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なるかみスーツ読本

 九月ころに叔母から連絡があって突然「スーツを買ってやる」という。

 母方の叔母で彼女は現在68歳なのだが、今も元気に働いており、仕事の関係でオンワード樫山のパーソナルオーダーでスーツをつくってくれと頼まれたんだって。そこで普段から割とよく連絡を取っている僕に声をかけてくれたのだ。自分で払う余裕はないが、買ってくれるのなら作るぜ。特段叔母だってお金を持っているわけではないが、色々と付き合いがあるらしく頑張ってくれたらしい。

 

 すこし前はスーツカンパニー初めとしたツープライススーツ(19800、29800くらいの値段設定が2パターンでツープライス)なんかが主流だったけど、今なんかもうGUとかでもそれなりのセットアップが買えてしまう時代・・・。しかしそれらとは違ってオーダーであるから一応生地から選び、多少の細かい調整もできるのだそうな。


 ちなみに今回買ってもらったスーツは39,800円。生地をウールではなくポリエステル混にしたのでこのくらいです。といっても今の僕からすれば結構な値段である。叔母さんどうもありがとう。

 基本的にスーツの値段って生地で決まるのですよ。イタリア製のスーパー120とか、そういう糸を使っていると値段が張るのです。今考えてみれば僕の30代、つまり20年くらい前はBIGINとかメンクラなどの雑誌に影響されてこの倍以上のものを着ていたりもしたのだけれど、もはやそんな余裕はない。そしてその頃作ったスーツはさすがに型が古く、今着るとどうにも野暮ったくてあんまり着る気にはならないんだよな・・・。


 例えばこれなんか今は無きバーバリーラシックスで買ったやつなんだけど、やはり20年近く昔のデザインなのでなんというかフィット感がなく、少々ゆるいのだ。

                もう二十年近く前か!

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 特にパンツにそれは顕著で股上は深く、タックが二本入っていて時代の流れを感じるのだ。とはいえ腐ってもバーバリー(つってもサンヨー商会がライセンスを取得した日本独自ブランドだが)、生地はいまだにしっかりしている。あのころ、紺地に青のチョークストライプが入ったスーツがほしくて都内の店を数件回ったが気に入ったのがなくて、最終的に伊勢丹でこれを発見した時は嬉しかったなあ。

   チョークで描いたようなストライプ。この線が細くなると「ペンシルストライプ」となります

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    ストライプがブルーなの、分かります?白は定番だけれど、青のストライプは珍しい

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 数年前に虫に食われて穴が開いてものすごいショックを受けたが、僕は余り生地を穴の裏から貼り付けてなんとか修復したのだ。だからこのスーツにはかなりの愛着があるのだけれど、いかんせん型が古いのでたまに着る程度になってしまった。まあ誰も僕の着ているスーツの型なんか気にしないんだけどさ。


 さて買ってもらったスーツの話。これです。

           吊るしだといまいち分かりにくいでしょ

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 生地から選ぶのはやはり楽しかった。僕は昔、何着かオーダーで作ったのだけれど、久しぶりにあのワクワクを感じたね。僕の好みはストライプのスーツなんだけれど、何着も持っているので今回はウィンドウペーンにしました。ウィンドウペーンというのはいわゆる格子柄のことです。

             うっすらと紫色の格子柄が見えますか

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 生地を選ぶときに何気なく「このウィンドウペーンにするかなー」とつぶやいたらおそらく僕より年下であろう採寸の人が「よくご存知ですねー」と感心していた。

 いやいや、僕まあまあスーツ歴が長いんですよ。でもあんまりそういう知識をひけらかすとただの知ったかぶりのイヤな客だよね。とはいえ細かい部分について話を進める段になったら逆に話は早かった。たとえば「本切羽」(袖のボタンの部分が開くようになっている仕様)にするかどうか。その分オプションなので今回はしませんでした。その代わり、ボタンの色を割りと明るめのものにしてこだわり感をだしました。本当は素材を水牛の角(値段がやや高くなる)とかにしたかったのだが、買ってもらうのにそんな注文はできません。プラスチック製です。

   本切羽は本当にボタンの開け閉めが出来るがほぼ必要の無い機能。スーツ腕まくりしないでしょ

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 他にはパンツはダブルの4・5センチでとか、サイドベンツとか。この辺は標準仕様なので無料です。またチェンジポケット(右側のポケットの上にもうひとつつける小さなポケット)もつけました。チェンジポケット大好き。仕様はスラント(斜め)で。

       小銭を入れるためのポケットという説があるけど、ほぼ装飾的なもの

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 あとはAMFステッチとかですかね。AMFステッチとはラペル(スーツの襟)やポケットについている縫い目のことです。最近は標準的についているものも良くみます。このステッチの色を変えるという変則技もあるのだけれど、あまりやりすぎると悪目立ちするので同色にしました。ポールスミスのスーツなんかはわざステッチの色を変えて派手目にしているものがあるね。そして本当はベストを加えたスリーピースで作りたかったが、当然その分値が張るので叔母さんに遠慮してやめました。

 

          さて実際に着て見ると、こんなんです。

              自宅スーツ自撮り野郎

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 さすがオーダー、体にしっくりなじみます。ジャケットがフィットして全然方に負担がない!また最近のパンツの傾向としてノークッション(丈が短めで靴につくかつかないか位の長さ)なので親に「なんか短くないか」と言われました。いやいや、これでいーのだ。

 それにしてもやはり新しいスーツが気持ちがいいね!これを着てこの日は娘の小学校で「働く人へのインタビュー」というイベントに参加し、50人くらいの小6の小学生の前でお話をしました。

 

いまだに誰かしら毎日少しずつ読んでくれてるんですね

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