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恐竜・怪鳥の伝説/こんなものまでプライムで!!

なんだか、すごいものを観た。

誇張ポスターは多々あれど、かなり上位に位置するビジュアル

恐竜・怪鳥の伝説
 

 この予告編を見るだけでこの映画の凄さがお分かりいただけるでしょう

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最後に出るアオリの

マグニチュード100の迫力で迫る!」

「海外配給40カ国決定!」

で吹いてしまった。本当ですか?

 

 冒頭、富士の樹海をさまよう女性が脚を滑らせて落ちた(これがまた結構な高さで落ちてるが普通死なないか?)洞窟には巨大な氷中とハリボテの大きな卵!そしてそれがパリパリと割れて黄色い不気味な目が!

 女性は逃げ出し、「大きな鳥が・・・」とうわごとのように言う。

 このニュースを空港で観た石のスペシャリスト芹沢たかし渡瀬恒彦氏)はメキシコ行きを即座に中止し、一路富士山へと向かう。会社の社長との会話シーンで着ている水玉のシャツがカッコいい!ギャルソンですか?!

 オープニング、ジープに乗って颯爽と運転するたかしのバックにかかるのは当時人気を博していたハードロックバンド「紫」の曲「遠い血の伝説」。ベースラインが超クールな70Sバリバリのカッコイイ日本語ロックと高速を疾走するジープの絵はハードボイルドムービーの始まりのような錯覚を起こさせるが、出てくるタイトルは「恐竜・怪鳥の伝説」というブッ飛んだもの。

 

 たかしの父はこの富士山麓に恐竜がいると信じていた学者で、たかしもひょっとして父は正しかったのではないかと考え、金儲けも視野に入れ、色々と調査する。そして富士五湖に来ていた水中女性カメラマンのアコと再会し、彼女のキャンピングカーの中でいい雰囲気になる。しかしその瞬間、アコが大量のウナギを車の中に発見、

「追い出してよ!追い出してよー!早くぅー!」

とパニクり、それどころではなくなる。なんだこれ!うなぎを追い出すってどういうことでしょう?それにしてもどうやってあんなにたくさんのウナギが車の中に???

 このあたりから「かなりこの映画は期待ができる!」と思いながら見ていると案の定いろいろとひどいシーンがたくさん。

 まず、早朝、霧の中犬を散歩させていたアコの助手の女の子が頭を食いちぎられた馬を発見。そして偶然、あまりにも偶然に、たかしがそこへ車で通りかかり役場に通報するがいつの間にか馬が消えている。不審に思ったたかしは夜再び現場へ行くと、なんと今度は木の上にお馬さんが!

 

 現場の足跡から、たかしはこれはひょっとして巨大な生物の仕業ではないかと考え始める。一方西湖では「龍神祭り」が開催されお祭りムード一色。

 スピルバーグの大傑作「ジョーズ」の公開が1975年。この映画の公開は1977年。だから、随所に明らかにジョーズの影響がある。というか、ジョーズがヒットしたからこの映画を作ったということらしい。人々が賑わっているところに怪物が出てくるというセオリー通りの展開。そしてそのイベントにはカントリー歌手の諸口あきら氏が本人役で出演し、演奏もしている。しかしその途中、湖面に浮かんだステージが揺れ、メンバーが水に落ちてしまう!そして村の青年が双眼鏡で「おおい!あれを見ろ!恐竜だ!」とパニックを助長。しかしそれは明らかにニセモノのヒレですぐにバレてしまう。これって、ほぼ同じシーンが「ジョーズ」でもあったんですけど・・・。臆面もなくよく撮ったな。

 しかしこの若者たちは、ハリボテの恐竜にこの後食われます。食われる直前に画面を尻尾が横切る様子はまるでシン・ゴジラを先取りしているようだ!ここで明らかになるプレシオサウルスの造形はある意味衝撃的!怪獣を模した公園の滑り台が少しマシになったみたいな造形なんですよ!

 

 このあともハリボテのプレシオサウルスは大活躍で林間学校の宿舎にのこのことその巨体を晒したり(ここでなぜかおばちゃんぽい女性の着替えシーンがある)、アコが湖に潜っている間にその助手の女の子を食いちぎったり(このシーン、極めて残虐)とやりたい放題。でも、ハリボテ感がすごい。それでも制作費はこのあと出てくる怪鳥と合わせて2千万円ほどするそうです。

 

 たかしはどうにか自分の目でプレシオサウルスを見るべく西湖に潜る。しかしその直後、西湖に機雷を投下するというアナウンスが流れる!しかも機雷をを投下するのは村役場の人たち。そんなに危ないモノを簡単に一般人が取り扱っていいの?爆弾でしょ!?しかしそんな疑問はお構いなしにバンバン湖へ機雷を投下する人々。突然の爆発の衝撃で水中で悶え苦しむたかし。アコはたかしを救出すべく湖に潜る。逃げる最中、生首を発見したりと散々な目に逢いながら、ほうほうの体で2人は洞窟らしきところに逃げ込む。しかしこの洞窟こそ怪鳥ランホリンクスの巣立ったのだ。

