あけましておめでとうございます。
この記事を1月1日にご覧頂いている方はどこにいらっしゃいますか。こたつでゆっくりの自宅?移動中の電車の中?ベッドでごろごろ?
様々な方がいらっしゃるでしょうが。僕は今日の元旦、出勤です(;_;)
世知辛い世の中で、斜陽産業に属する我が会社の業績も芳しくないからと、正月からの労働を余儀なくされている僕、お屠蘇気分もへったくれもありません。泥舟に乗った気分で業務をこなしております。今日で8連勤目、大晦日も関係なかった。誰か僕を高給でやとって!ヘンな記事書きますから!
あっ、今思い出したけど、中学生くらいの時、年が明けたと同時にレコードでU2の「ニューイヤーズデイ」を聴いて「新年だなあ」などとのんきに思っていたっけ。
この歌のもつ意味も知らずに
まあそんなことはどうでもいいや。
浴室読書で読んだSFのはなし
- 作者: J・P・ホーガン,James P. Hogan,大島豊
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1999/07/16
- メディア: 文庫
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こちらの『仮想空間計画』は昨日の『ノーストリリア』とは打って変わって、本格的なハードSF。こちらはかなりの読み応えがある、ヴァーチャルリアリティを主題としたSFだった。
作者のJ・P・ホーガンは『星を継ぐもの』を始めとして数多くの作品を著しており、権威ある星雲賞を二度受賞するほどの巨匠。ただ、僕はまだまだSFを極めるには程遠く、恥ずかしながら彼の作品を読むのは初めてなのだ。その筋の方には「えっ、ホーガン読んでないのにSFとか語るの」などと言われそうでありますが、ご勘弁の程を。これからたくさん読みますから!
この本が書かれたのは1995年だから、映画マトリックス(1999)よりも以前に仮想空間をテーマにしていることになる。
ジョー・コリガンはピッツバーグに住む44歳のバーテンダー。実は彼は才能ある若き科学者、という過去を持っていて、12年前にはCLC(サイバネティクス・ロジック・コポーレーション)という大企業の立てたオズ計画というプロジェクトの主要人物として働いていた。
オズ計画とは仮想空間をコンピューター内に作り上げ、そこで社会的シュミレーションを行えるようにする画期的なプロジェクトであった。そのオズ計画が成功した暁には各方面から莫大な利益が転がり込むはずだ。例えば、とある商品を仮想空間で発売することによりより正確なマーケティングが企業は期待できる。選挙の結果もほぼ確実に予測することが可能だ。オズ計画の可能性はほぼ無限であった。
あらゆる方面からの利潤が期待できるこの計画をすすめるには、仮想空間内の人間たちを限り無く本物の人間の思考に近づける必要性があった。その実現のためコリガンは本物の人間の分身(コリガン自身を含む)を神経接合(まさにマトリックス!)することにより仮想空間内に住まわせて、AIに人間の思考パターンを学習させることを思いついたのである。
ところが計画はプログラムの予期せぬ不具合により頓挫。コリガンやそのほかの被験者はその際に重大な障害を受け、記憶も一部失ってしまう。
コリガンは事故後、プロジェクトに対する情熱を失い、会社を辞めバーテンの職に就く。一緒にオズ計画に携わっていた妻のイーヴリンはそんな彼の様子に我慢が出来ず、離婚を一方的に言い渡し、家を出ていってしまう。
しかしコリガンは事故の後遺症のためにどうしようもない違和感を日常感じており、イーヴリンの家出もほとんど苦にはならない。事故の際に受けた障害が彼を常に孤独であると感じさせるのだ。カウンセリングを度々コリガンは受けさせられるが、自分がおかしいのだと納得させ日々を過ごしていた。
事故前のコリガンは明るく快活で才能が溢れ、アイルランド人気質(彼がアイルランド人というのは重要な意味を持つ)の冗談をよく発しては人々を笑わせていたのだが、不思議なことには現在生活を共にする人々にその類の冗談がほとんど通じないのである。それは全ては事故に起因し、自分の精神の問題だと思い込んで日々を過ごしていたコリガンの働くバーへ、ある日リリィと名乗る黒髪で背の高いエレガントな女性が訪ねてくる。
不思議なことにリリィはほかの人間たちとは違い、コリガンと精神的に波長が会うのである。興味を持ったコリガンはリリィのアパートへ訪れ、そこで彼女の話を聴いて愕然とする。
リリィは現在は靴職人をしているが、12年前は宇宙防衛総軍(OTSC)と呼ばれる組織に科学者として属しており、オズに関わるソフトの開発に携わっていたのだ。彼女もコリガンと同時期にオズに参加し、被験者として仮想空間へと神経接合していたのだ。そして様々な事案を、様々な方面から検討した結果、彼らの住む世界は依然として仮想空間だという結論に達したことを彼に伝える。混乱するコリガン。
ここでようやく読者は、(「仮想空間」というタイトルゆえある程度は類推できるのだけれど)コリガン同様にすべてがまやかしの世界だということに気づかされる。違和感があって当然なのだ。ここまでが前半の助走。もうすでに序盤から後半の加速が期待できて、この時点で傑作の予感がひしひしと感じられる。嘘を語るにはディティールの積み重ねが大切なのだ。それをこの小説は見事に体現している。
このコペルニクス的転回のあとにはオズ計画の始まる以前からの時間軸が設定される。つまり、どうやってコリガンがこの状況になったのかを時間をさかのぼって読ませてくれるのだ。ホーガンのストーリーテリングの妙である。
翻訳SFはその硬い文体が作品全体の雰囲気にマッチしていて、日本語で書かれたハードSFよりもスケール感を感じられるのだけれどその反面、登場人物の多さに辟易することがある。この話に至っては最初の登場人物紹介ページに22人!読んでいて区別がつかないよ!まあ、読み飛ばしても問題はほとんどないんだけれど、あとになってあれ、こいつ誰だっけ?という人物がストーリーの鍵を握っていたりするので油断ならない。
さて時間軸が元に戻り、若きコリガンのストーリーと、仮想空間に閉じ込められた44歳のコリガンの話が交互に進んでゆく。
仮想空間にとらわれる直前の32歳のコリガンはCLCで仮想空間の研究を行っていた。そのプロジェクトにハーバードで研究をしていたイーヴリンが参加する。彼らはすぐにお互いに惹かれ合う。コリガンはトントン拍子に出世し、その中で利権が絡む連中との関わりを持つことになる。そしてそれはそのまま社内政治へと巻き込まれることも意味していた。
あんまり長くなりすぎましたので正月早々次の日に回します
どんどん押してください
どんどん読んでください、正月の暇つぶしに