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デペッシュモードからのエレポップ懐古

 僕の常として、呆けた顔でYOUTUBEを見ながら怠惰な時間を過ごしていたら、デペッシュ・モードの昔のビデオがすべて観られるようになっていたのを発見した。しかも、どうやら音質がかなり改善されているぞ!

この歴史的名盤からのPVが!


 彼らを初めて聴いたのは高校1年生くらい、もう30年以上!も前のことだ。当時僕は高校入学のお祝いに親に懇願してビデオデッキを買ってもらったのだった。その頃まだビデオはあまり普及しておらず、値段も7万円くらいしたと思う。そもそもビデオを挿入するのもフロントローディング方式ではなく、車のトランクを開けるようにビデオの蓋が空き、そこへテープを挿入してガシャンと閉める形だった。


 買ってもらった当時はあんまり嬉しくて片っ端からいろんな番組を録画したものだ。これからはいくらでも映画を好きな時間に家でみられるぞ!とまだ見ぬ映画に対してあれこれと思いをはせたものだ。そうして僕が最初に録画した映画はブッシュマンだった。

       このあとブッシュマンのニカウさん、香港とか世界各地へと行かされた

    
 僕はこの映画を特別に見たいわけではなかったが、タイミングとその当時の話題性で録画してみたのだ。
 ストーリーはアフリカを飛ぶ小型飛行機からポイ捨てされた瓶がたまたまブッシュマンたちの村に落ちてきて、彼らはその用途に悩む。そのうちに瓶の奪い合いになり、とある一人が瓶で仲間を殴打!これは災いの元でしかないと判断した二カウさんが遠いところに瓶を捨てに行くロードムービーなのだ。しかし大ブームとなり日本にもやってきたブッシュマンのニカウさんが主演と思っていたら、実はアフリカに来ていた白人男女の陳腐でコミカルなラブストーリーがメインだった!最後は悪役として登場した密猟者たちと大立ち回りを演じ、ジープをめったやたらに乗り回したりして最後に瓶を捨て家に帰る・・・。確かこんな話だった。
 
    ここまでデペッシュモード、一切関係なし!

 

 当時はとにかくテレビを見ていて「お、これは面白そうな番組だぞ」と思ったら即座に録画ボタンを押し片っ端から録画していたわけ。そうしてたまたまブッシュマンの後に録画したのがデペッシュモードのPVだったのだ。

 ちなみに放送していたのは地方TVのただひたすら洋楽PVを放送する番組だった。あの頃キー局ではあまり放送されなかった洋楽のPVも、TVKなどをはじめとする地方テレビ局はガンガン放送しており洋楽ファンとしてはほぼ唯一の情報源でもあった。
 
 その時はデペッシュ・モード特集と銘打って一挙に3曲分のPVが流れたのだ。それにしても、あの当時、あのタイミングでこれを見られたのは僥倖だ。そうでなければきっと今彼らの曲をこうして懐かしみ、当時の気持ちを思い起こすこともなかっただろうから。
 皆さんも当然あるでしょうが、ある年代において、特に若いころに聴いていた音楽や映画というものはその当時の思い出や時代の雰囲気と密接に関わっている。僕にとって彼らのこの3曲はそういう価値を持っているのだ。だから今皆さんがこの3曲を聴いたとしても時代遅れの退屈なエレポップに聴こえるかもしれないけれど。では僕は勝手にあの頃を懐古し始めますよ。

 

 一曲目、「SEE YOU」

       ぶぶぶぶびょびょびょぼというシンセベースのマイナーな響きに引き続き、ドラムマシンというよりは、リズムボックスと言うべきチープな音色のドラムサウンドが鳴り響く。
 デペッシュモードの何がすごいかって、楽器テクノロジーが進んでサンプラーを使ったドラムのサウンドがほとんど生ドラムと区別がつかない時代にあっても、このリズムボックス的な音色にこだわっていたところだ。後のアルバムでは金属的でインダストリアルな音をどんどん取り込んでいたのに、なぜかドラムは「ドンチ、ドンチ」というあの音。逆にそれが彼らの個性の一つでもあるのだな。

 

「SEE YOU」の好きなところを曲・PVの内容を含め、偏執的に書きます。


 ○シンセベースの響きの後ろで「あー」という肉声に近い音でロングトーンがが薄く響いているところ


 ○メロディの展開の要所で聴ける「たんたたんたたん」というフレーズにやられる

 

 ○PVの中で、電話をかけているメンバーだけでなく、子供たちがスーパーでおもちゃを指先で叩いているのだが、そのリズムがベースのぶぶぶぶという音や、前述の「たんたたんたたん」というメロディにシンクロしているところ。細かい!

 

 ○VOのデイヴが着ているコート、曲中の革ジャンがかっこいい

 

 ○曲終盤でリフレインされる「オラワァナドーイズ、シィーユー」のところで裏拍で短く鳴っている「ギャーン」というギターの音が素晴らしい

 

 ○終盤でのPVの絵はなぜかテレビ局の編集室で、女の子の絵がモニターに映っており、それが徐々に消えていくのだけれど、その絵は、はめ込み

 

○証明写真のボックスで写真を撮るのだけれど、 あたりに出てくる人の顔がなんか怖い

 

○当時のイギリスではスーパーでレコードが売っていたことがわかる。レジ係の女の子を見た途端、デイヴが笑顔になるところも好き

 

