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パンテラ/PANTERAにまつわる思いで

       今日はパンテラの日。『脳殺ライヴ』のアルバムもあるはずなんだけど。

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  例によって二十数年前の話(パンテラもそんなに昔か!)、大学4年生になった4月、僕の所属するバンドサークルにも新入生が入ってきた。その中に、タラオ(仮名)がいた。タラオは僕らの大学の学生ではなく、浪人を二年間経験し農業系の大学へ入ったのだった。だから、学年で言えば1年生だが、実質は3年生の年齢だった。彼は高校の同級生が僕らのサークルにいたので、その縁でやってきたのだった。

 

 メタル好きのタラオはサークルへ入り、僕も彼と仲良くなった。大学で酒を飲み、そのままの勢いで数人、彼のアパートへとなだれ込んだ。もはやどこにあったのかも忘れてしまったが、そこで彼が「先輩、パンテラ知ってます?」と聞いてきた。僕は知らないと答えると、彼はCDプレーヤーに「COWBOYS FROM HELL」をセットし、大音量でかけた。

 

Cowboys from Hell

Cowboys from Hell

 

 

 なんたるインパクト!とにかくダイムバックダレルのランドールアンプを研究し尽くした伸びやかでクセになるギターの音が革新的だった。そうしてあのリフのカッコよさ。現在のデスコアやモダンヘヴィネスの源流と思われるドラムのリズムに対するシンコペーションのリフ展開などとにかく今まで聴いたことのないヘヴィメタルだった。

 

 さらに彼はその場でパンテラのライヴビデオを観せてくれたのだが、それがまたものすごい迫力だった。

 

        当時5度のコードではなく3度のコードを使っているバンド、珍しかった。

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 まさにパワーメタルを体現したパンテラの勢いに圧倒された僕は翌日すぐにCDを買い求め、しばらくはそればかり聴いていた。そうしてサークルでも瞬く間にパンテラブームが巻き起こり、僕らは新時代のメタルに酔いしれていた。

 その後ほどなく「俗悪」が発売され、さらに僕らは度肝を抜かれることになる。

 

このジャケットも大概だよね

俗悪 ~20周年記念デラックス・エディション~

俗悪 ~20周年記念デラックス・エディション~

 

 

           リヴェーンジ!

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 音は前作以上に太くなり、フィルのダミ声ヴォーカルは大地を引き裂くかとも思えたものだ。どうでもいいが一時期上記の僕は一曲目の「マウス・フォー・ウォー」に合わせて「でぇーでぇーででーででぇーででーででー」(マウスフォーウォーのリフのつもり)とエキスパンダーで筋トレをしていたことがある。あのリフのリズムに合わせ、胸筋を鍛えたのだ。ばか。

 でも、今やその肉はたるみ始めている・・・。その思い出を娘が小3のときにマウス~を聴きながら話すと、彼女は風呂に入る時などに突然「でぇーでぇーででーででぇーででーででー」と口ずさんでエキスパンダーを広げる真似をして僕を笑わせた。あと、なぜか当時「RANTHER」というブラック系の歌手だかバンドだかのCDがショップで取り扱われていて先輩が間違えてそれを購入し、激昂してたのを思い出した。

 

 そしてついに全米一位!となった次の「脳殺」。

脳殺

脳殺

 

 

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「うぎゃー!どこどこどこ」と始まったのはよいが、それ、これだけ。

 スピードを期待していた僕にとってミドルテンポ中心の曲群は退屈に感じられた。後にパンテラもバンドでやったけれども、冒頭のこの曲の、しかもテンポダウンするところまで。確かヴォーカルのフィル・アンセルモがメタリカの「LOAD」を「メタルは死んだ」と評したというが(記憶は定かじゃないです)、自分たちのバンドもゆっくりと衰えていたのだ。もちろん、水準以上の楽曲とサウンド、演奏力が詰まってはいたが、過去に出した素晴らしいアルバムのために、バンドの宿命としてやっぱり1STと2NDだよなあ、と思われてしまうのは避けられないところだ。