 

 このあたりから映画は無茶な方向へと舵を切り始め、加速度的に暴走をはじめる。

 洞窟の中にもたくさんの食い荒らされた死体。叫びまくるアコ。

 一方その洞窟から蘇った怪鳥ランホリンクスが西湖の湖畔の人々を襲う。周囲は暗闇に覆われ、不気味な光が樹海のあちこちから発している。まるでこの世の終りのようだ。こわいよ!

 怪鳥に襲われた人々は猟銃を乱射する。そしてその一発が大量の機雷に当たり、大爆発!全員爆死!ひどいよ!

 この映画をゴジラシリーズのノリで見に来ていたキッズはきっと心臓バクバクだったろうな。おじさんの僕はパソコンの画面で笑いながら見ているけれど、映画館で見た少年少女はどんな思いだったのだろう。

 

 一方洞窟をやっとのことで抜け出たたかしとアコだったが安心するのも束の間、プレシオサウルス登場!怪獣を目の当たりにして

「生きていた」

と冷静につぶやくたかし。絶叫するアコ。

 再び洞窟に逃げることを余儀なくされる二人。プレシオサウルスの洞窟の二人に迫り、たかしはナイフを抜いて身構える。しかし何故かBGMがファンキーロックで緊迫感ゼロ!

 絶体絶命の二人!そこに現れたランホリンクス!

 最後は怪鳥ランホリンクスとプレシオサウルスの一騎打ち。

 しかしクライマックスのプレシオサウルスとランホリンクスの決闘がまたヒドイ。操演がド下手。明らかに物理法則を無視した怪鳥の動き。羽ばたいてもいないのに何故か上下に動く怪鳥!そもそも造形からしてぬいぐるみレベル!ずううっとランホリンクスの羽が可動しないのでただのぬいぐるみがぶつかり合っているようにしか見えない。

 操演の糸丸見えで首を左右に降るだけの怪獣と、うわたたたたたたたみたいな奇声をあげて羽ばたく怪鳥の絵が交互に何度も映し出されるシュールさ。

 うわたたたたと叫ぶ怪鳥はぴょんぴょん飛び跳ねダンスをしているみたいだし、それを見て目をパチパチとしばたたいている怪獣もなんとかならなかったのか。でも今見るとそれが逆にいいよね!ってなるのでOK!

 

 そうこうしているうちに富士山が噴火!しかし頂上が噴火する絵はなし!

 激しい地割れと煙、そして炎。逃げ惑うたかしとアコ。そこに突如挿入される溶岩の資料映像。お分かりになる方いるでしょう、あの違和感。それまで模型だったのに急にどこかの国の自然災害の映像を挿入してシュールな印象を受けるあの違和感ですよ!映像のトーンも全然違うのでもう笑うしかない。

 また、バックに流れる、紫が牧歌的にらららーとか歌ってる曲がなんとも言えず、一体僕は何を見ているのだろうというトリップ気分に浸れる。誰にも理解されない前衛作品か?

 この何とも言えないのんきな曲に乗せ、結局恐竜は二匹とも地割れに飲み込まれて死亡。アコも地割れに飲まれそうになり、必死に助けようとするたかし。

 流れ続けるBGM。

 アコはナマケモノのように木にぶら下がって戻ろうとする。それをなんとか助けようとするたかしだが、中々うまく手足をつかめない。このやりとりが延々と続く。そうして最後の最後、腕一本でぶら下がるアコ。流れる溶岩をバックに落下寸前!どうなる!どうなる!

 真っ赤な溶岩が流れるバックに上からたかし、下からアコの手が伸びる。

 掴むのか?落ちるのか?掴むのか?落ちるのか?

 中々もどかしい!なんだかとてつもない時間が流れているように感じられるクライマックス、とうとう二人の手が握られる!

 アコー!と絶叫するたかし。

 そして唐突に流れるハッピーなBGMと流れ続ける赤黒い溶岩の映像。

 そこに「終」の字。うわなにこれで終わるの?!すげえ! 

 

 最後の場面、今の感覚からすれば子供騙しみたいな絵なんだけど、きっと当時これを見ていた人は手に汗握ったに違いない。このシーンを見ていて僕はやはり子供の頃見た「日本沈没」(だったと思う)のシーンを思い出した。やっぱり女の人が木からぶら下がって、下は溶岩。ひょとしたら世界で一番怖いシークエンスかもしれない。

 

 それにしても伝説の映画を気軽にクリックで観られる今の時代は素晴らしいですね。

 

 それに比べれば普通の話 

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