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和製ハードSF クリスタルサイレンス そしてサイバースペースなど

  ちょっと古い作品ですが、浴室読書用にアマゾンで1円本として購入。

 表紙の絵がね、ちょっとイマイチ

クリスタルサイレンス

クリスタルサイレンス

 

 

 人類が火星に進出した2071年。火星の既得権益は日本、アメリカ、中国、ロシアが握り、それ以外の開発後進国と水面下での対立が生じ始めていた。政治的・軍事的緊張がさざ波のように高まる中、火星の北極冠(氷原のような部分)で1mほどもある、サンヨウチュウのような異様な生物が発見される。それらは氷の中に整然と並べられており、中身が全て空洞となっていた。

 セーガン生物群(かの「コスモス」などのテレビ番組出演で有名な学者で、映画「コンタクト」の原作者でもあるカール・セーガンに由来する)と名付けられたこの生き物の死骸はまるで貝塚のようにも考えられ、その謎を解く人物として縄文時代を専門に研究している25歳の若きアスカイ・サヤに白羽の矢が立つ。

 滅多にないチャンスだが、サヤは火星行きをためらう理由があった。それは彼女の恋人のケレン・スーという人物である。身長が高く、不思議な雰囲気をたたえたこの青年にサヤは心を奪われていたが、結局彼女は火星行きを選び、ケレンとはそのままになってしまう。

 そうして火星で彼女を待っていたのは思いもよらない出来事だった・・・。

 

 まあ、逐一あらすじを書いてもキリがないのでこの辺にしますが、20年近く前の小説にもかかわらず、今読んでも陳腐さはほとんどない。この話では火星だけでなく、もうひとつの世界としていわゆるネット(サイバースペース=電脳世界)が重要な役割を担っている。

 

 ネット/ヴァーチャル世界がSFに登場するのは1974のティプトリーの「接続された女」とされており、その後ネット(サイバースペース)を舞台とした物語はギブスンの「ニューロマンサー」へと受け継がれていく。そうして我が日本が誇る「攻殻機動隊」でヴィジュアルとして派手に登場し、1999年のマトリックスで市民権を得ることになった。

 

 この小説も1999年だからほぼマトリックスと同時期に登場したわけだ。ハードSFであるので、種々のガジェットや設定が(SFの常で)当然のように語られるのでSF耐性がない人が読むと辟易するかもしれない。まあ、そのへんはリアリティを持たせるための設定と割り切って読めば良いでしょう。

 

 サヤの恋人であるケレン・スーの正体が実は○○であったり、その○○と悪役の関係が表裏一体のようなものであったりと作品世界はかなり緻密に構成されている。サイバースペースの描写はかなり工夫を凝らしていて、次から次へと登場するイメージに名前を与えることによってなんとか読者にそのイメージを伝えようとする努力が感じられる。

 

 それにしてもよく考えてみると、映像作品でこのサイバースペースを描写したものを見たことがあまりない・・・。最もサイバースペースをそれらしく描いたのは、おそらく映画「JM」(1995)だと思うのだけれどどうだろう。

  なんだかんだ言って僕、この作品好きだね。主題曲は今は亡きスタッビング・ウェストワード

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 あとは、スティーヴン・キングのヴァーチャル・ウォーズなんかがそうかな?「トロン」もそんな感じだけど。

                とはいえやっぱり人が出てくるけど

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 「スカヨハ攻殻=ゴーストインザシェル」(もうアマゾンプライムで見られる!)で芸者ロボにダイヴするときに多少その描写はあったけど、結局は黒い人並みに飲み込まれるというヴィジュアルになっていた。マトリックスでも結局は物理世界に置き換えて描写していたわけで、電脳世界をあまり絵的に見ても面白くないからだろうか。

 

 そう考えてみるとなんといってもその描写に抜きん出ているのは「攻殻機動隊2・0」だろう(スタンドアローンなどのアニメ版を僕は観ていないのでひょっとしたらそちらの方であるかもしれないけど)。

 素子のその後の世界を描く。密度がすごい。後半はほぼサイバースペースバトル!ため息が出る

攻殻機動隊 (2)    KCデラックス

攻殻機動隊 (2) KCデラックス

 

 このコミックはコミックを超えた描写に溢れている。これこそ電脳戦の決定版だと思うのですが。

 

 ちなみこちらはプレイステーション版のオープニング。BGMは石野卓球フチコマを操作して敵を破壊しまくる!描写も映画に比べてかなり原作寄り。

        これはかなり遊んだ記憶アリ。サントラもクールなテクノばかり

  
攻殻機動隊(PS)OP

 

サイバースペース一切関係なし

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