知らないうちにエイフェックス・ツインって人気があったんだなー。僕が疎いだけなのだろうが。え!グラミーもらってたの?今やそんな時代なのか!
とはいえ、とりあえず最新作までチェックはしている。
初めて買ったCDはその名も「リチャード・D・ジェイム」スアルバム。僕は勝手に「顔」と呼んでいる。
こーわい。このアルバムから入った人は結構多いと思う。
ちなみに裏面は、毛穴バリバリの鼻アップ写真コラージュで大変気色悪い。
僕がエイフェックス・ツイン=リチャード・D・ジェイムスを知ったのは確かまだコアな特集ばかり組んでいたころのクイック・ジャパンだと思う。その当時の最新のテクノを紹介する記事でこの不気味なフェイスを見たとき、「うお、顔だ。なんかスゲエ」と思ったもんだ。
テクノ界のモーツァルトとか、稼いだ金で戦車を買ったとか、どんだけ変人なのかということが色々書いてあってさらに興味を惹かれのでまずは買ってみたのだ。
最初の印象はといえば、「思ったよりも軽くて明るいな。なんだかハチが飛んでるみたいだな」であった。もっとプロディジーみたいにガンガン来るのかと思っていたら、ふにゃふにゃしたシンセに、とぅるるるるうるるるるうーという金属音がやたらと飛び交う摩訶不思議なサウンドだったのだ。一部ではこの振動するようなビートを「ドリルンベース」などと呼び、同時期に活動していたスクエアプッシャーとセットで語られることもあった。この時期に関して言えば僕はスクエアプッシャーの「ハードノーマルダディ」の方が好きで、それほどエイフェックスは熱心には聴かなかった。それにしてもやはりこの音は革新的だったのでコーネリアスも「スターフルーツサーフライダー」でモロパクっている。いい曲だけど。サビがもろエイフェックスしてます。
そして、その後に出た「51/13SINGLE COLLECTION」でハマる。
特にPULPのジャーヴィス・コッカー(今なにしているんだろ)が監督した「ON」は素晴らしかった。
美しいピアノの旋律や、きらびやかな金属音に突如入ってくる重低音のブーストベース。ビューテフルメロディと暴力的ノイズの幸せな結婚。今でこそこういうのもあるだろうが、当時としては類を見ないサウンドだったと思う。僕が言うまでもないけれど、リチャード、天才。
その後のリチャード顔したクマのぬいぐるみが好き放題やるドンキーランバーブも素敵。
こうして大音量でピコピコ、トゥルルルルルル、ブーバボボを聴いているうちにシングル「カムトゥダディ」がビデオシングルとして発売された。即購入。
まずジャケットがすごい。ジェームス顔。左から二番目のジェームスなんか、ブルース・ディッキンソンかと思う。PVはビョークやケミカルなども手がける映像作家、クリス・カニンガムの作品で、曲と映像がシンクロして凝りに凝っている。後半、テレビからジェームスモンスターが生まれるところはクローネンバーグのヴィデオドロームじゃないか!
児童虐待をテーマとしているらしいこの作品、もちろんあからさまにメッセージを前面には打ち出さずビデオではむしろ老人虐待かと思うほどおばあちゃんがかわいそう。実際こんなのに遭遇したら気が狂うだろうな。悪夢としか言い様がない。
そういや、クリスカニンガムがヘイデンクリステンセン主演で「ニューロマンサー」を撮るという噂が一時期あって僕は狂喜したものだがあれはいったいどうなってしまったんだろう。
このエイフェックス史上最も激しい曲は、初めてヴォーカルが入っていて驚いた上に、何と本人が歌っているではないか。この時期はプロディジーをはじめとしたいわゆる「デジ・ロック」(ほとんど死語だが)がミュージックシーンを席巻していたこともあって流れに乗ったのかもしれない。もう何度も聴いた。CDはこの曲以外はそんなに激しいわけではなく、いつものエイフェックスといったガラスの破片が飛び散るような迷宮的テクノが収録されていた。
この時点で僕はエイフェックスの次の作品を飢餓的に待ち焦がれるようになった。そしてその飢えを満たすように、すぐに「ウィンドウリッカー」のビデオCDが発売される。
なにこのジャケット。よくこんなの思いついたな。後に石野卓球がソロで同じようなアルバムジャケットを出していたっけ。
実はビデオシングルの方がもっと長い。ちゃらい黒人コンビを翻弄するかのように登場する覆面リチャード、カッコいい。そして、とにかく、曲がブッ飛んでいた。「こんな曲聴いたことないぞ!」という感動が押し寄せたものだ。
それにしても、この時期のリチャードの自己の「顔」に対するこだわりは偏執的でもある。とにかく「顔・かお・カオ」である。そういえば全然関係ないけど、「おかあさんといっしょ」で「かお、かお、かっおー!カオカオカーオ!」という少々狂っているのではないかと思える歌があったなあ。「かお」という響き、独特の印象があるよね。
話がそれた。普通テクノアーティストってサウンドに先入観を持たせないためか、あまり自己の顔を積極的に出したりはしない。しかし!リチャードは全く逆で自分の顔をアイコンにまで高めてしまった。とにかくここまで自分の顔を全面に押し出したアーティストも珍しい。
そしてその後待ちに待ったフルアルバム、「Drukqs」。
- アーティスト: Aphex Twin
- 出版社/メーカー: Rhino / Wea
- 発売日: 2001/10/30
- メディア: CD
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「ウィンドウリッカー」のあとには一体どうなってしまうんだ?という僕の膨らみまくった期待はどうなったか。
正直に言うと、「なんか違う」であった。
「ゆりかもめ」に延々乗っているこの曲からわかるように、サウンドはむしろ「リチャードDジェームスアルバム」に近い。わざとやっているのだろうか、やる気がないのだろうか。とにかく僕が期待していた革新性とは程遠いアルバムだった。もちろん完成度は高いのだが、期待と作品との齟齬が僕にそう思わせるのだ。
その後しばらくリチャードの音沙汰はなかったのだが、ドラックスから13年後!突如新作が発表される。しかも時期を少しずらして二枚も!ええ、もうそりゃ買いましたよ。
白いのは「Syro」。黒いのが「Computer Controlled Acoustic Instruments pt2 EP」。タイトル長すぎるし、PT1はいつ出した?
さて有り体に言えば、大きな変化はない。というか変わってないじゃん、全然。曲名に至ってはもう記号。エイフェックスの通常運転。しかし何故かサイロはグラミーを受賞。どういう意図があるのだろうか。それまでの功績が認められたということか?
実を言うと、買ったはいいものの、あんまり聴いてない・・・。いつ聴けばいいんだ、このアルバム。秋の夜長あたりがいいのだろうか。もう革新性についてはスクリレックスあたりに求めたほうがいいのだろうか。
とはいえフジロックのトリって・・・あっ、この日のラインナップは結構すごいな。
エイフェックスの前がLCDサウンドシステム!日本で知名度あんのか?この順番で大丈夫なのだろうか。その前がコーネリアスにオザケンってすごくないか。まさかフリッパーズを・・・なんて妄想するファンもいるだろ。初日のTHE XX⇒クイーンズオブザスートンエイジはすごいな。まあ、毎年仕事で行けないんだけどね。
最後に意外といろんなところで使われているエイフェックスのNINネイルズリミックス。この二人のコラボ自体が奇跡。名曲だ。
テクノもいいけどメタルもね。読んでください。