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コニー・ウィリス『リメイク』を読む 後編

 コニー・ウィリスの小説『リメイク』の続き。

リメイク (ハヤカワ文庫SF)

リメイク (ハヤカワ文庫SF)

 

 

 過去の映画の中にアリスの姿を発見するトム。それも何本も。アリスはタイムトラベルに成功し、映画に出ることに成功したのか?

 

 さてここから過去へ行くのか?コニーはタイムトラベル小説をいくつも書いているから、ここでもやはりそれが出てくるのか?いったいどういうことだ?と思っていたら、実はそうではなかった。ミスリードか!なぜアリスが過去のミュージカル作品に出ていたのか。

 

 実はアリスは街の貼り込みショップに職を見つけ、仕事が終わったあとにその機材を借りてスキッド(地下鉄みたいなものか?)の駅の立ち入り禁止構内のある場所で、その機材を使って様々な映画のステップのコピーをしていたのだ。トムは彼女の姿を見たという噂を頼りにその部屋を探し当てる。そしてその部屋で一心に踊るアリス。トムは理解した。貼り込み機材は彼女の動きがあまりに完璧にコピーされているために本物と勘違いし、彼女の動きをそのままスクリーンに収めてしまったのだ。そしてそれがオリジナルの作品に影響を及ぼしたのだ。しかしアリスはそのことに一つも気づいておらず、トムに指摘されて初めてそれを知るのだ。

 

 アリスはようやく夢破れたことを理解する。

 

 その数日後、彼女はトムの部屋にやってくる。まだ映画がかろうじて作られている中国(必ずしも治安が安定しているわけではない)へ行くのだという。彼女はトムに別れを告げに来たのだ・・・。

 

 この場面でも、このあとのエンディングでもカサブランカを始めとして、多くの映画の引用とメタファーが交錯し、そして『劇終』の文字とともにスクリーンが(本当に)暗くなる。

 

 そして再び冒頭のシーンを読んで「ああ、なるほど」と僕らは理解する。小説自体が、映画的構成の手法をとっているのだ。ともかくアリスは映画の中に生き続け、トムはそれを観る。

 

 ちなみに最後の章段の小見出し

「映画的クリシェ(常套表現)♯1ハッピーエンディング。説明するまでもなく。」

 となっている。

 

 なんだかわかりにくくなってしまいましたが、やはりこのラストシーンは何度か読んで確認していただきたいですね。

 コニーの作品としては(文庫で224ページあるものの)、小品の部類であり、他の大作に埋もれがちですが、あとがきに彼女の言葉として「自分で書いたものの中で一番いいものだ」と書いてあったのが非常に印象に残りました。たしかに他の作品の傾向と違う何かがこの「リメイク」にはあります。

 

 あまり上手にまとめられてませんね

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