トリッキーの新曲が少し前に出ていた。
トリッキーを初めて知ったのはマッシヴ・アタックのビデオ、カマコマだ。そこで歌っていたトリッキーを僕は最初正式メンバーだと思っていたらそうではなかった。マッシヴアタックについてはこちらで。
この当時、トリップホップ、もしくはブリストルサウンドと呼ばれる音楽がかなり流行っており、僕もその革新性にすぐに惹かれていわゆるトリップホップ御三家と言われたマッシヴアタック、ポーティスヘッド、そしてトリッキーを貪るように聴いた。
トリップホップの大まかな解説はウィキに任せます。
どのバンドもそれぞれに強烈に個性を発揮していた時期で、次々と現れる聴いたこともないような音に僕は連日酔いしれていた。とにかく彼らの音の選び方やサンプリングの手法、そうしてぶっきらぼうにつぶやくラップがしびれるほどカッコよかった。マッシヴアタックが出てきた当時は、よくそんなにブツブツ言っているようなラップをヴォーカルとして採用したな、と思っていたが(でもカッコいい)トリッキーはさらにそれをくどく、粘っこくしたようなヴォーカルスタイルだった。ウィキペディアでは「幽玄のナーコスティック・サウンド」と形容されているが、なるほど言い得て妙だ。
初期はMARTINEという女性シンガーを擁し、彼女の歌声にトリッキーが絡みつくよう何らかの歌やうめき声を上げていた。そもそもトリッキー自身は歌を歌えないようなので(表っとしたら音痴か?)どの曲を聴いてもほとんど喋っているのと同じだ。まあ、それが彼の個性なのだけれど。初期の名曲「BLACK STEEL」。
パブリック・エネミーのカヴァーであるこの曲は今聴いても素晴らしい。今でこそこういう曲は珍しくないかもしれないが、当時としてはかなり耳新しい感じを受けたのだ。同時期のプロディジーの「POISON」もこんな印象の曲で、プロディジーに関してはこの曲で僕は聴くようになったのだ。
スマパンの「SUFFER」をサンプリングしたその名も「PUNMPKIN」の12インチ。
これはジャケ買いで、曲自体は僕そんなに聴かなかった・・・。
この後ろに写っている年齢不詳の人たち・・・今何をやっているのだろう。
新規開店のラーメン屋の店員じゃありませんよ、ミュージシャンですよ。
でも左の人など、当時は山崎邦正かと思った。右側のおじさんもたいがいだけど。
実際トリッキーはマッシヴアタックやポーティスヘッドほどのキャッチーさはない。だから時にあまりにサウンドがアヴァンギャルド過ぎてこれ聴くか?みたいな曲もあるのだ。
それでも僕は律儀に彼のアルバムが出るたびに買い、ブラーのデーモン・アルバーン也ビョークなんかも関わっている「NEARY GOD」(=ほとんど神)というアルバムも買った。でも実はこれもあんまり聴いてない・・・。
それにしても買ったはいいが、ほとんど聴いていないアルバムを僕は何枚も持っているが、そいつらをどうしたらいいのだろう。昔なら売っても良かったんだけど、今の時代、余程のレアなアイテムでなければ売れない。オークションか?それも面倒くさい。
オークションといえば、僕は買い専門だったのだが、一度だけ出品するとポイントもらえるキャンペーンに乗っかってCDを売ったことがあった。出品するだけでポイントがもらえるので、これ、もはや聴かねえというRAZORというバンドのCDを出品した。
タイトルもジャケットもすごいインパクト。
しかしオークションは大したもので、入札があったのだ。僕が逆に驚いてしまった。僕の知らないところで色々な需要があるものだ。まあ、保冷剤がメルカリで売られる時勢なのだから、RAZORが売られても不思議ではない。
トリッキーのアルバムは出るたびに追っていたが、一時期活動を休止したのでそれっきりあまり聴かなくなってしまった。あるとき、たまたま彼のアルバムがアマゾンで安売りしていたので買ってみると、
全然曲調が違い、バンドサウンドになってかなりキャッチーになっていた。あれこれレッチリがやっているのか?という曲があってまあ、実際にレッチリがやってたんだけど、
もはやこれトリップホップとかでくくる(まあ音楽をジャンルでくくること自体色々と問題はあるけれど)ことはできないなあ、と思った。このアルバムは傑作です。
最近の活動再開の理由として「世の中で流行っている音楽のくだらなさに、これならまだ自分の作る音楽の方がマシなのではないか」と彼は語っていた。こういうのはロック・ポップミュージックの宿命でもある。
その昔プリンスの「バットダンス」が大流行したとき、
僕はこういう音楽を聴く人が増えたのだなあ、と思った。まあ、あれはやはり映画との相乗効果もあったのだろうが、あそこまでのインパクトある曲がヒットチャートを賑わしたという事実は驚きに値する。
もはや今の日本で若い人はプリンスが誰なのだかほとんど知らないだろうけれど、トリッキーがとんでもない曲を作って再び注目されることを僕は密かに期待している。
音楽を小説で