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困難を回避するには、啄木の歌を心に

 腕くみて

 このごろ思ふ

 大いなる敵目の前に踊り出でよと

 

 これは石川啄木の短歌で、歌集『一握の砂』に収録されているものです。

 落ち込んだ時に読むとよいです

一握の砂・悲しき玩具―石川啄木歌集 (新潮文庫)

一握の砂・悲しき玩具―石川啄木歌集 (新潮文庫)

 

 

 なんで唐突にこの歌を掲げたかというと、この間我が事業所にメガトン級のクレームが来たからなのだ。

 

 あまり詳しくは書けないけれど、とにかく同僚がとあるミスをして、それを軽い気持ちで先方に謝罪したところ、相手が女性だったということもあるのか突如激昂し、罵倒の嵐。そばで聞いていても向こうの怒りが伝わるほどの大声。

「ふーざけないでー!」

 という印象的なフレーズが何回も飛び出し、よほど自制心を失っているのかとにかく大声でまくし立てている。

同僚は

「あの、えー、申し訳ありません」

を細々と繰り返すのみ。そうして埒があかなくなり、一応この事業所の長である僕に電話が回ってきた。

 さてここでも

「ふーざけないでー!」

 フレーズを中心としたお叱りの言葉が僕に襲いかかる。

正直いいとばっちりだが、責任者なので

「はい、もうすみません、おっしゃる通りです」

という、相手の言い分全肯定クレーム回避フレーズを連発。

 

 なんで50にもなっておばさんに怒られているのだ僕は。

 

 状況によっては訴えも辞さないくらいの勢いで迫ってくるので、どうしたものかと思い、とりあえず上の者と相談し、その上でどうするか対処すると伝えると、じゃ二時間後にそちらに伺いますとなった。この間、20分以上怒られっぱなし。

 

 青ざめる同僚。同僚っつっても僕より先輩で年上なんだけど。

 とりあえず状況を社長に電話で伝える。社長は半分隠居しているようなものなので、あまり知らせるのもなんだと思ったんだけど、仕方がない。

 電話に出るおじいちゃん社長、もう勘弁してくれという感じで困惑。とりあえずこちらで出来るだけのことはすると伝え業務に戻る。その間、業務全て中断。

 

 2時間後に総務部長が社長の命を受けこちらに菓子折り持ってやってくる。いやもう困ったねーなどと言いながら先方を待っていると、電話がかかってきて、とりあえず今日のところは行くのをやめて、そちらの具体的な対処を聞かせてもらうということになった。そこで(その日は土曜日だったので)週明けにまたお電話しますということになった。当事者の同僚は言わずものがなだが、責任者である僕まで暗い気持ちで家路につく。おれ、なんも、わるいことしとらんのに。

 

 しかし、僕は最近さすがにいい大人になってそれなりの経験を積んだのである程度物事を客観的に受け止めることもできるようになった。だから、いやだなあ、と思う一方で

「この件をうまく対処できれば、あとどんなクレーム来ても大丈夫でしょ」

 などとも思ったのだ。だから半分嫌ではあるけれども、一方では経験値を稼ぐことができるという目論見(?)も持っていて不思議な気持ちで過ごしました。

 

 なにか困難があれば人間は成長することができるだろう。それは僕のような年齢になったって変わらない。ということでその時僕は冒頭の

 

 腕くみて

 このごろ思ふ

 大いなる敵目の前に踊り出でよと

 

 という啄木の歌を思い浮かべたのですよ。

 週明け電話をするとまだご立腹の様子。ただ、今までの僕の顔もあるので先方は僕に対しては信頼を持ってくれており、それでなんとかつながっている感じ。同僚に対しては辛辣な言葉を並べ結局それを僕が再び20分ほど聞かされるという繰り返し。でも大丈夫、啄木の歌を心に持っているから!

