音楽と本

僕のカルチャーセレクトショップ

カータンの敗北

 日常的に無心に何かをしているときにふと思い出すフレーズやメロディがある。この間、会社で掃除をしていたときのことだ。窓からは初冬の柔らかい日差しが差し込み、遠くから響く車の行き交う音の他には何も聞こえない。そんなとき突如頭の中で
「じっけんどんがらがったじゃすとんぴーなつかれーらいす!」
というフレーズとメロディが再生されたのだ。
あれ?なんだっけこれ?子供の頃によく聴いていた曲じゃないか。この手のフレーズは一度再生されたが最後、永遠にループし続ける。僕は「じっけんどんがらがった・・・」と頭の中で何度も歌いながらモップでごみを集めていたよ。
 今は便利な世の中、すぐにググって判明。僕ら昭和40年代生まれの世代にとっては非常に懐かしい子供向け番組「ピンポンパン」の中の曲「ジャストンピン」だった。しかも、「じっけん」ではなく「ちんげん」という歌詞だった。

       改めて聴くと歌詞が結構すごい。「結婚したいんだ」って・・・

    ピンポンパンは今でいう「おかあさんといっしょ」的なプログラムだった。昔は子供が多かったからだろう、他にもポンキッキとかカリキュラマシーンロンパールーム(さっきYOUTUBEで久しぶりに見て感動)みたいな番組が民法でも朝っぱらから放映されていたっけ。あっ、そうそう、高校のときの体育の先生が年配の女性で、僕らに対する指導の仕方がまるで幼稚園児にするそれだったのでついたあだ名が「ロンパ」っだったなあ。ロンパールームって何故か午前11時くらいからの中途半端な時間にやってったなあ。

            今見るとかなりシュールでグダグダな内容

    

ちなみに、この動画の28分40秒のところでNNNニュースが流れるんだけれど、そのオープニング画面と音楽に一気に昔の記憶が呼び起こされて妙に顔がほころんでしまった。昭和40年代生まれの人!絶対観たら「ああ!あった、このオープニング!」と思うこと請け合いですよ!若い人にはこの感動は伝わりませんね。

 

 ピンポンパンの話。

                
朝8時くらいから毎日やっていた「ピンポンパン」のメインメンバーは、ちょっとふっくらしたルックス的にはおじさんのお兄さん「しんぺいちゃん」と歌のおねえさん、おにいさん、そしてカッパの「カータン」だったと思う。抽選で選ばれた幸せな子供たちが番組に参加し、最後には沢山のおもちゃの山から好きなものをもらって帰る様子がとてつもなく羨ましかった。
 ほぼ毎日見ていたにも関わらず、ほとんどその内容は思い出せないのだけれど、今でも鮮明に覚えているシーンが一つだけある。
 

 カッパのカータンは絵が得意で、ランダムで選ばれた幼児が描いた適当な形を必ず何かしらの絵にしてしまうのだ。子供たちのアメーバみたいな形や角張ったものなど様々なタイプな図形を見事に何かしらの動物や植物、そのた諸々に変換させるのだ。だから僕らにとってはカータンは無双であったのだが、ある日遂にカータンが敗北を喫する相手が登場したのだ。
 その子供は普通の子供と違ってひと筆で何らかの形を描くのではなく、中心の点から外へ向かって渦巻き状に円を描きだした。彼は妙に明るいピンポンパンのBGMに乗せて、ぐるぐる、ぐるぐると複雑怪奇な巻き貝状の図を紙からはみ出さんばかりの勢いで描ききった。僕は「さあ、どうするカータン!」とドキドキしていたが、カータンはなんと「これはできないよう、こうさんだぁ」と頭を抱えてしまい、そのまま終了してしまったのだ。カータンの負け!

 
 前代未聞の事態に僕は茫然とした記憶がある。その後僕なりにあの絵を検証した結果、ぐるぐるの部分をカタツムリの殻にすればいいんじゃないかという結論に達したのだが、その考えがカータンに届くはずもなし。次の日何事もなくカータンは絵を描いていたが、無敵のカータンが膝を屈するのを見てしまった僕はどこか冷めた思いでテレビを見ていた気がする。

 

 こういうのは買えるんですな

  

ちんげんどんがらがった

kakuyomu.jp