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ダイナソーJrとアニキの話

 1990年代中頃、大学を卒業してもふらふらとしていた僕は暇にあかせて京王線沿線に住む、僕を含めた「軍団」と称する何人かの友人や後輩としょっちゅう遊んでいた。

 

 僕が大学時代に所属していた「軍団」の話に興味がある方(いるのか)はこちらをお読みください。くだらないです


www.otominarukami.tokyo

 

 その中のひとり、今でも懇意にしている通称「アニキ」(後輩だけど)はその当時府中で一人暮らしをしていた。なぜアニキなんてあだ名が付いたかと言えば、180近い長身、サラサラのストレートの長髪、ピーター・ウェラーのようなマスクがなんとなく兄貴っぽい雰囲気を醸し出していたからなのだろう。

 

 彼は僕のブログの熱心な読者でもあるので、この記事を見て「あ、俺のこと書いてる!」と思っているでしょう。今日は君の話ですよ、アニキィ!

 

 大学時代の彼は結構なパチンコジャンキーで、打ってはしょっちゅう負けるということを繰り返していた。その当然の結果として借金がかさみ、相当な額になっていた時もあった。

「借金のこと考えたら眠れねえ」

 みたいなことを言ってもいたっけ。しかしそれでもパッチーはやめられなかったらしい。そうして金がないのにも関わらずバイクの中型免許を取得した彼はヤマハのSR400を購入し、颯爽と乗りこなし学校に現れたものだ。

 

 あるとき友人の家でみんなで集まって騒いでいたが、その席でパチンコやめてえ、儲かるわけねえ、みたいな話になったのだけれど、そう言った直後に彼は

「(パチンコを)打つっきゃないっしょ!」

と裏声で叫び、僕らを笑わせていた。その後、ことあるごとに

「打つっきゃないっしょ!」

という裏声フレーズが僕らの間から突如飛び出し、全員爆笑。

そうしていよいよ彼が帰るときのことだった。「俺もう帰るわ」と部屋を出て行った外でバイクの音がどどどどとなったかと思うと、窓の外を爆走しながら

「打つっきゃないっしょ!」ドドドドドドドド

と去っていった。もちろん僕らは腹を抱えて死ぬほど笑った。

 

 しかしそのSRも数年後にはバイク屋に売り、彼はヘルメットをそのままゴミとして捨てて帰ったそうだ。

 

 とはいえ、大学卒業後、ぺえぺえの僕と違いちゃんと就職してエディターとなっていた彼はそのころ音楽関係の記事などを書いていた。そうして時折CDやコンサートのチケットをくれた。そのおかげでELPなどを見ることができた!ありがとう。

 

   

 

     ここまでダイナソーJr一切関係なし!

         すいませんねえ、もはやお約束になってます。

 

 

 あるとき府中の彼の家に遊びに行った僕は彼にこのCD(サンプル盤)をもらった。

グリーン・マインド

グリーン・マインド

 

 

「結構激しいギターにアコースティックな音が絡んでくるバンドなんすよ。なるかみさん、結構好きだと思いますからあげますよ」

 という話だった。一曲目の「WAGON」をその場で聴いたときはそれほどのインパクトはなかったのだが、二曲目の「PUKE+CRY」(嘔吐と号泣というタイトルがすごい)でやられた。この曲があったから僕はダイナソーにハマったのだと言える。

    ドラムの子気味よさとジャカジャジャジャン!というアコギの絡みが素晴らしい

    www.youtube.com

 この曲一発で彼らを気に入り、僕はしばらくこのアルバムを聴き続けた。今でもこのアルバムがダイナソーのベストだと僕は思っている。

 

 そもそもダイナソーJRはGt/VoのJマスキス(マスシス)が中心となってベースのルー・バーロウ、Drのマーフで結成されたバンドだ。ただ、この「グリーンマインド」ではすでにルーは脱退し、マーフも数曲でしか叩いてないので実質ほとんどJがほとんどの楽器を演奏している。Jはドラムもかなり上手いので一人でできてしまうのだ。

 世はニルヴァーナのブレイクでグランジ一色だった頃だ。このダイナソーも一部では「元祖グランジ」なんて言われていたが僕はあまり彼らにグランジ色は感じなかった。もちろんそのあたりのバンドとの交流もあったらしいけれど、すでに彼らは独自のサウンドを確立していたのだ。

 ダイナソーの魅力はやはり爆音で奏でられる騒々しいギターのフレーズに、だるーいJのどことなく哀愁がかったヴォーカルが美しい旋律で入ってくる、そんなサウンドにある。

とにかく僕はこの「グリーンマインド」があまりに素晴らしいので直後に発表されたシングルの「WHATEVER COOL WITH ME」のCDを飛びつくように購入した。

 このジャケットのセンスも抜群

Whatever's Cool With Me

Whatever's Cool With Me

 

 

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 ダイナソーJrの曲としてはあまり有名ではないかもしれないこの曲は、しかしながらいかにもダイナソー然とした名曲だ。

 冒頭でいきなりどこどこたどこどこた!と鳴るツーバス、突如クサくない程度にメロディアスになるサビ、そしてトドメで泣きのJのギターソロ!このころのJのギターは本当に神がかっている。ライヴなんかを聴いても、ガンガン心に響くアドリブソロをカマしてくれている。

 タイトル通りかなりクールであった表題曲の後の静かな曲も、この頃のダイナソー!という感じがして大好きだ。そうして僕はどんどんさかのぼって彼らの1stからアルバムを揃え始めた。

 

 そうそう、兄貴のことのおまけ。

 その後彼の会社が潰れて残念会をやったあと、しこたま酔っ払って、「キャベツちゃん」なるオカマに拾われて一晩中世話になったとか、数年前に深夜酔って自転車に乗っていたら職務質問をされて、よせばいいのに警官に絡んで警察署まで引っ張られていった話とか信じられないおもしろエピソードを彼はたくさん持っているのです。

また遊ぼう、アニキぃ!

 

 ダイナソーの話はまた明日。

 

このお話で出てくるバイクはもちろんSR400!

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