 

 さて提案した対処案に難色を示されたので再び代案を考えざるを得ない僕。責任者って面倒だな!大して給料ないのにさ!反映して欲しいよね、まったく。

 

 そうして次の日すっきりしない気持ちを抱えて迎える。

 しかもこの日は結構スケジュールが立て込んでいたのです。まず午前中は長女の合同音楽発表会を見学に、文化センターへ朝の10時から出かける。嫌な気分に包まれながらも舞台に立つ娘の姿を見ると自然と笑みもこぼれ、しばしはそちらで気が紛れる。しかしその後すぐに会社で会議、そうして事業所に到着し山のような業務をこなし、4時になって先方へ電話。

 新たな案を提示したところ、さすがに向こうも怒りが収まってきたのかだいぶトーンダウンしていてなんか溜飲が下がっている様子で拍子抜け。結局元の状態に戻り、なんとか丸く収まった・・・。

 

 まあ向こうは僕がいるから、ということで許してくれたところもあるらしく、雨降って地固まるということわざをまさに地でゆく展開に。とにかく良かったですよ。

 菓子折りは結局受け取ってくれなかったので皆で食べることにしました。

 

今日みたいな回、珍しいでしょ

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アマゾンブックオフでCD/Ho9909、KTタンストール、ルーク・スレーター、フレンドリー・ファイアーズ他

 最近買ったCDを紹介する記事の定期便です。

 8枚ですかね

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まずはこちらの2枚、テイ・トーワのだいぶ昔の作品と、プロディジーの新作にゲスト出演して知名度を上げたと思われる(僕もその関係で購入)「Ho99o9(ホラー)」。

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Ho99o9は予想取りエレクトロニクス・ダブ・ハードコア・ヒップホップなどが合わさった黒人暗黒系ミクスチャーサウンド

    最初は何やら不穏な感じのトラックが流れるが突如ハードコア化!カッコイイ

   

 結構起伏に富んだ内容で、新しいロック形を感じることができるそんな中で僕は一番気に入ったのはこの曲、「FACE TATT」

              まだ小さなハコでやってますが

   

 金属的な「ツッタカタ、ツッタカタ」というリズムに合わせた曲展開が好き。僕こういう曲が好きなんですよ。新しいサウンドを求めている方、ぜひどうぞ。

 

 さて、テイ・トーワの作品は古いけれど内容はポップでキャッチー、非常に親しみやすいテクノサウンドで時にボサ・ノヴァまで飛び出すバラエティ豊かな内容。ケースの中身もシール付きで楽しい。

            テイさん、まだ若い。貼るところもないけど

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 次もテクノ・エレクトロニカ系で、ルーク・スレイターと、ファットボーイ・スリム

でどちらもミックスCD。

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 ルークはわりと活動歴眺めのテクノ・アーティストで、僕結構好き。しかもこのCDは二枚組でアマゾンで1円!やす!一枚目はダウナーかつ美しいゆったりとした内容だったが、二枚目はうって変わってアッパー系の4つ打ちサウンドがこれでもかと繰り出される。いい買い物をした。ファットボーイの方はいつもの通りのビッグビートサウンドで、どこか懐かしい感じのする曲たちをうまいことビッグビートに落とし込んでいた。こちらはブックオフで280円。

 

 こちらはロック系。左からブラック・レベル・モーターサイクルクラブ/ジミー・イート・ザ・ワールド/KTタンストール

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 ブラックレベル〜はその名前の響きがカッコよくてアマゾンのウィッシュリストに入れていたんだけどブックオフにあったので買ってみました。「ブラック」という言葉の響きから「ブラックキーズ」みたいなガレージサウンドかなと思ったらむしろストーン・ローゼズを泥臭くしたような感じだった。

    www.youtube.com

 

 ジミー〜は安定の優等生偏差値60以上ロック。どの曲もソツなく聴ける。ものすごくバンドでいい曲も多いのだけれど、キャラクターにパンチがないからかイマイチ印象が薄いんですよ。でもハズレなしのアルバムばかりという評判なのでいつか全アルバムを揃えたいと思います。

   

 

 Ktタンストールは僕恥ずかしながら知らなかったのです。ジャケットでサンダーバードのベースを構える彼女の姿でこれはいいに違いない、と判断して買い。売れてる人でした。

                代表曲ではないですが

   www.youtube.com

 さて今回8枚のなかで一番気に入ったのは「Friendly Fires」。

  ディスコ・パンクサウンドなんていうから、ちょっと前に流行った一連のそのあたりのバンド、たとえばラプチャーみたいな感じかと思っていたら、全然違った。特にこの曲が大ヒットしたらしいのだけれど、僕全然知らなかった。というか、久しぶりに聴いた、当にキラー・チューンというにふさわしい曲。

