あなたが若い独身の男性と仮定して、何らかの機会に会社の同僚を車に乗せることになったとするじゃないですか。会話が弾めば何の問題もないのだけれど、ちょっとした隙間に音楽をかけたりもしたい。そういう時に、普段どういう音楽を聴いているのかということがあなたという人間の評価の一部になったりすることもあるでしょう。
さあ、どうする!ここで流行りの音楽をかけて、表面ではわからないけれども、彼から音楽的蔑視を密かに受ける可能性もあるかもしれない。いやいや、考えすぎでしょうけど。そんな人間と付き合うことないでしょうけど。でも、やっぱり「あ、この人音楽のことわかってる」と思われた方がいいよね。
じゃどうする?あなたの意外な一面を見せるべきなのでは?こんな音楽を普段聞いているあいつってスゴクネ?!みたいな評価をもらいたくないですか?
そこで、おせっかいにも僕の登場です。
おすすめのパワー系音楽を教えましょう!『NASUM』(ナザム)ですよ!
彼らのサウンドはいわゆるグラインド・コアとよばれるもので、とにかくノイジーででスラッシュなギターサウンドと超絶に速い、すたたたたたたたたたというドラムが絡む轟音激烈ミュージックです。
こういう音楽を普段聴かない方にとってはただの爆音ノイズにしか聴こえないでしょう。しかし!積極的に聴く姿勢を持って真剣に彼らのサウンドに相対すると、彼らの魅力が少しずつ伝わってくるはず!
日本のライヴ?
一聴するとメロディのかけらもないような彼らのサウンドだけれど、よく聴くと実は繊細な音程を持って構成されていることがわかる。ヴォーカルは絶叫に次ぐ絶叫。だからここにはメロディの要素はゼロ。ではそのメロディを担っているのが故人であるミエツコのギターリフなのだ。残念なことに2004年のスマトラ沖地震でミエツコは津波にのまれ、お亡くなりになってしまった。そして解散。まだまだこれからだというバンドだったのに。
このバンドはトリオでやってるんですよ。結構トリオってこの手のバンドでは珍しい。ソドムとか、ヴェノムとかの直系とでも言えるのだろうか。
そうしてVo&Gのミエツコが奏でるリフは轟音ながらもうっすらとマイナーなメロディを描いており、それが時に劇的な展開を見せる。ダムが決壊した直後の、ほとばしる激流のような勢いを持つギターの音壁がエモーショナルな響きを持って展開するのだ。
その物哀しいメロデイを発見できたとき、「ナザムすげえな」という感動に包まれるのです。ぜひご体験を!
こちらのアルバムがかなりいいデスメタル。
ミエツコが亡くなって、すぐに追悼アルバムが出た。「グラインド・フィナーレ」というまさに言い得て妙なタイトルじゃないか!そうして二枚組CDでなんと152曲収録という大ボリューム。レッツグラインド!
豪華デジパック。数十ページの冊子がおまけで付いている。
そうそう、「ナザム」とは確かラテン語で「鼻」を意味するそうです。この「グラインド・フィナーレ」を爆音でかけながら小学3年生くらいだった頃の娘に教えてあげると「ふうーん」だって。しかし、このアルバムのある部分で映画のセリフが入っており、「ナーザム」というところで笑ってた。
とにかく同僚を車に乗せたとたんにこいつを大音量でかければ、「普段は大人しそうに見えるあいつ、実はマトモじゃない」というプラスなのかマイナスなのかわからない評価を得ることができるに違いない!
結局激しいミュージック!