッシュメタル黎明期

 

 僕は高校に入ってからジョン・テイラーに憧れてベースを始めた。だから最初の頃はデュラン・デュランとか弾いていたのだが、メタルを聴くようになってからはやたらとベースの早弾きにこだわり、必然的に速い曲ばかりをコピーしては「俺こんなに速く弾けるぜえ」とひとり悦に入っていたのだった。

 さて、一浪の後、大体1990年前後になるが、僕はある東京の私立大学のバンドサークルに属していた。高校生の頃にレインボーの「デスアリードライバー」によってメタルに目覚めたが、浪人の頃は専らラウドネスやアンセム、リアクションやデッドエンドといった当時かなり盛り上がっていたジャパニーズメタルを好んで聴いていた。だから実際は海外のメタルをほとんど知らずに、生活していた。畢竟ラウドネスの「エスパー」とかアンセムの「ドライヴィングワイヤー」が究極のスピードメタル、と思い込んでいた。


Loudness - Esper

とはいえ今聴いてもカッコイイ。

 しかしその頃だろうか、愛読していた音楽雑誌「ロッキンF」(ジャパメタの情報がたくさん載っていた)に「スラッシュメタル」という言葉を僕は初めて見たのだ。確か普通のメタルよりも速く、より過激なジャンル、といった説明がされていた。速い曲が好きだった僕はすぐその情報に飛びつき、そこでプッシュされていた「SKULL THRASH ZONE」という日本のスラッシュバンドのコンピ盤を入手した。

 

SKULL THRASH ZONE I

SKULL THRASH ZONE I

 

 

 知る人ぞ知るアルバム。DOOMとかジュラシックジェイドとかその筋ではそうそうたるメンツ。そしてブレイク前のXが二曲参加している。この頃彼らは、「たけしの元気が出るテレビ」で「ヘビメタ」代表として、さびれかけた商店街の食堂で無理やり演奏させられ、TOSHIが「食えー!」と叫んだり、ヨシキがヘビメタ運動会に参加したりしていた。懐かしい。あとROSEROSEというバンドが参加しているのだが、未だにDRIのTシャツを着て頑張っているのを今、ググって知って驚いた。

 当時は情報も少なく、僕はまだスラッシュメタルがどんな音楽かもよくわからなかった。だから音質が悪く、当時の一線で活躍しているバンドに比べればクオリティが落ちる内容にふうん、これがスラッシュねえ・・・リアクションの方がいいな、と思っていた。

 要するにまだまだスラッシュメタルがジャンルとして認知される前の時期だったのだ。そういう狭い見識で僕は大学に入り、スラッシュ?それよりもラウドネスでしょ、という会話をバンド友人と交わしていた。

 だがあるとき「速い曲がそんなに好きならメタリカ聴いてみれば」とバンド仲間が「マスターオブパペッツ」のカセットテープを貸してくれた。

 ・・・ロロン、ロン・・・ロン、ロロン・・・というガットギターの音に僕は最初「?」と首をかしげたがすぐに「ドーン!ドドドーン!」というオーケストラばりの超重量級のディストーションギターがかぶさる一曲目の「バッテリー」に驚いた。


Metallica - Battery (HD)

 ああ!何度聞いてもいい曲だなあ!

 僕は今までに何度この曲を聴いたのだろうか。未だに飽きが来ない。そしてこれからも死ぬまでに何度も聴くことになるだろう。

 ただ、実はこの時はあまりの音圧と、パワーに圧倒されて「いやー聴くだけで疲れてしまう」という印象だった。しかし繰り返し聴いているうちに「これはとてつもなくすごいアルバムだ!」と思うようになる。

 とにかく、まずギターの音が革新的だった。当時はこんなに分厚い音で演奏しているバンドなどなかった。しかも、ハイトーンヴォイスが主流のメタル界にあって、ジェームスの、むしろ低めの声に「ああ、メタルはこういう声でもいいんだ!」ということに気づかされたのだった。

 僕はすぐに彼らの1STと2NDを買いにレコード屋へと走った。そう、まだ当時はCDは珍しく、音源は主にレコードだったのだ。

 新宿西口の輸入盤屋で2NDの「ライドザライトニング」を探していると、なぜか通常版は売っておらず、しかたなしにピクチャーレコードを買った。今思えばこれ買っておいて良かった。

 

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そして、一曲目の「ファイトファイアウィズファイア」である。


Metallica - Fight Fire with Fire

 ああ!これもまたいい曲だなあ!

 ハタチそこそこでこんなトリッキーでパワフルな曲を作ったメタリカの才能は計り知れない。ちなみに、このころのメタリカのアルバムの始まり方はみんなこうだ。始まりは静かに、そして突然凶悪に。それを他のバンドはよく真似してたっけ。

 とにかくどっぷりメタリカにハマった僕は、ジャパメタを次第に聴かなくなり、スレイヤー、メガデスアンスラックスを始めとしたスラッシュメタルバンドを積極的に聴くようになる。それにつれてサークルのバンド活動でもメタリカをやりたくて仕方がなかったのだが、当時はまだメタリカの認知度は低く、正統派メタルが好きなサークルの人たちからは、異端視されていた。であるからして、誰も、僕とメタリカバンドをやってくれはしなかった。

 僕はサークルのバンド合宿で一人ベースをバキバキ16分音符でかき鳴らしては「あースラッシュやりてえー」とそのままあたりかまわず徘徊し、「こえーよ!」と友人に言われたものだ。僕が実際にメタリカをバンドでやれるのは二年後のことだった。

 と、ここまで書いてきましたが、そろそろ眠いので寝ます。

 

そして僕は今ここ!「ヘビーメタルと文芸少女」!

kakuyomu.jp

 

 ところで実は今この記事を書くために昔買ったレコードをあさっていたらこんなのが出てきた。

 

HEAVY METAL FORCE III

HEAVY METAL FORCE III

 

 

当時のジャパメタのコンピ「ヘビーメタルフォース」。こちらにはカスバとかジュエルとかサーベルタイガーとかまたまたXなど、ああ、いたなあというバンドがたくさん収録されていた。他にも結構レアなジャパメタのレコード何枚かを発掘。そのうち紹介したいと思うがいったい誰が喜ぶだろうか。

あとすっかり忘れていたが「ハーベスターオブソロー」のEPとかも持っていた。

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パスヘッドというイラストレーターのジャケットが懐かしい。メタリカ好きなら知ってますよね、パスヘッド。