            10年もこの曲を知らなかったのか

   www.youtube.com

 知っている人からすれば、今頃?という感じだろうが、曲との出会いというのはタイミングですから。とにかく素晴らしい曲ですね。こういうの僕好き。あとアルバム何枚からあるのでそちらもいずれ揃えますよ、安いし。

 

 こういうのがあるから280円、1円CD漁りは楽しいのだ

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虫めづる姫君の話の続き

 昨日結局書いたものの、ほぼ本編に触れないまま終わってしまった古典、堤中納言物語に「収録されている虫めづる姫君の話。

 絵本が出てました 

虫めづる姫ぎみ(むしめづるひめぎみ) (日本の物語絵本)

虫めづる姫ぎみ(むしめづるひめぎみ) (日本の物語絵本)

 

 

 姫は日がな一日、「鳥毛虫(かはむし)=毛虫」ばかり愛でている。

 「カッコつけてるみたいでイヤ」ということで当時としての身だしなみの眉毛を抜くということや、お歯黒を塗るということを一切せず、耳に髪をかけて(当時としては非常に行儀が悪い)、親がなんとか人並みの姫君になって欲しいというお願いも

 「苦しからず。よろづのことどもをたづねて、すゑを見ればこそ、ことはゆゑあれ・・」

 (べつにそんなの気にしないし。あらゆることを考え極めて、その行く末を見ることこそに物事っていうのは意味があるのよ・・・)

 などと独自の理屈で説き伏せ、親をやり込めてしまう。

 

 なんとも姫は型破り。毛虫の他にも色々な虫を集めさせてその歌を大声で歌ったり

通常の深窓の姫なら絶対そんなことはしない)、家来の童(わらわ)たちには「けら男(おケラのこと)」「ひき麿ヒキガエル)」「いなご麿ショウリョウバッタ)」「雨彦(あまひこ=ヤスデ)」などという名前をつけて興じている。

 召し使われる童もヤだろうね、「ヤスデ彦」みたいな名前で呼ばれるのはさ。後半で姫が普通に

「けらを、かしこに出て見て来」

(けら男、あっちに出て見てきて)

と発言しているのを見て笑った。

 

 さてそんな中、姫の噂を聴いた物好きな貴公子「右馬佑(うまのすけ)」が

「さりとも、これにはおぢなむ」

(そうは言ってもさ、これには驚くだろう)

と、精巧に作り上げたヘビの人形を袋に入れ、「動くべきさまなどしつけて」、袋に入れて変な歌を添えて姫に贈り物として届けた。

 

 姫がその袋を開けた瞬間、蛇がにゅうと顔を出したので、お仕えしている女房たちは大騒ぎ。しかし姫は努めて平静を装い、

南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」と唱えながら、

「生前の親ならむ。な騒ぎそ」

(親の生まれ変わりでしょう。騒がないで」

と言いつつも震えて顔を背けている。

「蛇になったからといって、その姿だけで怖がるなんてだめよ」

と言ってその蛇をこわごわそばに引き寄せなさる。

 つっても実際姫、ヘビは怖いらしく立っては座り、座っては立ちその周りをウロウロし、セミっぽい変な声でお話しになるので、それを聴いた女房どもは我慢が出来ず、姫そっちのけで外に転び出て大笑いをしている。なんだこの場面。

 もしここで姫が蛇を怖がったら、普段自分が主張しているその姿で判断せずに本質を見なさいという主張が崩れてしまう。だから姫、必死。

 

 結局、右馬佑のいたずらだとわかったが、歌も添えてあるので一応返歌をせねば、ということで姫はゴワゴワの紙に漢字カタカナ混じりの歌を返す。これだけでも型破りなのにその内容といえば

 「リアラバヨキ極楽ニユキアハムマツハレニクシ虫ノスガタハ

・・・福地の園ニ

 というもの。

 (もしご縁があったら極楽で会いましょう。でもあなたの姿が蛇のような長い様子ではそばにいるのも大変です・・・幸福の園でお会いしましょう)

歌の内容からして、まともな感覚の姫ではないということがここでも伝わる。

 

 しかし逆に興味をそそられた右馬佑(モノ好き)は友人と連れ立って姫の邸宅へと出かけ、虫探しに興じている姫の姿を盗み見る。

 すると、化粧もせず、眉も抜かない姫ではあるが、結構可愛いじゃん!