 どうです、これを読んでもう一度確かめたくなりませんか?ならないでしょね。 


 今考えてみると、僕はこの当時、デュランデュランをはじめとしたイギリスの最新ムーヴメントをリアルタイムで聴いていたことになる。そうしてそれが僕の洋楽の原体験となり、その後の音楽の嗜好の一因となっていったのだろう。中学生の頃からこういうイギリスの音楽を中心に聴き、その後レインボーを聴きメタルに傾倒していったことであらゆるジャンルに対しての許容性が広がったのだなあ。
 
さて「SEE YOU」の次に流れたのはこの「THE MEANING OF LOVE」。

     
 ほのかな抒情性をたたえた「SEE YOU」に比して底抜けに明るいエレポップソングだ。

この曲の好きなとこ、書きます
○研究室みたいなところで覗いた顕微鏡に移った微生物にメンバーの顔が重なり「ミーニングオブラヴ」と歌う

 

○Voのデイヴの掛けているメガネがなぜかタルトになる


○サビの「テルミー、ザミニーングオブラヴ」のところで鳴る「きゅきゅ、きゅっきゅきゅきゅ」というフレーズ。ケミカルブラザースもこういう感じのアレンジをよくするけれど、当然デペッシュモードからの影響も知らず知らずのうちにあるのではないか。

 

○テレビスタジオで歌うシーンがあるが、キーボードでベースを弾いているのを見て驚いた記憶あり。手弾きであのフレーズかよ!

 

 そうして3曲目には「LEAVE IN SILENCE」。

     
 この曲のアレンジって今聴いても本当に凝っている。前の二曲とは打って変わった陰鬱でダークなサウンドが彼らの懐の深さを物語っている。

この曲・PVの好きなとこ


○ベルトコンベアに乗って様々な物が右から左へと流れ、メンバーがそれをリズムに合わせて叩くとこ。ベースのフレーズのリズムにぴったり合わせているのがすごい。ここでもデイヴの着ているリボン付きのシャツがかっこいい

 

○途中、画面が分割されるのだが、「ボーン」という音に合わせて後頭部を叩かれたデイヴの顔が青く染まるところ


○その後、全員の肌がそれぞれ赤・青・黄・緑になり、健康診断の時に着るような服でバランスボールに乗って遊んだりして楽しそう。ただ、サビの部分ではそれぞれがコーラスを歌うのだが、なぜか激昂したデイヴはヴァイオレンス!と叫び、手に持っていた小さなボールを思いっきり地面に叩きつけてその場を去る。「もう知らねえよ!」っていう感じで。


○曲終わり、ガラスの割れる音と同時に画面をハンマーで叩くと、画面が割れてメンバーがそれぞれ色々なアクションをしながらベルトコンベアで無限増殖する。おのおのいろんなポーズで叫んでいる様子が楽しそう。ここで流れているフレーズもかっこいい


 もう初めて見てから30年なるこのビデオたちの枝葉末節まで知っている僕は何だ?!

 

 しかしその後のデペッシュモードの活躍はとどまるところを知らず、日本での知名度はあまりない様だが、海外ではスタジアムバンドだ。

 

 さてしばらくして発表されたピープルアーピープルを聴いたとき、彼らの成長と変化に驚いたものだ。

     

 まず使っている音が違う。おそらく当時流行っていたサンプラーのフェアライトとかを駆使しているのだろうが、とにかくインダストリアル。斬新なサウンドだった。

        マイナーからメジャーに転調するサビがすごい名曲

    

 

 

 

 そして次の曲、「シェイク・ディジーズ」はすごかった。

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サビにおける微妙な半音の展開と不安定なPVの取り合わせが「やっぱデペッシュモードすげえな!」と僕は勝手に唸っていた。

 

 しばらくその後は彼らのことを忘れて生活していた僕、ある日MTVでこの曲が流れ再びデペッシュモード熱が再発!

       

このころの作風もかなり捨てがたい。サウンドは時代に合わせロック寄りになったがあのドラムの音や抒情性は失われていない。ギターの音が前面に出てきたことで、もはやエレポップバンドだったころの姿を想像するのが難しい。

このアルバムと次の「ウルトラ」は奇跡 

 

 この頃彼らは成功に伴う各種のトラブルに巻き込まれ解散寸前だった。しかしそれを乗り越えて発表された「ウルトラ」はまごうかたなき名盤だった!

 

    完全にインダストリアルサウンドとなったバレルオブアガン。問答無用にかっこいい

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      ベースのフレーズが素晴らしい「USELESS」

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僕にとってのデペッシュモードはこのあたりの曲たちです。最近は復刻的なリリースが続いているようですが、新作でないのかな。

 

 さてこのようにデペッシュモードを漁っていたら、当然芋づる式に当時のエレポップバンドのPVが出てくるわけですよ。ああ、当時よく聴いてたなあ!たとえば元メンバーだった人が結成したYAZOOとか

          この曲しか聴いてなかったけど

   

サウンドは、元メンバーだけあってほぼ一緒。

 

ソフトセルのマークアーモンド&ブロンスキビートという最強コラボが放つ、ドナサマーの名曲カバー。

         ジミーソマーヴィルのファルセットヴォイス、すげえ

  

 ベースラインはアンダーワールドの名チューン「キングオブスネイク」の元ネタ

                ぶばぶばぶばぶば

     

 

    エレポップとは少々違うが、ウルトラヴォックスの「ヒム」

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印象的なベースラインと、ギターのバッキングが無茶苦茶しびれるヒューマンリーグの「レバノン」 

             コーラスのジョアンナ(黒の衣装の女性)は異常に美しい

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そろそろ眠いので寝ます。ここのところ多忙を極め、ようやく休みとなったので過剰なまでな音楽記事となりましたことをお詫び申し上げます

 

80S記事でもありますね

kakuyomu.jp

 

A Broken Frame (Deluxe)

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