久しぶりに大物について書きたいと思います。それはザ・プロディジー!
20年以上も前!ザ・プロディジーの「POISON」を初めて聴いたとき、特にそれほどのインパクトがあるわけじゃなかった。
いや、今見るとすごいインパクトなんだけど、当時はぶつ切りでしか見られなかったから。
1990年代後半に深夜放送されていた「BEAT UK」という番組は僕にたくさんの音楽を教えてくれたけれども、その中でもかなり大きい収穫だった。少し高速回転をさせた「アガラポイズン! アガラポイズン!」というフレーズと、薄暗い部屋の隅でドラムを叩く男。この男こそ、プロディジーの音楽そのものであるリアム・ハウレットだった。
翌週のチャート紹介にもこのポイズンは流れ、どうにも心にひっかかったので 僕は新宿レコファンで彼らのセカンドアルバム「MUSIC FOR THE JILTED GENERATION」を購入した。
永遠の名盤
Music for the Jilted Generation
- アーティスト: Prodigy
- 出版社/メーカー: Imports
- 発売日: 2009/11/02
- メディア: CD
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僕はその頃新しい音楽が聴きたくて聴きたくて(今もそうだけど、当時の方がその欲は強かった)、あらゆるジャンルをむさぼり聴いていた。そうしておぼろげながら自分の聴きたいロックミュージックの理想をぼんやりと心に描いていた。
それはナインインチネイルズのような、メタルギターとテクノロジーを合わせた全く新しいタイプの音楽だったのだ。いわゆるインダストリアルサウンドと呼ばれるその音はミニストリーやフィルター、スタッビングウェストワードといった形で音楽シーンを席巻していたけれど、プロディジーは全く別の方面からのアプローチだったのだ。
彼らはもともとレイヴカルチャー(クラブで大音量で音楽をかけ、怪しげなドラッグをやって踊り狂うような感じ?)方面で活躍しており、全て打ち込みのテクノ/ダンスミュージックだった。当時メンバーはリアムの他にはダンサーが3人いた。ダンサーって!つまり音楽的貢献はしていないということじゃないのか?すごいね。
ダンサーはキース、マキシム、リロイという3人だったのだけれど、
上段ネコの目がマキシム、縞々野郎がリアム。下段長髪がキース、ベレー帽がリロイ。
3RDアルバム「ファットオブザランド」の頃キースがヴォーカルをとりカリスマ性を増し、マキシムもMCとして活躍していたのに比べると、リロイの存在意義は薄れ、本人もそれを感じたのだろう、結局リロイは脱退。実際全員、目を見張るほどのダンステクニックでもなかったしな・・・。
さて、初めて「JILTED~」アルバムを聴いた時の感動は大きかった!こういうサウンドが聴きたかったんだ!という喜び。
中ジャケットがまた素晴らしいイラスト。
おーい君!馬鹿な真似はやめなさーい!インディ・ジョーンズじゃないんだから!
うるさいんじゃコラー!切るぞ!切るぞ!
不穏な効果音の「イントロ」から半音上げ下げのベースのフレーズが繰り返されるミドルテンポの一曲目『ブレイク&エンター』。
チキチキツルルチャチャというハイハットの刻みの心地よさよ。
初っ端から「おお、僕は新しい音楽を聴いている!」感がひしひしと感じられるのだ。八分以上ある曲なのに少しも飽きない。そして途中に挿入されるガラスが割れる音!これがまた絶妙な間で入るのだ。
プロディジーの初期の曲にはこういうセンスのよい効果音があって、それは後の大ヒット曲「BREATH」でも、剣を振り回す音やしのぎを削る音として聴くことができる。
引き続きギターのズクズクというリフで始まる「THEIR LAW」で「こいつらは本物だ!僕はいま歴史的なアルバムを聴いている」とまで思ったものだ。実際そういうアルバムなのだけれども。
さらにはこの後、この頃のプロディジーの特徴であるテクノ+ドラムンベースのリズムを基調としたファストナンバーが怒涛のごとく繰り出されるのだ。1STの流れを汲むこれらの楽曲は高速道路を走りながらで大音量で聴くのが一番ふさわしい。
当時僕は、独身で暇を持て余し、しょっちゅう東京の友人の家へ関越道に乗って2週に一度は訪れていたのだけれど、その時のメインBGMがプロディジーのこのアルバムとアンダーワールドの「二番目のタフガキ」だった。
ドンツードンツーという規則正しい四つ打ちのバスドラを基調に、さまざまに細かなリズムのフレーズが絡む曲をかけて車を運転する僕はまるでトリップをしているような感覚になっていた。もちろん、事故は起こしてませんよ!安全運転で!
ちなみにこの間、カンニバルコープスの新譜を爆音で聴きながら車を運転していたら、後ろの車が同僚だと気付いた。その時僕は休みだったのでそのまま別方向へと行ったのだが、後日「凄い音で曲が漏れてたよ」と言われた。
とにかくプロディジーのこの時期の楽曲はリズムのアイディアが溢れており、それがあまりにも心地よくていつまでも聴いていたいと思えるような名曲ぞろいなのだ。
ニルヴァーナの「VERY APE」をリアム自身が弾いてサンプリングした「VOODOO PEOPLE」は屈指の名曲だ。
後のペンデュラムミックスはどうも・・・
どっとこた、つかたった!どっとこた、つかたった!
もう全部のリズムが天才的で、特にブレイク部分のいつまでもタメ続けるスネアの16分音符の心地よさは他にない。このフレーズ、元ネタがあるんだけど(というかプロディジーの初期曲のほとんどがDJのリアムの巧みなサンプリングにより曲が構成されている)それをかなり巧みに加工してうまく使っているのだ(Johnny Pateの You're Starting Too Fast )。さらにはツェッペリンの「ホールロッタラヴ」のフレーズも使われているが、加工されすぎて全然気がつかない。
こちら、そのメイキング。リアム本人の作成ではないけれど。それにしてもこういう曲のつくり方を彼らはしているのだ。
ホールロッタラヴの必要性、あるの?
この頃の彼らのサウンドはオルタナティヴではあるがまだテクノっぽいところも残っていて、僕はその暴力的なテクノサウンドをひとり「暴力テクノ」(ださい)と呼んで聴いていた。そしてここから遡って1STを聴くわけだ。
続きはまた明日です。
時代を感じさせるCGのプロモである「ONE LOVE」。
フォロワーさんが49人になって、奇しくもこのブログの読者数と同じ。別に何の意味があるわけではないですけれど。