 このあたりはやはり物語。こういう磨けば光る原石のような女性がさえない姿でいるというパターン、平安の昔からあるのだなあ。

 しかもこのあと

「かくまでやつしたれど」

(このようにわざとみすぼらしい格好をしているけれど)

 という記述まである。ということは姫は本当はこんな格好を本心からしているわけではないのかもしれない。

 まあこういうのをあれこれと考え研究するのは文学部の学生の使命だろうけれど僕はただの古典好きのおじさんなので気にしません。

 

 そうして右馬佑がその気になったところで唐突に

「二の巻にあるべし」

(続きは二巻で/)

となって終わってしまうんですよ!

 なにそれ。実際には、二巻なんてないのです。

 初めてこれを読んだとき僕は

「へ、これでおしまい?」

と思ったものだ。イメージだともう少し長くて姫の活躍する姿が見られるものだと思っていたのです。

 解説によると、どうやらこれは作者の挑戦で、どうぞ続きはあなたが書いてください、というものであるのではないかということだ。となれば、実際に別の人物が書いたこの物語の続きがあったのかもしれない。それはそれで読んでみたい気がするね。

 

 これもある意味そのパターンの話ですよ

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虫めづる姫君の話

 僕は浴室で読書をする習慣がある。風呂のフタをして顔と手だけ出して読むのですが、特に冬場は湯船に浸かって本を読むと思わず時間が経ってちょうどいいホヤホヤ具合になって熟睡できるので一石二鳥。去年あたりは時間が過ぎるのを期待してSFばかり読んでいたのだけれど、僕最近の傾向としては古典を読むようにしているのです。というのも僕の本棚には何冊もの函入りの本があって、それは自分で買ったり、あるツテでタダで手に入ったりと入手経路は様々なのですが結構な量なのです。僕の残された人生は、この先、健康的に何事もないと仮定して多くてあと30年あまり、すると出来ることも自ずと限られてくる。

 

 問題を抱えながらも50年それなりに生きてきてやり残したことは何か。まあ無限にあるのだけれど、自分にてっとり早く出来る範囲でのことを考えた場合、読んでいない本がたくさん本棚に詰まっているのでとりあえずそれを少しずつ処理していこうかと考えたのですよ。そこで先ほどの古典全集を読んでいこう、というプロジェクトが立ち上がったのであります。

 今までにも断片的ながらもそれなりの数を読んではいるのですが、やはり通読していないものの方が多い。ということで現在風呂では『源氏物語』、寝床に入って寝る前には『大鏡』そして、本当に何もすることのない時間には『紫式部日記』などを注釈を頼りに読んでいるのです。

 

 こんなこと書くといかにもいかにも読書自慢ですが、まあ半ばそうとはいえ寝る前の『大鏡』なんて10分もすると眠気が襲ってくるので実際は良い睡眠導入剤の代わりになっているのです。でもそれを毎日続けるうちにようやく7割くらいは読み終えていた。継続は力なりですね。

 さて、今回は今読んでいる書籍の内容ではなく、この流れで読んだ『堤中納言物語』の話ですよ。

堤中納言物語 (岩波文庫)

堤中納言物語 (岩波文庫)

 
堤中納言物語―マンガ日本の古典 (7) 中公文庫

堤中納言物語―マンガ日本の古典 (7) 中公文庫

 

 

 古典に馴染みのない方にとっては、なんだその物語レベルのマイナーな作品ですが、古典界隈だと結構ファンもいると思います(個人の感想ですが)。

 なぜかというとこの物語集は短編集ですので様々なタイプの話が収録されているのですが、その中でひときわ異彩を放つ虫めづる姫君という掌編があるからなのです。

 

 冒頭の箇所はこんな感じ

 蝶めづる姫君の住み給ふかたはらに、按察使の大納言の御むすめ、心にくくなべてならぬさまに、親たちかしづき給ふことかぎりなし。この姫君ののたまふこと、「人々の、花や蝶やとめづるこそ、はかなくあやしけれ。人はまことあり、本地たづねたるこそ、心ばへをかしけれ」

 