 

 僕は行けなかったのだが、このアルバムの来日講演は伝説的なパフォーマンスだったらしい。見てきた後輩の話によると前座はなんとホワイトゾンビ!それだけでも元が取れた気がするが、観客席を走り回り、カメラマンをステージ上に引き上げる、といったパンテラの破天荒さはそれを上回るものだったということだ。

 

 さらに数年後『鎌首』が出るがほとんど内容を覚えていない。

 

 

 この頃はどうやらメンバーの関係性も悪化していたらしい。そうしてその次の『激鉄』に至っては僕はCD買わずにレンタル・・・

 

このジャケット、やっつけ感がすごい。

激鉄

激鉄

 

 

 で、結局パンテラは解散、ギタリストのダレルはダメージ・プランをはじめるのだが、解散を逆恨みしたファンにステージ上で射殺される。このニュースは本当にショッキングだった。もうあの素晴らしいギタープレイは永遠に生で聴けないのだ。RIP.

 

 景気をつけたい時、元気を出したい時にその都度パンテラを聴いていた僕だが、そのパンテラを教えてくれたタラオの話。

 彼はメタル系ドラマーだったのだが、2年生にやっぱりメタル系のドラマーがいて、その名を仮にコガとしておこう。ちなみにコガは『学術名目』という名フレーズを作った本人。

 

 極めてプライベートな思い出なので(まあ、このブログは基本的に全部そうだけど)『学術名目』という言葉に関してはこちらで確認してください。お時間があれば。

otominarukami.hatenablog.com

 

 学年で言えばコガが上だが、年齢はタラオが上だった。だが、大学は入った年度が絶対で、浪人すれば自分と同い年か、年下でも先輩だ。

 さてコガとタラオ、ある日、数人で学校帰りに駅に向かって歩いていると突然喧嘩を始めたのだ!半ば取っ組み合いみたいになってみんなで慌てて止めた。何やってんだ、とよくよく話を聞くと、どうやらコガが先輩風を吹かせて

「まあ、タラオには頑張って欲しいよ」

などと肩をたたいて言ったらしい。するとその言い草にカチンときたタラオが手を出したというわけだ。年下のくせに何言ってやがる、と思ったのだろう。

 

 さて、僕は卒業し、その後タラオは後輩たちとバンドを組んでガンズ・アンド・ローゼズなどをやっていた。ある日、サークルでライヴをするというので、とある都内のライブハウスへと足を運んだ。久しぶりに会う後輩や友人たちと調子に乗って酒を飲みながらライブを鑑賞していたのだが、最後のバンドがタラオのバンドだった。彼のバンドの演奏が始まったとたん、酔いが頂点に達していた僕らは数人で狭いライブハウスでモッシュやヘドバンをし始めた。そして中にはそれだけでは飽き足らず、その場にあった椅子を持ち上げ振り回すやつが現れた。僕らはそれを見てゲラゲラ笑っていたのだが、その瞬間アンプの電源が落ち、照明が消された。そして

「何やってんだお前ら!ふざけんな!」

とライブハウスのPAの方の怒鳴り声が店中にこだました。

「帰れ!二度と来んな!」

と何も考えずにいい気になってた僕らに冷水を浴びせた。今思えばタラオとそのバンドメンバーには申し訳ないかぎりだ。タラオのバンドのヴォーカルは

「じゃ、最後にこれだけ。イヤーオ!

とひとシャウトし、ライヴは終了。なんだその終わり方。

当然、そのライブハウスは出入り禁止となった。

 

 あと、去年このバンドのCDを買ったんだけど、最初ヴォーカルがフィルかと思ったよ。寄せすぎでしょ。

             マジでフィル復活か?と勘違い。

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でもメタルは死なない

kakuyomu.jp