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『みいら採り猟奇譚』『真夏の死』『彼の生きかた』読む

  毎日お風呂で本は読んでます。新しい本を買うのも良いんだけど最近懐事情があまりよくないので「本棚にはあるけれどまだ読んだことのない作品」に手を出してみました。それがこちらの『みいら取り猟奇譚』『真夏の死』『彼の生きかた』。

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 『みいら採り猟奇譚』、これ多分20年以上前に買ったんだと思うんだけどなぜか読む気がしなくてずううっと本棚に収まりっぱなし。多分タイトルに引かれた買ったのだろう。僕は映画や本は予備知識なしに読むのが好きなのでこの本も先入観なく読み始めた。

 

 「猟奇譚」というタイトルからおどろおどろしい内容を想像していたのだけれど、思いのほか物語は淡々と進む。時代は昭和16年、戦争の影が忍び寄る東京で医者の娘比奈子は、昔から父が懇意にしている医者一家の長男隆志のもとへ嫁ぐ。

 この隆志という人物、40を過ぎてもなぜか独身だ。比奈子の相手としては医者とはいえだいぶ年が離れており、条件が悪そうだが比奈子の側にも事情があった。本来は比奈子は父親が養子としていた良夫という男性と結婚するはずだったのだが良夫は結婚前の比奈子が18歳のときに彼女の前で服毒自殺をしてしまうのだ。

 ただこの話、戦争を背景としてこのような事件が語られたりするのだけれど不思議と悲壮感がない。なんというか淡々と毎日がすぎていく様子が描かれる。

 比奈子は隆志と結婚する。夫は優しく医者としても優秀なのだが実は彼はマゾヒストだった。最初のうちは控えめに比奈子に自分を責める要求をしてくるのだが。徐々にそれはエスカレートしてゆく。とはいえ純文学小説なので特にこれといった具体的描写はあまりない。比奈子のほうも少しずつそういう夫の嗜好を理解し、彼の要求どおりさまざまな責めを与える。ただ肉体的に痛めつけるだけではなく、言葉の上でも彼を演劇的に責めているうちに二人の関係はより強固なものになってゆく。

 最後には疎開先の家で展開があっというものになり、え、こんな終わり!となる。

 多分読む人もほぼいないでしょうからネタばれすると、

 マゾヒストの最高の瞬間は一度しかない。それは愛するものに殺される瞬間である。最後は馬乗りになった比奈子が夫の首を布で絞めて彼の背中の棒立ちになり、夫はペガサスのように昇天する。

 どうです、新潮社から出ている純文学書下ろしの本ですよ。純文学といっても特に難しい描写があるわけではありません。読み始めるとスイスイ読めてしまう。何も知らないで読むって言うのは面白いね。

みいら採り猟奇譚 (新潮文庫)

みいら採り猟奇譚 (新潮文庫)

 

 

 写真左の銀色の本は三島由紀夫の短編集『真夏の死』。戦後の日本を色々な角度で切り取った短編が詰まっている。菊田次郎の話は由紀夫の文学観も体現しているようだ。あとは五人の破天荒な学生(それぞれの名前は倫吉、邪太郎、妄介、殺男、飲五郎というとんでもないもの)が主人公である『卵』という寓話がありこんな話も書くのだなと興味深かった。傍若無人に過ごす彼らの日課は朝食に必ず卵をイッキ呑みすること。そうしてある夜彼らはいつの間にか卵の支配する町へ連れて行かれ、何万という衆卵環視の中、弾劾される。しかしその最中その場所が巨大なフライパンであることに気づいた五人はその柄に飛び乗り、フライパンをひっくり返す。そうして町は割れた卵だらけになり、彼らはバキュームカーで卵を集め、毎朝卵を食べるのだ。何だこの話。

 このシリーズはあと『遠乗会』を持っていてそれもそのうち読むでしょう。あっ、そういえば僕『豊穣の海』を途中まで読んだんだけどそのままになっている。死ぬまでには読まなければ。

 天人五衰まで道は遠い

豊饒の海 第一巻 春の雪 (新潮文庫)

豊饒の海 第一巻 春の雪 (新潮文庫)

 

 

 あとは今さっき読み終えた遠藤周作『彼の生きかた』。

彼の生きかた (新潮文庫)

彼の生きかた (新潮文庫)

 

 どもりで不器用な一平は動物好きが高じて日本猿の研究者になる。不器用であるゆえに上手く生きられない彼に、世間は冷たく、幼馴染である朋子も彼の元から去ってします。猿のために一途に生きる彼の姿は神々しい。

 実在の研究者を基にしたフィクションですが、これが非常に面白かった。狐狸庵先生の文体は構えることがなく、不必要な描写も少なくシンプル。生き生きとした会話が連なり非常に読みやすい。これ誰かの文体に似ているなと思ったらああ、井上靖だなと思いました。井上先生も非常に読みやすく、かつ面白い。

 『しろばんば」は永遠の名作。洪ちゃとばあちゃんの話で自伝的小説

しろばんば (新潮文庫)

しろばんば (新潮文庫)

 

 『しろばんば』があまりに面白かったので当然こちらもすぐに読んだっけ。

 洪作のその後。どんどん物語りが進む

夏草冬濤(上) (新潮文庫)

夏草冬濤(上) (新潮文庫)

 

 

 今日は昼間時間があるので久しぶりにゆっくり記事がかけたなあ。次はハインラインの『月は無慈悲な夜の女王』か、森見登美彦の『聖なる怠け者の冒険』をそれぞれ100円で入手したので読む予定です。

 

 本はお金がかからなくていいよね。こちらもタダですよ!

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