 蝶をお好みになる姫君がお住まいになっている、そのお隣の按察使の大納言の御むすめは、奥ゆかしく一通りでないご様子で親が大切にお育て申しておりました。

・・・いかにも固い訳になってしまった。もう少しくだけた調子にならないものかな。

 この姫君が言う、

「みんなお花とか、ちょうちょを愛でたり可愛がったりするけどね、どこか嘘くさいよね。表面しか見ていないの。やっぱり本当の心の奥底にあるモノが一番大事よ」

(的な感じです)。

 そう言って様々な虫(毛虫とかがメイン)を集めてはそれを眺めて日がな一日過ごすわけです。

 

 大丈夫だろうか、この姫。強がってないか。

 昔僕は

 「メジャーなものより、マイナーな方が絶対価値があるぜ」

 という偏った価値観から高校生の頃はキュアーとかソフトセルとか聴いていたけれど、その一方でジャーニーとかスティクスといった超メジャーな産業ロックも結構好きだった。

ところが高校の洋楽好きの友人の間ではそういうメジャーなバンドはあまり評価されていなかった。特にそのグループの中心にいるD君は聴きもしないのに僕がそういうバンドの話をすると

「そんなのダメでしょ」

と頭ごなしにすぐ否定するのだった。そうして

「やっぱロード・オブ・ニュー・チャーチだろ」

とか

「エイリアン・セックス・フィーンドでしょ」

 などと聴いたこともないバンドを自慢してくるのだ。

 僕は僕でなんとなくそれが悔しくて彼に負けじと売れる前のサイケデリック・ファーズとかダンス・ソサエティとかオルタード・イメージなんかを発掘して、マイナーイギリスバンド知ってるぜ自慢をしていた。

 

 しかし後にD君はなぜかヘビメタに目覚め、ラウドネスバンドのベースを担当していた。しかも結構上手くて、大学進学後にはジャンルを自らブルースパンクと名づけ、そのコンセプトバンドを組んで「いかすバンド天国」にも出演しすぐに消えたそうだ。風の便りにその後彼は大学を中退したということを聞いたがいまどうしているのだろう。

 

 さて、いつも通り横道に話が逸れましたが、この虫めづる姫君も、どうもそんな印象を感じるのです。つまり、人と自分は違うのだ、という部分を強調したいがために、あえてメジャーで心地よいものを拒みマイナーでマニアックなものを好む自分を愛する態度。まあ、僕にもそういう部分があるのですが、メジャーにだってたくさんいいものがあるし、あるからゆえにメジャーなのだ。

 

 何を言っているのかよくわからなくなりそうですので続きは明日ですよー

 

姫の話ほとんどなし。今日は谷の日です

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カジャ・グーグーの思い出 

 その昔、30年以上前に千葉テレビで放映していた「テレジオ7」という洋楽番組があった。男性2人に女性1人のビデオジョッキーが様々な洋楽情報を発信しており、そこで僕はたくさんのバンドを知ることができた。主にイギリスのバンドを中心に紹介しているのも嬉しくて、その頃の一番の花形はなんといってもデュラン・デュランとジャパンだった。この二つのバンドは別格として時にマニアックなバンドも紹介してくれるので、洋楽情報の少ない田舎の学生にとっては非常にありがたかった。わずか30秒しか流れないバンドなどにもインパクトがあって当時中学生だった僕は友人と共にそのあたりのバンドを漁ったりしていた。

 

 その中に例えばブルー・ズーとかパナッシュとか今となっては誰も知らないようなバンドもいて、何かの機会にふっと懐かしく思い出すことがあるのだ。

 そういうバンドについてはまた別の機会に書くとして、そのテレジオ7で強力に一時期プッシュしていたのがカジャ・グーグーだった。

 

 当時人気絶頂だったデュラン・デュランのキーボーディストのニック・ローズがプロデュースしたという触れ込みで鳴り物入りのデビュー、満を持してののPV公開でこちらの「君はTOO SHY」が流された(PVではありませんが)。

                ルックスがよくて、演奏も上手い!

