『源氏物語』を語れたらいいなって思いませんか。というのも、世の中には一定数「源氏物語女子」がいるので、もし合コンとかでそういう女の子と巡りあったとき、読んでてよかった!となるかもしれないでしょ。まあ、僕にはもうその機会はないけれども・・・。
これが僕の初源氏
僕は小5の時に母親がこの与謝野晶子訳の源氏物語を買ったので、どんなものだろうと思って読んでみたが、てんで歯が立たなかった。当の母親もおそらく読んではいなかっただろう。興味と忍耐がなければ、この人類史上に輝く大河小説を読み通すことは困難だ。
その後高校2年生の時、再び『源氏物語』に古典の授業で再会するのだが、今度は訳ではなく原文だ。
「いずれのおほんときにかにょうごこういあまたさぶらひたまひけるなかにいとやんごなききはにはあらぬが・・・・」
・・・つまらない。今はそうは思わないのだが、高校生の僕は即座にそう思った。難しすぎる!しかも、光源氏が全然出てこない。冒頭の「桐壺」は帝と桐壺更衣の話で、源氏はまだ赤ちゃんなのだ。結局更衣が死んで帝の遣いの命婦なる人物が更衣の母親を見舞うあたりで学習は終わった。
教科書だから仕方がないのかもしれないが、僕はのちのち色々と勉強して『源氏物語』の面白さをやっと理解できるようになり「こんな教科書の内容で興味を持てるはずがない」と思ったものだ。
実際もっと興味を引くような場面はいくらでもあるのだ。
例えば源典侍(げんのないしのすけ)という超熟女(58歳)をめぐって光源氏と頭中将(とうのちゅうじょう。源氏の終生の友にしてライバル。)が恋の鞘当をするバカバカしさ。二人はわざとこの老女の前で修羅場を演じ、彼女をひどく狼狽させる。頭中将が源氏の足を引っ張ったりして面白い。このあたり、紫式部はノリノリで書いたのではないか?
とはいえ、あんまり物語に馴染みのない方に僕が登場人物やらエピソードを語っても「???」「つまんね」となるので、なんとかこの素晴らしい作品に親しめるように色々とルートをご紹介したいと思います。
第一のルート。
正攻法。古典全集を読む。
縁あって僕の本棚に収まっている『源氏物語』たち。
新潮日本古典集成〈新装版〉 源氏物語 一 (新潮日本古典集成 新装版)
- 作者: 石田穣二,清水好子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/10/29
- メディア: 単行本
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新潮社の古典全集はどの巻も非常によく出来ており、訳注が充実している。だから、古典が読めなくても、なんだか読んだ気にさせてくれるかもしれない。
ただ、こんな分厚いのムリ!古典なんて意味がわからない!とほとんどの人が思うだろう。僕だって実際そう思う。
第二のルート。
「現代語訳本」を読む。
本の分類が雑。在五中将のとなりが中島らもって。
『源氏物語』は数多くの作家が訳出に挑戦しており、それぞれに魅力があるのだが、この橋本氏の現代語訳は画期的だった。というのは源氏の一人称で物語が語られるのだ。これがかなり読みやすい。僕はこの訳に出会ったことで『源氏物語』全体を理解することができた。訳文で読みたい方はこれをおすすめします。本当に読みやすい。
橋本氏は他にも『枕草子』や『徒然草』『平家物語』といった古典のビッグネームをそれぞれその斬新な切り口で訳すという営為を成し遂げている。
第三のルート
ビジュアルがふんだんな雑誌・ムックを読む
ほとんどは古本で100円位。
ブックオフなどで古典コーナーやディアゴスティーニ系の雑誌を探すとたまに掘り出し物がある。一冊あたり100円~500円ていどで見つかるこれらの本はビジュアルでわかりやすく図解してくれているので物語の理解に非常な助けとなる。上記の朝日新聞出版の「週刊 絵巻で楽しむ源氏物語」はかなりその点で充実しており、巻末のエッセイも面白い。アマゾンでも中古で安く買えます。
第4のルート
「ドラマ・アニメ」でお手軽に
数あるドラマ・アニメ化された『源氏物語』の中で、2009年に制作されたこちらの「源氏物語千年紀 Genji」は何とも言えない作品だ。
フジの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で鳴り物入りで放送が開始され、僕は毎週欠かさず録画し観ていたのだが、まあ、はっきり言ってアレです・・・。
12回しかない放送回でどうあの長大なストーリーをまとめようというのか?と思っていたら、須磨に行く前に終わり!(物語の半分も消化していない)しかも最終回、何故か盗賊と光源氏が刀でバトル!盗賊のカブトを真っ二つ!しかもそこに頭中将が助っ人バトル!そんなシーン原作に一切なし。高級貴族が刀持って立ち回りとかありえない。まあ、ある意味これはこれで実は面白かった。(ノイタミナではこの後あろうことか『百人一首』をアニメ化し、藤原定家を超イケメンとして登場させていた。でも一応全部見たけど。)
他にも、源氏に捨てられそうになっている六条御息所(ろくじょうみやすどころ)という女性がなんかヘンなのだ。まあ、嫉妬に狂って生霊になるくらいなので多少ヘンなのは仕方がないのだが、例えば風呂に入っているシーン。源氏への思いを断ち切るためなのか、侍女にやたらとお湯をかけさせるのだが、その際に
「もっと熱く!もっと熱く!」
と延々と要求するのだ。なんだそりゃ、と爆笑。湯をかける方も大変でしょ!
あとは、どのヒロインかはうろ覚えなのだけれど確か藤壺女御に言い寄るシーンで、源氏が十二単を剥ぎ取ろうとする。すると彼女はスポーンとその十二単から飛び出すのだ!
「生まれたー!」
と思わず爆笑。色々な意味で問題作だったと思うよ。
第五のルート
「漫画」。
源氏の漫画といえば『あさきゆめみし』が有名だけれど、僕は読んだことはありません。江川達也氏もかなりアダルトチックに漫画化しているが、僕が初めて読んだ源氏漫画はこちら。
上巻のカバーがどっかいっちゃって・・・
絵が古い。源氏の顔が池上遼一タッチの劇画風。かと思えばギャグっぽく高橋留美子のような絵柄にもなる。あくまで池上遼一タッチであるから、本人なら絶対ありえないりデッサンが時おり狂っており、ハラハラしながら読む時がある。探せばブックオフで100円位で投げ売りされているはず。
とまあ、色々なルートを紹介しましたが、実は僕が最強だと考えるのはこちらの漫画『はやげん』!。
帯にも「これを読めばあなたも明日から知ったかぶれる!!」
数年前にネットで発見し、購入。知る人ぞ知る作品だ。今はアマゾンでも取り扱いがある。評価もかなり高いのに、あまり知られていないようだ。
本当に作者の方が原作を愛しているのが伝わってくるし、絵柄も少女漫画に振り切っていないので非常に好感が持てる。しかも現代風の絵柄で読みやすい。
僕の一押しはこれです。これさえ読めば『源氏物語』それっぽく語れるでしょう。
源氏物語を語る最短ルート情報 おしまい。
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