メガデスの二回目の来日っていつごろだったっけな、1990年代の前半だったはず。僕はギリギリ「ラスト・イン・ピース」アルバムくらいまでしか彼らを聴かず、それ以降はなんかメガデス違うな・・・という感じでライヴには行かなかった。
まあ、そのライブはともかく、そこでライヴ前にかかっていたバンドが当時えらい評判になっていたのだ。そのバンドこそミニストリー。
いわゆるインダストリアルサウンドの始祖というべきバンドで、VO/Gのアル・ジュールゲンセンが中心となって活動。88年に加入したベースのポールが2003に抜けるまでは二人で活動していた。ナインインチネイルズと並んでこのジャンルのパイオニアだ。実際聴いてみるとナインインチネイルズほどはエレクトリックでインダストリアルな作風ではなく、モダンなヘヴィーメタルな印象だった。ただ、その出自がテクノバンドなので、その方面のエッセンスが散りばめられた個性的なサウンドだった。初めて買ったのはこれ。
Mind Is a Terrible Thing to Taste
- アーティスト: Ministry
- 出版社/メーカー: Sire / London/Rhino
- 発売日: 1994/09/22
- メディア: CD
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当時はかなり画期的なサウンドだった。確かにサンプリング多用で電子的なサウンドを加味した音は革新的に聴こえた。シーヴスは確かにカッコいいぞ。僕はこの曲と後述のジャストワンフィックスをわざわざドラムマシンでコピーして、後輩にギターを頼み、僕がベースを弾きながらステージに立った。客は二十人くらいだったけどね。
確か使われている兵士の声のサンプリングは「プラトゥーン」だったよね?「ハンバーガー・ヒル」だっけ?
その後彼らの最高傑作と言ってもいいでしょう、「詩篇69」がリリース。前作をさらにヘヴィーに進化させた、当時としては最先端でかなり尖っていたロックアルバムだ。
- アーティスト: Ministry
- 出版社/メーカー: Sire / London/Rhino
- 発売日: 1994/08/04
- メディア: CD
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そして驚愕したのは二曲目の「JUST ONE FIX」のプロモだ。
何が驚いたかって、この銃を構えているおじいちゃんはウィリアム・バロウズ!
バロウズといえば『裸のランチ』といういわゆるカットアップという技法で綴られた摩訶不思議な小説で有名なビートニクの神様的存在だ。
- 作者: ウィリアムバロウズ,William Burroughs,鮎川信夫
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1992/04
- メディア: 単行本
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『裸のランチ』がこのアルバムの数年前にデビッド・クローンネンバーグによって映画化されており、僕は一気にバロウズにハマっていたのだ。ストーリーがあってないようなこの映画のビデオを何度も見てはひとり愉悦にひたり、ウチに後輩が遊びに来れば無理矢理この映画を観せて感想を言わせたりするくらい好きだった。
主演のピーター・ウェラーの着ていたのと似たようなスーツや靴まで買ったっけ。そうしていわゆるビート文学周辺のアレン・ギンズバーグの詩集やジャック・ケルアックの唯一の名作『路上』を読みふけった。
だから当然『裸のランチ』も読んだんだけど、正直、意味わかりませーん。まあ、そもそも麻薬中毒者の心理で描かれた話だから個々のフレーズはものすごい魅力的なんだけど一貫性やストーリー性はゼロ。無理矢理読み通したけれど結局覚えているのは映画でも用いられた球になって消えてしまう男のエピソードくらいだ。
そのバロウズがビデオの中でスピーチをし、「REALITY」「CONTROL」「IMAGE」などと書かれたタイルを散弾銃で打ち砕く!クール!ただ、もうおじいちゃんなのでかなりの至近距離から撃っているにもかかわらず、端っこにかろうじて当たるところが微笑ましい。ちなみにバロウズは妻とウィリアム・テルごっこをやり、誤って妻を射殺している。
この素晴らしい曲とバロウズの結びつきは奇跡だ。ビデオのコメント欄を見ると、やたらとラムシュテインとの比較があるけれど、当然ミニストリーのほうが先駆者だし、すごいでしょ!
このアルバムは他にもバットホールサファーズが参加した曲やら、
「カナッタガッテンダーツ!」と何度も絶叫する超絶ファストナンバー「TVⅡ」
など、こんだけ完成度の高いアルバムだったんだから次もさぞ・・・と思ったらあれあれ、どうしたんだ「フィルスピッグ」。もちろん一曲目は大好きなんだけどそれ以降の曲がイマイチ・・・結局しばらく僕はミニストリーを聴かなくなってしまった。その後に出たアルバムも二三枚購入したけれど全然聴かずに売っちゃったり。
しかし、忘れた頃にたまたまYOUTUBEでこのPVを見た。
おお!なんだこの景気の良さは!ヘッドバンギングするために作られた曲じゃないか!まるでデッド・ケネディーズのジェロ・ビアフラとアルとポールが一時期やっていたLARDに近いヤケクソスラッシュパンクチューン!この曲を含む「HOUSE OF THE MOLE」は久々スカッとするサウンドが詰まっていた。このあとの「リオ・グランデ」もいいんだけど、いかんせん政治色が濃くって・・・よほどブッシュが嫌いだったらしい。
そうそう、そのサイドプロジェクトのLARDもなかなかいいバンドだった。これもまたクールなベースのフレーズのイントロで始まちドパドパドパドパ!という景気のいいリズムが畳み掛けるスピードスラッシュ、「FOLKBOY」。この曲は昔MTVのアイキャッチで頻繁に使われていた。
これはオリバーストーン監督、クエンティン・タランティーノ脚本の映画『ナチュラルボーンキラーズ』の監獄での暴動シーンでもかかっていた。サウンドトラック担当者はNINのトレントレズナー。さすが、わかっている!
で、最近のミニストリーって結構すごいことになっていたんだけど、
もう、完全にデジタルハードコア。アルは「もうミニストリーのアルバムは作らない」宣言をしており、どうすんのかな、と思っていたら、去年とんでもないプロジェクトをやっていた。
わははは速えー!アル、もう60近くでしょ!人間いくつになっても頑張れると思った!
まだまだ頑張れる!