    

 デュラン・デュランとはまた違うキャッチーなサウンドで一聴して耳に馴染む名曲だ。キーボードのむーんという音が鳴り響く中、ベースのスラップが入ってくるところなど、今聴いてもかなりのセンスとテクニックが感じられる。このベースのフレーズものすごくカッコよくて、ベースを始めたばかりの高校生の僕は弾きたくて仕方がなかったのだけれど、いかんせんスラップのやり方がわからず、かつその力量も無かったので仕方なくピックでU2などのわかりやすいバンドをコピーしていたっけ。今の僕なら弾けるこのフレーズ、開放弦をかませた非常にトリッキーなフレーズで、これだけでも彼らがただのアイドルバンドではないという一端を示している。

 

 僕はすぐにアルバムを買った。

君はTOO SHY

君はTOO SHY

 

 この日本盤はジャケットや曲順が違ったようで原題の「WHITE FEATHERS」とは似ても似つかない「君はTOO SHY」というそのままのタイトルで、いかにもアイドルイメージを押し出した感じのジャケットだった。

 だがこのアルバム、見た目と違いポップ&キャッチーではあったが中々の佳曲ぞろいだ。多感な時期に聴いていたということもあるのだろうけれど、今でもたまに引っ張り出して聴いてはあの頃のことを思い出すのです。

 

 まず一曲目の疾走感たっぷりの「ホワイトフェザース」からしてすばらしい。

     

 当時最新のサウンドを目指していたであろう彼らのドラムはシモンズのエレキドラムで。その音がバリバリ80S感を醸し出しているのだが、ギターのディストーションがかったフレーズや中間部のフレーズなどはロックスピリットさえ感じさせる。

 捨て曲がまったくないといってもいいこのアルバムからは何曲かがシングルカットされている。

どうやってキーボードを弾いているのかまったくもって分からない(おそらくシーケンサーを使っている?でもビデオは手弾きだ・・・)ウー・トゥー・ビー・アー。

 

    

 後半のサビで一度ブレイクした後に、すかさずベースがブーン!とフレットを下がっていくキメもカッコいい。

 また叙情的な「ハング・オン・ナウ」もピアノのソロが素晴らしく、彼らの別な魅力を感じることができた曲だ。

    

 そうしてアルバム最後に収録された「フレイヨー」にはベースのニックの会心のソロが入っており、カジャグーグーすげえな、と当時思っていた。

 

 確かその年の大晦日に、ビートたけしが国内外のヒット曲を紹介するという番組があったのだけれど、その時にこのカジャグーグーが紹介された。この変なバンド名を聴いた瞬間、殿は

「なんだその名前!ヨッチャンのザ・グッバイ(当時人気絶頂だったジャニーズアイドル、たのきんトリオ野村義男氏がトリオ解散後に結成したバンド)のほうがよっぽどましじゃねーか!」

とツッコミを入れていたっけ。まあザ・グッバイもどうかと思うけれど。

 

 しかしカジャ・グーグー、諸般の事情からヴォーカルのリマールが脱退(クビ?)になり、4人組になってしまう。一体どうなるのかなあと思っていたら、くだんのテレジオ7でやはり速報として新曲の「ビッグ・アップル」が流された。

    

 それまでのエレポップ/ニューロマンティックサウンドから、更にファンク寄りになったサウンド(サックスのフレーズがいきなり飛び出す)にびっくり。そしてヴォーカルはベースのニックになっていたことに二度びっくり。いい曲だったが、ニックのヴォーカルはイマイチ弱かった。

 

 すっかり雰囲気が変わったカジャ・グーグー、僕はこれはこれでいいじゃないか、と思っていたらしばらくしてこの「THE LIONS MOUTH」が発表された。

    

 すっかり音楽的に成長し、まるで別バンドのようなサウンド。ベースもスティックという複雑な奏法が要求されると思われるエモノにチェンジ。加えて何らかのメッセージ性を持ったプロモビデオなど新たな彼らの可能性を示唆する素晴らしい曲だった。僕はこの曲のサビの部分のバックでツッツーッツーツーと鳴り響くキーボードのアレンジが好きだった。伝わらないかなー、たまにこの手のアレンジを聴くことができる曲に出会うと無条件で気に入ってしまいます。そして二番目のサビで出てくるコーラスの

I don’t think so

というフレーズも大好きでした。

 

 いやあ、カジャ・グーグーどこへ行くのだろうかなーなんて思っていたら更に彼らはトンデモない曲をぶち込んできたのです。

            TOO SHYからは想像もつかない

   

