この「ヘビーメタルと文芸少女の文法講座」は、このブログの管理人である僕「なるかみ音海」が書いた『ヘビーメタルと文芸少女』という素人小説の主人公である「大石ユリカ」というキャラクターが、僕のものしたもう一つの作品『土管の向こうの街』に出てくる「山内孝之」に文法を教えるという茶番を通じて、言葉の仕組みを語ろうという試みです。 文法が苦手な小学生や中学生、高校生、そして大人たち、集まれ!
登場人物紹介
大石ユリカ
高校1年生のヘビーメタル好きの文芸少女。小学2年生ら父親の影響でメタリカを聴き始め、同時に始めたギターの腕前はプロ級。
こちらの小説でギター弾きまくり
山内孝之
小学6年生。中学受験を控え、勉強をしている。文法は苦手。ユリカに家庭教師をしてもらっている。
こちらの小説で大冒険
第3回 単語分けのコツ!これさえ覚えればバッチリ!
さて、今日は単語分けについて勉強するよ。この間やった文節に比べるとだいぶ難しくなるけれど、ちょっとした知識とコツさえつかめば大丈夫だよ。
じゃ、まず口語文法で言う単語って何かっていうと、「言葉をそれ以上分けることができない最小の単位」だね。例えばこういう感じ。とりあえず最初は文節に分けるね。
カークが/激しく/ギターを/弾く。
カークって誰?
いい質問ね!カーク・ハメットのことよ。メタリカのリードギタリストなの。超絶テクニックってわけじゃないけれど、彼独特のソロフレーズはメタリカには欠かせないの。この人がそうよ。カークが弾いているギター、わたしも持ってるんだ!
ユリカ先生の趣味、相変わらずすごいね。でもなんだか僕もメタルのかっこよさが分かってきた気がするよ。
よかった!またこっちの住人が増えた!じゃ、さっきのフレーズを単語に分けるからね。「|」で分けた部分が単語の切れ目だよ。
カーク|が/激しく/ギター|を/弾く。
どう、わかった?
うん、なんとなく分かるよ。
じゃあ、ちょっと練習してみる?簡単なやつからいこうね。最初は文節に分けて、それから単語に分けるといいよ。
ギターを弾く。
音が大きい。
曲が速い。
低音を上げます。
ドラムが壊れるとき。
どう?できた?じゃ正解をどうぞ。
ギター|を|弾く。
音|が|大きい。
曲|が|速い。
低音|を|上げ|ます。
ドラム|が|壊れる|とき。
合ってたよ!簡単だよ。
そう、まだ最初だから簡単なんだけどね。ここで一応注意しておくと「です・ます」は必ず切るってことね。さ、じゃ次はどうかな。
彼女はスレイヤーのライヴを見た。
最後の曲でステージ上から血が降ってきた。
ジェフは立ち位置を間違えた。
スレイヤーって何?ジェフって誰?
スレイヤーはね、メタリカ・メガデス・アンスラックスと並んで昔はスラッシュ四天王と言われたとても有名なメタルバンドよ。うちのパパが大好きで、私もよく小学生の頃聴かされたなー。
特に3Rdアルバムの『REIGN IN BLOOD』はどの曲も速くて彼ら独特の凶悪なリフが炸裂してるの!
それでー、昔、パパが持ってたスレイヤーのライヴDVDを観ていたら最後の曲の『レイニングブラッド』で血の雨が降る演出があったんだけど、ギタリストのジェフ・ハンネマンだけ立つ場所を間違えたのか、あんまり血を浴びてないの。ほかのメンバー血まみれなのにね。ほら、この伝説のライヴね。
なんか気持ち悪いんですけど・・・。
正直わたしもこの曲のライヴは怖い。ジェフはひょっとして濡れるの嫌だったのかもね。でもそのジェフはもうこの世にいないの・・・。
ふーん。ユリカ先生、暗くなっちゃった。とりあえず単語に切るね。こうかな?
彼女|は|スレイヤー|の|ライヴ|を|見た。
最後|の|曲|で|ステージ|上|から|血|が|降って|きた。
ジェフ|は|立ち位置|を|間違えた。
ブブブー!
わ、びっくりした
全部違いマース。
ええ・・・全部?
まあ、最初だから仕方ないよ。あのね、単語の切り方は意味とか考えないで、とにかくこの単語が来たら切る!って覚えておくと楽だよ。特に
「ない・う・よう・ず・ぬ・た・て・です・ます・れる・られる」
はその前で必ず切るの。特に「う・よう・た・て」は見落としがちだから注意してね。そうすると、こうなるよ。
彼女|は|スレイヤー|の|ライヴ|を|見|た。
最後|の|曲|で|ステージ上|から|血|が|降っ|て|き|た。
ジェフ|は|立ち位置|を|間違え|た。
へえー。なるほど。「た」や「て」はくっついている単語なんだね。
そうなの。つまり「見る」+「た」で「見た」になるってことね。「降ってきた」も「降る+て+くる+た」がつながってこうなってるの。またあとで詳しくやるけど、「見る」が「見」になったり、「降る」が「降っ」になるような現象を「活用する」っていうの。
それから、「ステージ上」は逆に一単語だよ。複合語っていって、二つの単語が合わさって一単語になるの。例えば「飛ぶ」と「おりる」は別の単語だけどくっつくと「飛び降りる」になるでしょ。そうしたらそれは一単語なのね。他にもこういうのはたくさんあるよ。「勉強する」みたいに「~する」とかも一単語デース。でも孝くん、「立ち位置」は一単語で切れたね。
うーん、なんとなくだよ。よし、今度は大丈夫、
「ない・う・よう・ず・ぬ・た・て・です・ます・れる・られる」
だね!問題出してよ。
いいよ。じゃこれを全部単語に分けてみて。
彼はライヴ会場で暴れまわった。
ステージダイヴはとても気持ちがよかった。
頭を振りすぎて首が痛いから、病院へ行こう。
彼は疲れて道路に座っていました。
よし、頑張るぞ。こうかな。
彼|は|ライヴ会場|で|暴れまわっ|た。
ステージダイヴ|は|とても|気持ち|が|よかっ|た。
頭|を|振りすぎ|て|首|が|痛い|から、|病院|へ|行こ|う。
彼|は|疲れ|て|道路|に|座っ|て|い|まし|た。
よくできました!特に「行こう」と「座っていました」は間違えるところだけど、頑張ったね!孝くんもあと5年もしたらステージダイヴできるよ。気持ちいいよ!こんなふうにね!
やだよ、こんなの。