 多分以前にもこの曲の魅力を書いたかもしれないけれど、誰もそんなこと覚えていないだろうし、読んだことのある人もほぼいないでしょうから書きますが、ふよふよ、ふよふよという不安定なキーボードのフレーズがずううっと鳴り響く中、ファルセットを絡めたトリッキーなメロディのヴォーカルが入ってくる。そして要所要所の「ぽわわーん」と入ってくるフレーズのナイスタイミング。さらにはシュルレアリスムの画家、ルネ・マグリットの絵を彷彿とさせる袋を頭にかぶった男女の抱擁が随時挿入される不思議なPV。

 いやあ、このあとカジャ・グーグーどこへ行くのだろうかなーなんて思っていたらどこへも行かず、知らない間にいなくなってた・・・。たしかバンド名を「カジャ」に変えたということは小耳に挟んだのですが。まあ、力のあるミュージシャンたちなので僕の知らないところで色々と活動しているのでしょう。再結成なども時折していたようです。

 

 一方リマールはソロになって数曲ヒットを飛ばしたっけ。

 その中で、日本ではむしろカジャ・グーグーよりも知られていると思われる「ネバー・エンディング・ストーリーのテーマ」

    

 この曲、僕が高校生くらいの時にヒットしていたけれど、同級生のちょっと面白い女の子が

「この曲さあ、最初の歌い出しがソープランドって聞こえるよね」

などと言い出して

「そおーぷらーんど」

とギャグとして歌っていたことがあったっけ。そんで久しぶりにさっきこの曲聞いたら、リマールやっぱり

「そおーぷらーんど」

って言ってて笑った。

 

80S回帰の気分

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前橋の弁財天通りで

 前橋市街探訪シリーズ、最終回です。

          おとうさん、なんで前橋なのに原宿なの?

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 都会のファッション発信地へのあこがれだろうか。地元の女子中学生の会話で

「ねえ、明日原宿で服買おうよ」

とか交わされていたかもしれない。

        こちらが前橋のメインストリートアーケードのグルーヴ

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 ちらほらと人はいるが、若い人の姿はほとんど見られない。やはり、みんなショッピングモールへと行ってしまうのだろう。時代の流れというものはシビアこの上ない。あと10年したら、ここはまたどのような姿を見せるのだろうか。

 

       そんな中、ニッチなレコード屋を発見。

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「演歌の新曲が聴ける」という触れ込みが素晴らしい。今思えば、店に入ればよかった。実はアーツ前橋関係でこういうイベントもあったのだ。

 

              「つまづく石の縁」というタイトル

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 なんでも期間中、前橋市街の空き店舗を使ってアーティストが何らかの製作をするのだそうです。そうしてこの日(11月4日)はその最終日だったので僕はそれを見ようと思っていたのですよ。きっと僕の好きなインスタレーションがあると思って。でも娘の

「明日持久走があって疲れたくないからいい」

という鶴の一声で却下。まあ、結果的には僕も街歩きだけでそこそこ疲労し、もう歩きたくない状態にはなっていたのですが。

                もうね、足腰が弱すぎる

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 演歌レコードの店の話に戻ると、件のアートイベントに合わせて街中に、前橋市街で撮影したアート写真が飾られていたのです。その写真の一枚にどうやらそのレコード店の中で撮影した写真があった(大量のカセットテープを背景に女性モデルがポーズをとっているという構図)のです。何かしら面白い発見があったかもしれないのになあ。今度もし来たとしても店があるだろうか。

 

 さて、娘の所望したスイートポテトをひっそりと営業していた和菓子屋店で購入。一個250円とそこそこの値段はするが、手作りで非常に美味しかった。

                片方はスイートアップル

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 そのお店は前橋弁財天通りという商店街にあり、その商店街もイイ味を出していた。

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        きっとこういう商店街ばかりを廻っている人いるだろうな

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         沼田元氣の写真集とかに出てきそうな雰囲気 

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 せっかくなので、弁財天へとお参りに行くことにします。

           なかなか立派なしつらえ

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 少し入ったところには水琴窟(地下水の流れの音を聴くように作られたもの)がありました。

           竹筒があって、そこに耳を当てて音を聞くのです

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 しかし実はこの弁財天の入口では年配のバンドマンが数人でジャムセッションをしており、ほとんど音聞こえず!街の活性化の一環なのだろうけれど、観客は僕だけでした。さて、娘と2人お賽銭を投げ、手を合わせてなむなむ言ったあと、自由帳を発見。娘は何やら書き込みたい様子。でもなんとなく僕に見られたくない風だったので

「おとうさんは、あっちでバンド見てくるよ」

と彼女を一人にした。

 しばらくはバンドを見ていたのだけれど、娘がなかなか来ないので

「まさか神隠しにあったのでは」

と訳の分からない不安に襲われ寺に向かうと何事もなく娘は戻ってきました。

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 僕を認め、ニコニコと笑いながらこちらに向かって歩いてくる彼女のためにも、一生懸命いろんなことを頑張ろうと思いました。

 

ほのぼの

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休日の寂しい前橋の街並みを、パフォーマンスで盛り上げろ

 前橋市街探訪シリーズ続きます。

 レトロ(シャッター)商店街としてのいい味を出している前橋市街を散策するなるかみ父娘。さてこちらの時計屋の前を通りかかると、ふと引っかかるものがある。

             創業は古いでしょうね。あれ!これは!

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             偶然にも太陽の塔のオブジェを発見

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 ひょっとしたら、アーツ前橋の展示に合わせて飾っているのかもしれないけれど、不思議な感じがした。ちなみに一軒隔てた店舗も時計屋で、きっと同じ経営なんだろうけど、なんだかすごいことになっている。

            緑の公衆電話って今時滅多にないよね

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 このショーケースに入っている時計は売りものなのだろうか。ひょっとしてらものすごいレア物が売られているかもしれない。店の反対側もなかなかです。

     実はラルフローレンのサングラス!これください、といえば売ってくれるのだろうか

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 さてこの店の通りでは、なにやら怪しげなパフォーマンスが行われていました。

             白塗りの女の人が横たわってます

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 完全に前衛舞踏の世界。果たしてこれがなんなのか、自己の常識に照らし合わせて懸命に判断しようとしている11歳の娘。

                色々な人がいるものです

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     こちらの方は着ている服を一生懸命に破っていました。なにゆえ?

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 服を破るといえば、その昔僕がプロを目指してバンドで頑張っていた頃、新宿ジャムというライブハウスに出演した時のことだ。

 確かその時の対バンが「ダイナマイト・キット・カット」という素晴らしい名前のバンドで、当時としては珍しくオルタナティヴなサウンドを奏でていたのだけれど、ヴォーカルの人が長髪でメガネだったんですよ。

 正直彼はフロントマンとしては魅力に乏しいルックスで、そのヴォーカルスタイルも歌うというよりはがなり立てるような感じだった。

 さて、本番になって彼らのライヴを観ていたらそのヴォーカルの彼は白Tシャツ一枚で歌っていたのだけれど、その最中感極まったのか、突如そのTシャツをビリビリと引き裂き始めたではないか!あまりの唐突なパフォーマンスに大爆笑。その後も彼はボロボロのTシャツで拳を振り上げ叫んでいた。その後何回か彼らと一緒になる機会があったけれど、Tシャツビリビリはやってくれなかった。もう一回見たいよなあ、あれ。

 

     一方前橋の街でもパフォーマンスが続いております。

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 実は写真のようにドラムセットが組んであって、ひたすらドラムのみの演奏の中、オレンジ色のツナギに覆面をした女性が出てきてミシンで作業を始めるというシュールな展開。どういう気持ちで見ればいいのだろうか。しばらく興味本位で眺めていると

「もう行こうよ、おとうさん」

と娘に促されたので

「何、怖くなった?」

と聞くと

「ううん、別に。それよりスイートポテトが食べたい」

娘はアバンギャルドパフォーマンスよりもお菓子の方に魅力を感じたようだ。

 

 あ、思い出した。

 その昔、僕のいた大学には「ダンサー佐々木」と名乗るパフォーマーがいて、ゲリラ的に学内でパフォーマンスを行っていた。学校の掲示板に突如彼のライブが告知されたとき、その名前の響きとアングラ性から僕らの仲間は彼らのパフォーマンスを観に行ったのだが、やっぱりドラムセットがしつらえてありその前でダンサー佐々木はただ意味不明の叫びとさしてインパクトのないダンスを披露していた。客、ほぼ僕らだけだったっけ。あれは一体なんだったのだろう。

 

夢だったのかな

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